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ポルトガルの大うつけ~金平糖で何が悪い~  作者: キリン
【第二部】第一章 源氏と騎士王
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走馬灯

一つ一つの攻撃、それ自体は何てことない攻撃だった。

うねうねした泥のような体を触手のようにうねらせ、槍のように発射してくる。

剣でいなすも正面から砕くも、晴明さんもアキレウスさんも何てことない様子で戦っていた。

だが問題はそこではない、そこでは、無いのだ。

「畜生・・・・・信長に近寄れねぇ!あいつの体の中に核みてぇなのがあるはずなのに!」

アキレウスさんの舌打ちが聞こえる、自分の踵を狙う触手を槍の一薙ぎで消し飛ばすが、一瞬で次の触手が迫ってくる。

そう、いくら消し飛ばしたり斬ったりしても、何度も何度も再生されたり代わりの触手が出てきたりで本体に近づけないのだ。

この状況が続いても、式神を使う晴明さんや神の子のアキレウスさんは大丈夫だろう、だが自分は違う、騎士王の力を借りて半端に戦えるだけになっただけだ。

(息も上がってきた、あと5分持つかどうか・・・・・・)

空を飛ぶために訓練はしてきたので、並の人間よりは体力が持つ、だがそれはあくまで雀の涙ほどの事実に過ぎない、気休めにも、ならないのだ。

一振りするたびに剣を振るう手が緩む、もう少しで聖剣がすっぽ抜ける所だ。

何か打開策があればどうにかなるのであろう、だがもう思考を回している時間は無い。

このままでは確実に自分は死ぬだろう、貫かれるか絞め殺されるか、考えたくも無い。

(何か・・・・・・)

がギィン、ギギィン。

(何か・・・・・・無いの⁉)

一旦距離を取るべく足の指を鳴らす、爆風が巻き起こり、一気に後ろへ下がる。

だがそこで自分は気づかなかった、鳴らした指の力が、余りにも非力だったことに。

(しまった!)

自分を包む風が無くなり、不格好な受け身を取る。

自分の目の前には、殺意と憎しみで作ったような攻撃が何十も迫っていた。

「――――――――――――――」

自分の頭の中が真っ白になる、何度か経験した走馬灯の前のあの感覚だ。

せめて一撃、一矢報いるべく剣を振るった。





『王よ、私は不安です』

何がだ?私は木刀で素振りをしながら、自らが最も信頼を置く騎士に問うた。

『あなたがいつか民に疎まれることです、聖剣の鞘である■■■■■は奪われ隠された、あの女は否定しておりますが』

まだ、罪が晴れぬか、私が騎士を憐れみながら言うと、騎士は深く頭を下げた、ああ、そうか、そうなのか湖の騎士よ。

『マーリンが言ったのでしょう?アヴァロンにいけるのは貴方だけ、聖剣に認められ、このブリテンを平和にした貴方だけなのですから』

私は舌打ちをした、そんな事で楽園に行けるのであれば、剣が抜ければどんな愚か者でも■■■■■に行けるという事じゃないか。

『私はそれでいいと思います、王よ』

何故だ。

『あなたはブリテンを愛した、緑を、神秘を、かつて討った愚かなヴォーディガーンも、それ以上に愚かな民でさえ』

私は此処で騎士を否定しなければならなかっただろう、民が愚か、そんな事をほざいている円卓など合って良いはずない。

「・・・・・・・・そうだな」

私は、頷いた。

「私だけで、良いのかもしれないなぁ」

『はい、他の円卓もそう言うでしょう』

こうして、ブリテンは滅びた。





走馬灯のような物から覚めた時には、自分の体は肉塊になっているはずだった。

「よく、此処まで耐えた」

ジャギン!太陽の光を一身に受けその刀身を輝かせる。

自らを殺したくてたまらない攻撃は消え去り、霧散していく。

「女子が此処までやったのだ、なら、京を守護する俺は、それ以上の事をして見せよう」

その見た事のある華奢な体は、背中を向けたままこう言った。


「頼光四天王が一人、渡辺綱参る」


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