白亜の壁を超える
白亜の壁。不落の王城キャメロット周辺を覆う巨大な壁は、今日も太陽に照らされ、美しい城を放っていた。
しかしどうしたことか、正門付近の一部分辺り、そこだけが赤黒く、錆び臭い何かで汚れていた。
しらけることなどできない、それは紛れも無く人の血だった。
「汚ねぇな」
目の前の肉塊を蹴り飛ばす、ゴロゴロと転がっていくそれは、ピクリとも動かなかった。
死んでいるのだから当然だ、俺は自分の愛用する魔剣の血を払い、辺りを見渡した。
抉れた地面、ヒビの入った大地。
戦いによって破壊された美しい風景を見ても、心が揺れることは無かった。
『利益なんて無くていいの、ただそこに有るだけで価値がある、貴方も同じよ?』
「―――」
思わず歯噛みする、自分にこんな人間じみた感情が残っていたことに驚き、呼吸が乱れる。
「……いや、違うよ」
頸をゆっくりと横に振り、首の後ろのフードを被り直す。
「俺は、貴方みたいに優しい人間じゃない、ただの化け物だよ」
折れるぐらい強い握力で魔剣を握る、たまに反応してくれる魔剣は、もう何百年も黙りこくっている。
俺は頭の中の希望をかなぐり捨てた、捨てるしかなかった。
「……ああ」
呼吸を整え、俺は白亜の壁を超えた。
この戦いが正しくないことなど、初めから分かっていたくせに。




