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ポルトガルの大うつけ~金平糖で何が悪い~  作者: キリン
【第一部】エピローグ
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①理想郷にて

「いやぁ~悪いねぇ、私もいろいろと焦ってたからさ~」

ほら、これで鼻でもかみなさい、先ほど自分を誘拐したそいつは、薄いひらひらとした何かを渡してきた。

「・・・・・・なんじゃこりゃ」

試しに力を入れると簡単に破けた、どうやら二枚構造になっているらしく、一枚一枚作るのは大変そうだ。

持っていたそれを女は取りあげ、新しいそれを渡してきた。

「これはティッシュ、紙で出来ている、これは今君が鼻から垂らしまくっているそれをふき取るために在るんだ」

「?????これが、あの紙か?」

こんなに薄くて軽いのがぁ?また一枚びりっと破って放り投げる。

女は困った顔で笑い、新しく取り出したティッシュで顔を覆った。

「?」

「ふん!」

ぶーっ、変な音が鳴ったと同時に信長は飛び上がり、近くのタンスに頭をぶつけた。

頭を押さえていると女は笑いだし、鼻に付いた鼻水をふき取ってそれを丸めた。

「そっ、それは楽器か!?楽器なのか⁉」

「違うよ、鼻をかんだ時の音だよ・・・・・って仕方ないか、何百年も前の人なんだしね」

小さくため息をつき、女は隣に置いてあった箱を差し出した。

「こう、ね、引っ張れば出てくるから」

箱から出てきたひらひらを渡し、女はさっさと別の部屋のドアを開け、狭いこの部屋には自分一人だけが残った。

渡された箱をまじまじと見つめながら、信長は開いたままの窓の外を見る。


「・・・・・・・此処、何処じゃ?」


ことん、と、手から箱が力なく落ちる。

今更ながら手が刀の柄へと伸びていくのを、信長は自然に感じていた。




何処までも続く花と空の地平線。

ピンクや紫の大地、白い雲と青い空に挟まれたその空間はまるで絵本の中の世界のようで、子供の想像した夢の世界そのものだった。

「・・・・・・きれい」

茫然と、それでいて懐かしい高揚感を胸に抱き、アメリアはその場でくるっと回ってみた。

ふわっ、と、体がいつもより軽く感じるような錯覚さえした、股下を通る風が太ももを撫で、空とは違った別の感覚が心地よい。

ここは一体どこなんだろう、先ほどまで頭の中を埋め尽くしていた疑問がどうでもよくなってきた、思わず笑みがこぼれた。

何処までも続いている、何処まで続いているのだろう、好奇心が好奇心を呼び、自分の華奢で力強い足が動く。

何処まで行けるだろう、この先に何があるだろうか?現実など忘れて理想を描きながら走るのは久しぶりで、童心に帰ったような気持ちだった。

とにかく走る、花をかき分けて、綺麗な綺麗な何かを追い求めて。

あの綺麗な女の人が塔から離れるなと言ってたけど、ちょっとぐらいならいいよね。

だって振り返ればほら・・・・・・・え?

「あれ、塔が・・・・・・・・」

途中で右に寄っていたかな?そんな事を思いながら別の方向を向くが、塔どころか建物すらない、あるのは花と空の水平線だけだ。

少し焦る、右へ左へ体を揺らすことで、自分が何処から来たのかもわからなくなる。

「どうしよう・・・・・・・どうしよう!」

焦りが止まらない、体から汗が噴き出る、何処へ行けばいい、何処が正しい方角なんだ。

「信長公!信長公!」

迷子の子供のように手を前に伸ばしながら、たくさんの人の名前を呼ぶ。

「ジャンヌさん!クソレオン!スヌークさん!アキレウス・・・・・・・・」

名前を呼んでいくうちに、ようやっと思い出した。

ああ、彼女は死んだんだ。

私を助けるために、自分の踵を射抜かれて。

「・・・・・・・・あああ・・・・・・」

気に病むな、そう言われたが無理だ、こんなのってない。

だって無理だ、自分の為に体を張った人が、それが原因で命を落としたかもしれないのに、謝ることもできない。

その場に膝を突く、美しい花の中で倒れ込む。

もう十分だ、悪魔は倒した、任務も終わった、神との契約もここまでのはずだ。

瞼を閉じる、死とはまた違う終わりを望みながら。

自分のやってきたことが誇れることを信じて、眠る。

楕円形の視界が、完全に閉じた。








久しぶりに人を見た気がする。

華奢な少女だ、ここに来る人間の顔ではない。

そうだ、ここに来る人間はいずれも外道であるべきだ。

あの淫魔が何を企んだかは知らないが、この少女を哀れに思う。

このままでは楽園に喰われる、私のように歓迎されたわけではない部外者、しかもあの淫魔が連れてきた客だ、生きては帰れない。

・・・・・・・・ああそうか、そう言う事か予言者よ、私は今お前を憎み続ける決意を一層固めた。

だがいいだろう、お前の悪だくみに乗ってやる、薄汚れた騎士道に賭けてこの少女は私が守ろう。

円卓の名において、十三の騎士を従えた王の名に誓ってな。


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