邪魔だ
足場の悪さが解消されるほどの衝撃波が、二つの罪を中心に巻き起こった。
瓦礫が吹き飛び、地面が綺麗な平地になる。
平安京のおよそ半分を占める面積が吹っ飛んだ。
勿論それは間近にいたアメリアやアキレウスも、例外ではない。
(うっ‥‥あああ!)
動かない体をどうにかして丸め、親指を鳴らしまくる。
(どうにかしてここから離れなきゃ、アキレウスさんも連れて!)
飛んでくるのは瓦礫や建物の残骸だけではない、晴明が張り巡らしていた雷雲はいまだ健在、今狙い撃ちでもされれば確実に致命傷を負うだろう。
そのため一刻も早く雷雲から離れなければいけない、連絡の取れてないジャンヌにそれを伝えることを付け加えれば、生存のための難易度はさらに跳ね上がる。
「アキレウスさぁん!」
動くようになった声帯を震わせ、アメリアは瓦礫を避けながらアキレウスの下へ向かった。
その状態は、酷いものだった。
拳一個分だろうか、それぐらいの大穴が空いた腹からは内臓のようなものが飛び出し、血が滝のように溢れ出ている。
顔面蒼白、血の失いすぎで体がショック症状を起こしているのだろう。
「しっかりしてください!アキレウスさん、アキレウ…」
「いやはや困った、まだ生きてるとは」
ふと上を見ると、そこには安倍晴明がいた。
片手にはアキレウスを貫いた雷の槍、もう片方には平安時代最強の陰陽師の呪いが詰まった札が握られていた。
(死――――――!)
アメリアがそう思考し、晴明が何かを呟き始めた、丁度その瞬間だった。
ズドォン!アメリアと晴明の間に割って入るかのように、信長の渾身の回し蹴りが顔面に突き刺さったのだ。
平安京の平地を削り、大江山を吹き飛ばしながら清明は吹っ飛ぶ、これで死なないという事は、アキレウスがやられた時点で分かってはいたが。
(これが、『八罪悪』‥……!)
自分が倒した、戦っていた、そしてこれからも戦うであろう敵の強大さを改めて実感し、アメリアは、目の前の信長を見た。
気づかなかったが、信長の足元には黒い雲のようなものがあり、信長はそれに乗っていた。
「信長‥…公?」
「‥‥‥…早く離れよ、戦いの、邪魔だ」
ビュウン!晴明が吹っ飛んでいった方向に、信長は急降下していった。
「……!」
言いたいことはたくさんあったが、まずは目の前の事を処理しなければならない、アメリアはアキレウスを抱え、遠くへ飛んでいった。




