理想郷にて
「なーんでここで頼光さんが死ぬの!?明智さんは!?金時君は⁉」
「そんな事よりアメリアだ!なんだあれ羨ましすぎるだろ!」
それなぁ!ナポレオンの甲高い声が響くと共に二人は肩を組み合い、ちょっとファンタジーなデザインのテレビの前に群がっている。
「・・・・・・・君たちねぇ、私だって彼らの活躍を見たいんだけど、其処どいてくれるかい?」
「断るっ!こんなに痛快で面白いものを独り占めしていただなんて!これからは僕たちで二人締めさ☆」
「そーだそーだー!」
スヌークと息ぴったりのナポレオン、二人の背中で再び画面が見えなくなった。
「・・・・・ふぅ」
苦笑いのまま、マーリンはため息をつき、二人の肩の隙間から見えるアメリアを見た。
現代兵器の力を借りずとも空を駆けるその姿は、どこか懐かしいものがあった。
「隠居してれば、よかったのにさ」
誰も聞こえないような小さな声で、そう言った。
「あー、ところで」
「ん?」
ナポレオンがテレビを見ながらマーリンに問いかけた。
「明智たちを殺したあの黒いフードの男、何か知ってる?」
「ふむ、まぁ強いだろうね、私じゃあまず殺されるだろう」
知らない、そう言わないという事は知っている、はっきりと物事を言わないのは嘘をついている証拠だった。
「知っている事と言えば・・・・・彼が『八罪悪』が一角、『傲慢』だってことだね、うん」
顔が引きつっている、常人より隠すのが上手いが自分をごまかすことはできない、これでも軍人として死んだのだから。
「そうか、ならいい」
テレビのチャンネルを変える、今はまだ、この魔術師を敵に回すことは好ましくない。




