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薬草摘み1

 翌日の昼下がり。空は晴れ渡り、ぽかぽかと暖かな日差しが降り注いでいる。絶好の薬草摘み日和だ。二人とも動きやすい服装にローブを羽織り、ミハイルは背中に薬草を入れるための籠を背負っている。


「今日は森に入って薬草を摘むんですか?」


「ああ、獣除けの魔法をかけたから安全なはずだが、歩きにくい場所もあるから気をつけてくれ」


「分かりました。探すのは雨乞草と黒扇草、それに竜頭草でしたよね。薬草図鑑で特徴は覚えてきましたので、頑張って探しますね」


「ありがとう、頼むよ」


 これまで、ミハイルの仕事の手伝いは、薬草の葉を使いやすいように一枚ずつ鋏で切り落としたり、薬草の在庫を確認して記録したりと、細々とした室内作業のみだったが、薬草に興味を持ったルナリアが頼み込んで、今回薬草摘みに連れて行ってもらえることになったのだった。


 ミハイルが先導して、森の中に入っていく。残暑の季節でも涼しくて、少し湿った空気が気持ちいい。所々、木漏れ日が降り注ぎ、さわさわと葉擦れの音が聞こえる。


 しばらく歩くと、流れの緩やかな小川が横たわっており、人一人が歩けるくらいの幅の丸太が渡してあった。目的の場所へ行くには、ここを通らないといけないらしい。


 ミハイルが先に危なげなく渡り切り、ルナリアの方へ手を差し伸べた。ルナリアはミハイルの手を取って、一歩一歩慎重に渡る。ミハイルの少し冷たくて大きな手を握っていると、何故か恥ずかしいような気がして、顔に熱が集まる。


(ミハイルさんは、丸太から落ちないように手を握ってくれているだけなんだから……。恥ずかしがらないで早く渡らないと……!)


 なぜか高鳴る胸の鼓動に焦って足を速めると、最後の一歩で足を滑らせてしまった。あっと思った瞬間、ルナリアの体はふわりと持ち上がり、気が付くとミハイルに抱きかかえられていた。


「ご、ごめんなさい……! ありがとうございました!」


「いや、川に落ちなくてよかった。……さあ、目的地はすぐそこだ。行こう」


 ミハイルが、そっとルナリアを地面に下ろす。


 あまりの恥ずかしさに真っ赤な顔で俯いたままのルナリアは気付かなかったが、落ち着いた様子で歩き出すミハイルの両耳も、赤く染まっていた。

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