襲撃
『君たちを襲った兵士いるでしょ？ 何処の国の兵士か調べてきて、もちろん、ノブとアメリアで』
「と言われたのはいいものの、何処を探せばいいのやら」
「ですねぇ」
呑気にボリボリ二人で金平糖を食べている信長とアメリア、二人はてくてくいろんな場所を歩いていた、クソ野郎ナポレオンの土下座を条件に、自分たちを襲った者がどこの国の兵士かを探すために。
トテトテ歩くアメリアを隣で見ながら、信長は思う。
「…儂思うんだが、お主は少し美形すぎないか？ 男前な儂と同格じゃぞ？」
「あなたが男前なのについてはノーコメントですが、私が美形なのは認めましょう」
滅茶苦茶自分の事を誉めまくるアメリアにイラっと来ながら、信長は気晴らしに辺りを見渡す。
「…止まれ、アメリア」
そこで、気づいた。
お目当ての兵士どころか、人っ子一人いない事に。
周りには高い建物、梯子があるとしても登るのに１０秒かかるぐらいの高さだ。
（…狙い撃ちするには、丁度いい高さじゃな）
「アメリア、儂から離れるな」
「？どうしま
「走れっ！」
信長がアメリアを背負い走り出す、アメリアの声が響くと同時に無数の弾丸が信長を襲った。
ガガガガッガッ！ と、放たれる直径９ミリ程度の凶弾が信長の背後すれすれの地面を打ちまくる。
あと少しで当たる、当たってしまう、そんなギリギリで信長はアメリアを抱えながら走った。
「伏せろアメリア！ 間違っても頭だけは守れぇい！」
「はっ…はいい！」
耳を抑えるアメリアを横目で見ながら、信長は３６０度全方位から来る凶弾を躱し続ける。
「はっはっは！ さすが儂！ 戦国の世で鉄砲相手にここまで見事な回避をこれだけできるのは儂ぐらいじゃろうなぁ！」
「喜んでる場合じゃないですよぉ！」
「喜ぶわけがないじゃろ馬鹿もん！
ドドドドドドッ！ と凶弾は止むことなく降り注ぎ、信長の頬や腹部、さらには腕を貫通した。
（ぐぅっ…弾は無限か⁉ どれだけの軍勢だ⁉）
火縄銃の装填には時間が掛かる、そのため三つの層で銃兵を分け、交互に売っていくのが主流なのだが、この銃弾には限界が無いように感じた。
信長の血が吹き飛び、動きが鈍くなる度に被弾数が増える、アメリアは耳を塞ぐしかなかった。
だが、世は無情なもので、一人の少女の願いも受け入れてはくれないようだ。
「ぐはっ…っ」
ブシュウっ！ と、信長の肩に銃弾が貫通し、手からアメリアが放り出される。
（しまっーーーー）
「わーったよ、もう寝てろ、あとは全部俺が片づけてやる」
声が聞こえたと同時に、銃弾が止む。
次に屋根の上にいる銃撃隊の悲鳴が聞こえた。
（な…にが…？）
そして、それを最後に信長の意識は途絶えた。
辺りには、銃兵と信長の血が吹き散らされていた。
～約１０分後～
「あれが尾張の大うつけ、ねえ」
遠く高い其処から、それは倒れる信長を見ていた。
つまらなそうに、それでいて期待するように。
「俺の弱点は自分の踵だからいいけど、あんたはそんな女の子が弱点だろ？ 同情するぜ全く」
そう言って、太古の英雄は走る。
恐らく人類最速の、その足を以て。
