マーリンの話
歩きながら、マーリンさんと私は話をした。
作戦会議、と言えば聞こえはいいが、実際はただマーリンさんが愚痴を言っているだけである。
「それでさぁ! せっかく面白かったのにギネヴィアとセ〇クスしてさ? 同胞を切り殺したんだよ!」
「ランスロットの不倫、確か円卓の崩壊を招いた原因って聞いてましたけど、本当だったんですね……」
自分の中での円卓の騎士のイメージが壊れる、さっきもガヴェインはロリコンとか、トリスタンは声が小さいとか、理想がただの変人集団に変わっていくのを止められない。
私がため息をついていると、マーリンさんがにやりと笑った。
「でも面白いのはここからさ、何たってモルガンの恥ずかしィ失恋話だからね!」
マーリンさんは心底楽しそうに笑いだし、私の肩をつんつんし始めた。
気になりはする、何たって自分が戦う敵の情報なのだから、この人が話すことは信用できないけど。
「なんとなんと! あのモルガンの性癖はレズ、しかも私に告白してきたのさ!」
思わず変な域の吸い方をしてしまった、咳き込んで私はその場に伏せた。
「げぼっ…おぇっ…はぁ!?」
「そうだね、告白の言葉は確か…『マーリンさん大好き!淫魔らしく滅茶苦茶にして!』だったね、返事を待つって言ってからもう何百年経つかな~」
言葉を出そうと声帯に命令を送るが、余りにも隣のこいつがクソ野郎過ぎて話したくも無い、はっきり言って一人で来た方が良かった。
「ねぇ知ってる? モルガンの奴、私にフラれた後泣きまくってさ、その涙の量が多すぎて湖になったのさ! んで泣き終わったら私に襲い掛かってきてさ、私を無理やりアヴァロンに閉じ込めた」
思わず吐き気がした、人間ではないとはいえ、流石に酷い。
もしも自分の初恋がこんなクソ野郎だった場合自殺する、ってかこんな黒歴史を知られたら普通殺しに…あ。
「…もしかして」
「あれ? あれあれ? あそこにいるのはもしかしてぇ~?」
マーリンは人差し指と親指で円を作り、その中を覗く。
そこには、こちらに向かってくる白髪の女が映っていた。
「今話題に出ていたモルガンさんじゃないか!やっほー!」
「ああやっぱりこうなるんですよね!このクソ野郎!」
マーリンをぶん殴ってから、アメリアは武装する。
「殺す」
「ほらやっぱりめっちゃ怒ってるぅううううう!」
納得がいかないアメリアだったが、素手にマーリンも本気の目、相手なんてそれ+失恋黒歴史である、滅茶苦茶にしてやりたいに違いない。
こうして、クソ野郎マーリンの煽りにより、アメリアはいきなり大ピンチを迎えることになった。




