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ポルトガルの大うつけ~金平糖で何が悪い~  作者: キリン
【第一部】第一章 憤怒の黒炎
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「小話」少し時を遡って・・・・・・

これは、とある朝のちょっとした小話







アメリアは料理を作っていた。

誰よりも早く起き、厨房に立ち、エプロンを付けて。


冷蔵庫から卵を取り出し、フライパンの隅でヒビを入れ、割る。

じゅわあっ、と、鉄板の上に落ちた卵を、素早くかき混ぜる。


ちょっとだけ、懐かしい感じがした。


よく母と一緒に料理をしていたことを。

懐かしい思い出に身を寄せながら、アメリアは食用植物油を手に取り、入れようとする。


『違う違う、ここはこうするのよ』


一瞬。

母の声が聞こえてきた気がして、後ろを振り返った。


「おかあ……」


だが、そこにいるのは自分の母親ではなく、昨日会ったジャンヌだった。


「ほら、こっち見てないで火から目を離さないの」


「えっ…あっ、すいません……」


アメリアは逃げるように火の方を向き、卵をかき混ぜる。


「ああ違う違う! もっと優しく!」

『もっと優しく混ぜなさい、飛び散ったらもったいないでしょう?』


ぴたり、と、手が止まる。


もう一度だけ後ろを見て、それが母ではないことを確認する。


「私の顔に変なモノでもついてる?」


「………いいえ、なんでも」


そう言って、アメリアは少しだけ焦げた卵を皿に盛り、また卵を割る。

そしてまた、命が減っていく。


心も、擦り減っていく。




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