決戦④
その衝撃は、周辺の大気を振るわせるほどの威力を持っていた。
余波だけで周辺の瓦礫、地面、その直線状に浮かんでいる雲に風穴を開ける程の威力だった。要塞に風穴を開けるような一撃は、なんとたった一人の男を殺すためだけに放たれていたのだ。
「―――、―――」
意識はほぼ吹っ飛んでいる、大砲の弾のように吹っ飛ばされ続けている彼の口からは、信じられない程の血が空に赤い線を引いていた。
それを満足げに、不満げに見つめる半分骨と筋肉がむき出しの青年は、自分の右足を見つめた。
「俺としたことが無礼なことをしたな、一撃で楽にしてやるつもりだったのに。やはり癖だな、いたぶる事が好きな、俺の癖だな」
自分に呆れるようにため息をついた直後、青年は指を鳴らした。
直後、地面から巨大な頭蓋骨が現れ、落ちて行く男を丸呑みしたのだ。
「さようなら、俺の数百年
言いかけた瞬間、男を食らった頭蓋骨が赤熱し、次の瞬間黒い炎に包まれ、黒く焦げて行った。そこから逃れるように出ていく小さな雷雲、その上に乗った男を、しっかりと目に焼き付けていた。
「……頑張るなぁ」
血が凝固してきた片耳に手を触れながら、青年はまた、気持ち悪く美しい笑みを浮かべた。
「ほんと、残念だよ」




