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ポルトガルの大うつけ~金平糖で何が悪い~  作者: キリン
【第一部】プロローグ 
2/283

また、おしまい

 「動くな! 一歩でも動いたら撃つぞ!」


 殺気に満ちた怒声が聞こえ、不意に目が覚めた。


 別にそれ自体が不愉快なわけではない、起きたら殺されかけていることなど戦国の世ではよくある事、儂が不愉快なのは心地よい眠りを妨げられたことだ。


 瞼を覆う目くそを取ろうとしたところで、自分の両腕が縛られている事が分かった。

 なんで縛られているのか、寝ぼけていて分からなかったが冷静に状況を見ればとんでもないことになっている。


 まず四方八方から向けられる銃口、自分達が使っていた火縄銃よりかっこいいのが癪に障る。

 それから美しい建物、白と黒と木の優しい色が織りなす城とは違い、所々赤や黄色などの派手な色が使われている。


 こ奴らもそうだ、黒い長い帽子に赤と白と黒の変な服を着ている、鎧にしてはかっこよく、本音を言うと羨ましいことこの上なし。

 それからどうでもいいことだが腰にはご丁寧に日本刀が収められてあった。


以上、今の儂が置かれている状況。



 ……何これ。


(いや待て、待て待て待て待たぬかオイ、落ち着けッ!? 如何にうつけた場で在ろうと冷静さを保つのだ儂よ!)


思考を放棄するかしないかで迷った末に儂は天才的な頭脳(自称)をフル回転させ……ってかそんなことよりぐいぐい押し付けられる銃口が冷たい!


 ……ん?


「冷たい」?


待て、何故「冷たい」?


 そんなはずはない、確か自分は燃え盛る……


「ッッ! 本能寺!?」


儂の声に驚いたのか、周囲の銃口が震える。

兵士の殺意がぐさぐさと刺さるが、そんな事は関係ない。


 思い出した。

 儂は少し前まで、燃え盛る本能寺にいたのだ。

 

何故か、明智のクソ野郎にハメられたのだ。


んで、それで背中にある愛刀で自害しようとして。


 たぶん死んで。


 ……なんかここにいる。


「……あー」


 さっっぱり分からん。


 とりあえず銃口ぐいぐい押し付けてくる男の方をぐるりと向く、目くばせによる合図で意思疎通を図ろうと思った。

 何故か相手はそれを見て口元を抑えたが、不快なのでとりあえず隣の奴に尋ねた。


「おっほん、あーそこのお主、褒美をやるから教えろ、ここがどこだか分かるか?」


「黙れ! それ以上喋ると撃つぞ!」


 相当お怒りの銃兵は儂の眉間に銃口を向け、引き金に指を掛ける。

 向けられた銃口を上目遣いで見ながら、儂は目を閉じてため息をつく。

 それから目を開け、一言告げる。


「……なら、撃ってみるがいい」


「はぁ⁉ 貴様何を……」


 銃兵の怒りの声が鳴り響くが、途中で静かになる。

 別に、儂が特別何かしたわけではない。


 ただ、睨む。

 圧倒的な気迫と剣幕を以て、銃兵を威圧する。


 地に座り込む銃兵は、後ずさりしながら自分を睨む男を指さす。


「撃てるものなら撃ってみろ、ほれ、縛られている儂は何もできんぞ?」


 銃兵の一人が思わず腰を抜かした、他の銃兵が横目でそいつの表情を見る。

 その表情は今にも泣きそうで、恐怖で支配されていた。


 恐怖が移った銃兵たちは一斉に銃を構え、四方八方から銃口を突き付ける。

 まるで弱い獣が恐怖を紛らわすために、形だけの威圧をしているような感じだった。


 それも全員共通、儂というたった一人の男に対する恐怖で、だ。


「……ふん、ここまでか」


 胡坐を掻いた儂は突き付けられた銃口になど目もくれず、自分の周りに広がる街々を、今一度見る。


 儂を見て怯えてはいるが、平和そうに暮らしている人々。

 整った民家の上に広がる色とりどりの屋根。

 広がる木々、雄大なる空。

 戦など、考えもしない。


「どこだか知らんが、お主らはいい場所に生まれてきたようじゃな」


 満足そうな顔をしながら、儂は口の端を吊り上げる。

 そう、笑う。


「我が人生、終焉は炎に在らず人に在り、いやあなんともいい死に方!褒めて遣わす!」


 引き金に掛けた指に力が入る。

 力が入った指は引き金を引き、銃の中の火薬に火が付く。

 筒に詰められた弾が爆発により飛び出る。


 そしてーーーーーーー。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 信長がかなりキャラ立ちしてて、台詞を読んでるだけで引き込まれるようでした。
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