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ミハイルとカイン

本日3話目です。

 カインの腕の中でひとしきり泣いた後、ルナリアはおずおずと顔を上げて尋ねた。


「……どういうことなのか、説明してくださいませんか?」


 カインはルナリアの頬に手を添え、涙の跡を拭き取ってくれる。

 その仕草にミハイルの名残りが感じられ、ルナリアは安堵した。


「君が喚び戻されたあの日……君にとっては、ついさっきの出来事だけれど、防御魔術は解除されて失敗したが、もう一つ掛けていた魔法は無事だったんだ。君と私を繋ぐ、運命の糸のような魔法。時間は離れていても、それで繋がっていられたから、私は希望を失わずに済んだ」


「私とミハイルを繋ぐ魔法?」


「ああ、それを頼りに、二百年後の世界にいる君を追いかけようとした。未来への転移が不可能なら、別の方法を取るしかない。私は、二百年後の世界に転生するという方法に全てを懸けることにした。何年も、何十年もかけて、ついに転生の魔法を完成させ、君のいる二百年後の世界へと転生したんだ」


「……私のために、そんなにも努力してくださったのですか…?」


 あの別れから、何十年もの時を費やして、追いかけてきてくれたというのか。共に生きたいというルナリアの願いを叶えるために、途方もない犠牲を払って。

 先程やっと止んだ涙がまた溢れそうになり、ごしごしと擦って耐えた。


「本当は、第一王子との婚約も阻止したかったのだが、それだけはどうにも出来なかった。すまない……」


「気にしないでください。おかげで、ミハイルに出会えたのです」


「確かに、そうとも言えるな……。きっと、ミハイルは二百年前で君を助け、カインはミハイルを助けるのが役目だったんだろう」


「カインがミハイルを助ける?」


「ああ。防御魔法は解除されたのに、君との繋がりは見逃されていたし、転生魔法に必要な膨大な魔力も残してくれていたんだ。君がずっと身に付けていたムーンストーンの守護石に、莫大な魔力が込められていた。私の魔力だけでは不可能だった」


 思わず胸元に手をやるが、身に付けていたはずのペンダントがない。どうやら召還された際に飛ばされたのか、ミハイルの側に転がっていたそうだ。


「ルナリアが召還された時は、顔も知らぬ魔術師のことが憎くて仕方なかったが、今では感謝しているよ。それに、やはりこうなることが最善だったんだ。君と家族は再会するべきだし、君の名誉も回復されなければならない。慣れない昔の世界よりも、元の世界にいた方が暮らしやすいだろう」


 カインがルナリアの髪を一房掬って口付ける。


「私は貴方と一緒なら、どこででも生きていけます。……でも、心残りがあったのは確かです」


「無理やり人生を捻じ曲げられたんだ。心残りがあって当然だ。だから、その心残りを壊しに行こう」


「心残りを、壊す?」


 訳が分らないでいるルナリアの手を握り、パチンと指を鳴らすと、次の瞬間には見覚えのある扉の前にいた。忌まわしい記憶の残る、あの裁きの間の扉の前に。

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