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ポルトガルの大うつけ~金平糖で何が悪い~  作者: キリン
【第二部】終章 色欲雷霆神話 ゼウス
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知りませぬ

「いいですねぇ、ここは」

美しさと狂気を兼ね揃えた男、蘆屋道満はこの屋敷をそう評した。

「流石は源氏の総大将、魑魅魍魎の呪いが溜まりに溜まっています、ええ、それはもう!」

この男の好きなものを言おう、饅頭だ。

丸くて白い、中にあんこが入っている和菓子だ。

しかしながら、この男、たとえそれが腐っていようが潰れていようが、文句の一つも言わず口に入れるのだ。

「――――まぁ、出来ることなら地で汚したくはありませんでしたが」

これは嘘だ、この男はたとえこの屋敷が吹き飛んでいようが、この男は喜んで声を上げただろう。

だから、ほら。

「構いませんとも、ええ」

笑って男は屋敷に足を踏み入れるのだ。

「そこまでだよ、道満法師」

屋敷の中から人が出てきた。それを目にした途端、道満の顔が険しくなった。

「・・・・・・晴明」

「おや、いつもなら様が付くはずなんだけどね、意外だ」

嘲笑ったような笑みと共に晴明は問うた。

「頼光たちを殺したのは、君かい?」

「いいえ、源氏を殺したのは黒鞘様の力にございますれば・・・・・」

「違うだろう?」

凍り付くような生命の声、道満は眉をひそめた。

「彼女はもう動けない、『強欲』の時は特例だが、今はそれができない、するわけにはいかない」

黙り込む道満、晴明は畳みかける。

「答えろ道満、誰が、殺した?」

晴明の問いに、道満は瞼を閉じる。

「・・・・・・私は・・・・・」

静かに、眉を開く。


「知りませぬ★、そしてさようなら」

笑ったままの道満の顔に返り血が吹き飛んだ。


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