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魔術研究者ミハイルとの出会い2

 ミハイルに案内されて歩くことしばらく。着いたのは、小高い丘の上の木々で囲まれた二階建ての小さな家だった。中に入ると、恐らく魔術研究のための書物や野草が至る所に散らばっていた。


「汚くてすまない……」


 ミハイルは一言詫びると、窓を開け、テーブルの上に広がっていた薬草の束を片付けて、ルナリアのために椅子を引いた。


「どうぞ、座って。まずは茶でも淹れよう」


 ミハイルがガラス製のティーポットに茶葉を入れ、手をかざす。するとティーポットに熱々の湯が湧き出し、茶葉が湯の中を踊るようにぐるぐると回る。魔術研究者と言っていたが、確かに魔術が使えるようだ。しばらくして湯の色が濃くなると、ミハイルはティーカップにコポコポと淹れたての茶を注いでルナリアの前に置いた。


「ハーブティーだ。口に合うといいのだが」


「ありがとうございます。いただきます」


 カップから柑橘類の爽やかな香りが漂う。一口飲むと口の中にも爽やかな風味が広がり、無意識に強張っていたルナリアの身体が解れていくのを感じた。


「初めての味ですが、とても美味しいです」


 温かなお茶と優しい気遣いに、自然と心からの笑顔が浮かんだ。


「……それは、よかった。やっと落ち着けたみたいだし、話を聞かせてくれるか?」


 ミハイルの穏やかな口調に誘われて、ルナリアは一連の出来事を語り始めた。


「……なるほどな。貴女は侯爵令嬢で、性悪の王子と女に嵌められて二百年後の世界から転移してきたというわけか」


「はい、あの、信じがたいことだとは思うのですが……」


「貴女のその洗練された所作から、貴族令嬢というのは間違いないだろう。それに、突然現れたあの凄まじい魔力の光。この時代では、まだ時間転移の魔法は完成していないが、二百年後なら可能性はありそうだ。私は信じるよ」


「……ありがとうございます!」


「それにしても、三月は戻れないのか……」


「はい、ただお金の持ち合わせもありませんので、教会などしばらく身を寄せられそうな場所を教えていただきたいのです」


 ルナリアが申し訳なさそうに仮の宿の心当たりを尋ねると、ミハイルが思案顔で答える。


「教会はこの村にはないし、ここら辺は貧しい集落だから、女性一人だと人買いだとか厄介なことに巻き込まれるかもしれない。貴女はその……目立つ容姿だから」


(……確かに、私の髪色は貴族の中でも珍しかったから、村ではかなり目立ってしまうかもしれない)


 ルナリアは、自身の姿を思い出して小さく嘆息した。絹糸のようなプラチナブロンドの髪に、輝く瑠璃色の瞳、滑らかな白磁の肌。しばらくの牢暮らしで、髪も肌も少しくすんでしまったが、相変わらず人目を引く美しさだった。


 ミハイルはしばらく黙り込むと、ぽつりと呟いた。


「……このまま、うちにいるかい? ちょうど空き部屋もある」


「え、でも、ご迷惑ではーー」


「そんなことはない。これも何かの縁だし、困っている人を見過ごせない。……あ、もちろん貴女が嫌じゃなければだが……」


 またも焦って弁明するミハイルの姿に、ルナリアはどこか親しみのようなものを覚えた。

 これまでのやり取りで、親切な人柄は感じられたし、ルナリアの話を疑うことなく信じてくれ、力になろうとしてくれている。三月の間だけ住まわせてもらえればよいのだし、ミハイルを頼るのが最善かもしれない。


「……それでは、お言葉に甘えて、しばらくお世話になります。お邪魔にならないように、私にできることは何でもお手伝いしますので」


「ああ、これからしばらく、よろしく頼む」


「こちらこそ、よろしくお願いいたします、ミハイルさん」


 こうして、ルナリアとミハイルの共同生活が始まったのだった。

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