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ポルトガルの大うつけ~金平糖で何が悪い~  作者: キリン
【第二部】エピローグ
175/283

魔術師からのプレゼント

「……」


 壁に背を預けながら、塔の周辺に咲き乱れる花々を眺めている。

 おとぎ話のようなピンクに紫、時々強い風が吹いて花びらが舞う。

 撫でるような風、それでいて乱暴な風。

 まるで彼女が隣にいるような気さえした、乱暴で綺麗で優しい、滅茶苦茶な友達が。


「いると思えばいるさ。魂の終着点、罪人の牢獄、なんたって楽園だからね、ここは」


 隣に座り込むのはマーリンとかいう女だ、片手に杖を持ち、もう片手には布でぐるぐる巻きの棒のような物があり、綺麗な髪をなびかせている。

 落ち着いたその表情、特に眺めるような目が綺麗だった、妖艶で、くらくらするぐらいに。


「えっと…マーリンさん?」

「呼び捨てで構わないさ、なんならメルリヌスとでも呼ぶかい?」

「メルリヌス、さん??」


 冗談だ、やめてくれ。笑いながらの圧に思わずたじろいでしまう、震えるような感覚としてはアキレウスに近かった。


「…っ‥‥」


 思わず息が詰まった、もう少しで自分の友達の名前を言うところだったから。


「おやおや、ずいぶん思い悩んでらっしゃるようだねぇ」


 茶化すような言い方に思わず睨む、だが相手は怯むことも無く、パチンと指を鳴らした。


「そんな君に私からプレゼントだ。ああ、でも渡す前に一つ注意だ、本当にピンチじゃない限りこの布を取らないこと、いいね?」


 そのままマーリンは持っていた棒を渡し、その場から立ち上がって塔の中へ入って行った。


「………」


 どうせろくなものではない、瞬時に察した。

 相手は伝説に語られるほどのろくでなしだ、いくら腕のいい魔術師とはいえ、使えばただでは済まないだろう。


「………」


 それでも何故か捨てる気になれなかったので、私はそれを大事に抱え、塔の扉を開いて中に入った。


 楽園には、今日も優しく残酷な風が吹いていた。


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