第19話『終わる夏、始まる秋。』
自宅の庭で、絆奈と花火を楽しむ。
今年は花火大会が中止になってしまった。
いつもなら近所の川沿いで、それなりな規模の花火大会、夏祭りがあるのだが。
なにやら連続殺人犯とやらが、川付近でうろついてるらしく、それで中止になってしまった。そいつはまだ捕まっていない。
ともよと絆奈、ふたりを誘って行こうと思っていたのだが、幻に終わってしまった。来年は行けるように祈っておこう。
「良夫さん見て見て~☆ この花火すごいキレイだよ~☆」
子供のようにはしゃぐ絆奈。
そもそも高校生はまだ子供か。
なら、子供のようにはしゃいでも罰は当たらないか。
ダボダボのTシャツを身に纏っている絆奈は。
さっきから動くたびに。
緩やかでほぼ平坦な胸元を。
首元からちらちらとこちらに覗かす。
今はブラジャーを身に着けていないようで。
丸見え。
そんな絆奈の姿を見ても、発情もしないし欲情もわかない。
かわいいなとは思うんだけど。
そもそもなんでそんなにサイズにあっていないものを着ているのか。
わざとなのか。天然なのか。
それとも誘惑してるのか・・・。
誘惑というワードが浮かび、自然とともよの事を思い出してしまう。
刺激の強い夏だった。
ちょっと忘れられない。
「あー! 終わっちゃったっ☆」
惚けていると。
最後の一本が、終了してしまったようだ。
火の光りがなくなり、辺りが暗くなる。
ご近所さんも、こんな暑い日はカーテンを閉めて、冷房ガン効かせだ。
静寂。
ふいに冷たい風が走る。
身震い。
暑いと思っても、秋の足音が近づいてくる。
「じゃあ、家の中入るか」
「・・・うん」
?
絆奈の様子がおかしい。
みょうにしっとりしている。
「どうした?」
「なんかさ。こんなにキラキラ派手に輝いていても、ぱっと終わって暗くなっちゃうんだなって」
「う? うん・・・?」
みょうに詩人。だれだおまえ。
「なんか・・・・・・人間関係みたいっ」
「え?」
ざわぁ~、と風が吹き。
身震いしている間に。
とたたっと軽やかに。
風に流されるように。
絆奈は先に玄関に行き。
家の中に入ってしまった。
「・・・・・・」
表情は見えなかった。けど。
泣いていたの。かも。
横を通過したとき。
彼女の流した涙が。
風に乗って。
俺の頬に触れた。
触れた途端、弾けた彼女の涙粒。
これは。
彼女の壊れた心の始まり――――。
このときの俺は。
そんな絆奈の様子に気づけるわけもなく。
頬に触れた生ぬるい水っ気に。
雨粒と勘違いし。
曇天を見上げていた。
翌日は雷雨。
絆奈が壊れてしまうのは、もう少しあとの季節――――。




