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問い
私はそれを、悪い夢か何かだと決めつけた。
ありえないことが目の前で起きている、天地がひっくり返るレベルの事が。
自分にとって沈まぬ太陽だった何がか、沈むような。
自分にとって追いかけるべきだった背中が、いつの間にか自分とは逆の方向へ進んでいるような。
そんな喪失感であってそうではなさそうな、何とも言えない何かが自分の中で渦巻くのを感じた。
嫌だ、こう言いたかった自分の口を、どうにかして閉じることができた。
これは自分のエゴだ、相手の事を何も考えていない子供の言う言葉だ。
分かっている、相手が自分なんかより何倍も複雑な矛盾を抱え、それを飲み干して尚笑っていたか、それにどれだけ自分が憧れていたかも。
でも。
今は、そうじゃなかった。
「何してんのよ、あんた」
だから私は、怒るのも悲しむのもやめて、本人に聞いてみるのだ。




