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俺はチートアイテムを手にしたはずなのに  作者: りゃもぺで
序章
4/4

第3話

「うぅ...寒い」


凄く身体が冷えている。

昨日あんな事をしてしまったため、お姉さんに叱られ外に追い出され、店の外で野宿をした。

アリサを仲間に誘ったのはいいが、あんな事をしてしまったので拒否される確率が高いだろう。


「ねぇちょっとあれ、例の胡散臭い奴が野宿してるわよ」

「やだ汚らしい!早く行きましょ」


......。




ガチャッ


「あら、いらっしゃい危険なお兄さん」

ドアを開けた途端お姉さんにそんな事を言われた。

確かに危険人物である。ぐうの音も出ない。

「はぁ...。取り敢えず、これでも飲みなさいな。身体冷えてるでしょ」

そう言って湯気が立ってるお湯を差し出してくれた。

昨日の鬼の形相は一体どこに...

「あ、有難うございます」

嬉しいですけど、やめて下さい。その良心が更に追い討ちをかけて来るんです。



ガチャッ


「「あっ」」

カウンターの奥の扉からアリサが人間の姿で出てくる。

気まずい...

アリサはそっぽを向いている。

クソッ、これじゃあ胡散臭いという称号と変態という称号を受け持ってしまう事になる。

何か言わなければ...

そんな事を見通したのか

「私は店の準備があるから話付けときなさいね」

お姉さんが気を利かしてくれたのかなんなのか知らんがカウンターの奥の扉から出て行った。


......。

沈黙である。

えっと...

「ア、アリサ、その昨日は...すまなかった。そのー、俺も周りから蔑まれてて...アハハ、それなりの理由があるんだが...その、勢いでやっちゃったというか...寂しかったからというか...」

あやふやな感じになってしまった。

クソォォ!こういう時にオタクは分かんねえんだよ!

「...仲間に誘ったのも、勢いなんですか?」

アリサがチラチラこちらを見ながらそんな事を言ってくる。

「...いや、それは本気なんだ。昨日言ったように俺は弱い。だから戦力になる仲間が欲しかったんだ。あと...」

あと何?という顔でアリサは此方を凝視。

「あと...お前が可哀想で養ってやりたいと思ったんだ」

改めて言葉にするとなんだかむず痒い。

「子供扱いですか!?...でも、嘘をついてるようには見えません...昨日の事は許しませんが、仲間にはなってあげます!」

上から目線のくせに嬉しそうにしている。

はぁ、忙しい奴だ。

でもまぁこいつも、食い口を目当てにしてない事は分かる。


「あのぉ、ところで冒険と言っても何の冒険をするのでしょう」

アリサが表情を変えて疑問を言う。

「あぁ、まだ言ってなかったな。俺の目的はズバリ!魔王を倒す事だ!」

フッ、決まったぁ...

「...魔王?ですか?ケンジはお伽話を信じてるのですか?現実には存在しませんよ」


...え?

「この世界って魔王居ないのか?」

「何を言ってるんですか?...魔王というか、大悪魔ディアブロの事ですか?」

大悪魔...?不吉な感じがするが。

というか魔王が居ないなんて予想外だった。

こういう世界は大抵、魔王によって人類が脅かされてる。というのが通例なのだが。

この世界は常識が通じないという事を心に留めておくか。


「...所で、その大悪魔ディアブロ、って誰?」

「ええぇ!?」

アリサが呆れ顔から驚愕の表情に変わる。

「記憶喪失でもしたんですか!?大丈夫ですか!?」

「してない!!...お前が亜人だって事明かしてくれたから俺も明かすが、実は俺は転生者なんだ、だからここの常識とかは知らん!色々教えてくれ!」

ぶっきらぼうに転生者という事を明かす。

「て...てて、ててて転生者ぁぁぁ!?!?」

目玉飛び出るんじゃないかと思うぐらい思い切り目を見開くアリサ。

「ほ、本当に転生者ですか!?」

おっ、意外と食いついてきた。

それもそうか。転生した直後転生者と知った俺を寄って集って祝福してたぐらいだ。

英雄と同じ立場なんだ!

「それで、どんな武器とか特性を持ってるのですか!?」

目を輝かせ無邪気な子供のようにアリサが聞いてくる。

「フッ...聞いて驚くなよ。俺は!聖剣をエクスカリバーを持ちこの世に舞い降りたのだ!!」

「エクスカリバーですって!?やばいじゃないですか!?太古の伝説の武器を持ってるなんて、ディアブロ討伐も夢じゃないですよ!!」

「そのディアブロとやらが分からんが、魔王と同じ立場なら一振りで葬り去れるわ!!」

「凄い!!凄いです!!一生ついていき...えっと、それでエクスカリバーは何処に?」

「それはなぁ!今はこの武具屋に置かせてもらっている!」

「...えっと、何で持ち歩かないんですか?」


...あ。

盛り上がってすっかり忘れてしまっていたが俺はエクスカリバーを持てないんだった。


「そ、それはなぁ、雑魚敵相手にエクスカリバーを使うのは勿体ないと思ってな!それで」

「何を言ってるんだいお兄さん。重くて使えないからじゃ無かったのかい?」

いつのまにかお姉さんがカウンターの奥の扉から荷物を持って出てきていた。

「えっと...重くて持てないと言うのは...どう言う事なんですか?」

え、えっと...

徐々にアリサが俺を胡散臭い目で見始めている。

やめて下さい!もうその目嫌です!


「はぁ...何でハッキリ言わないんですか、もう仲間なんですから無理しなくても良いのに」

呆れた様にそんな事を言う。

お姉さんが年下にそんな事を言われて恥ずかしいわね、と言う目で見ている。

やめて下さい!その目も嫌です!




「そういう事だったんですね...蔑まれていたというのも...気の毒に」

俺は今までの事や事情を全てアリサに打ち明かした。

アリサが俺の肩をポンポンと優しく叩いてくれる。

その良心が!心にくるんですよ!

「それにしてもおかしな話です。今までの転生者はレベル1でも強力なステータスで出現していると聞いていたのですが、ケンジはステータスが補正されてないと」

何で他の転生者は強いのに俺は弱いんだよ!

まあもうあのクソみたいな神には天罰を下すと決めているんだ。もう考えない様にしよう。

「もうそのことは良いんだ...というかさっきの話で、大悪魔ディアブロ?とか言ってたがそいつは何なんだ?」

「...大悪魔ディアブロ。悪の権化、暴虐の悪魔とも言われています。その力は絶大で、一瞬で世界を消滅させる程の力を持っているとの事です」

「一瞬で世界を消滅させる!?そんなの倒せないだろ!」

そんなの鬼畜ゲーにも程がある!逆鱗に触れたら世界が滅ぶとか暗殺でもしなきゃ無理じゃないか。

「いえ、これもあくまで噂です。過大評価されてる可能性もありますが、とても強いのには変わりは無いと思います」

それを聞いて少し安心したが、相当レベリングしないと倒せない様だな。

「そして、最近モンスターの動きが活発になってる。昨日お兄さんも夜になる前に襲われた様にね。それも大悪魔が転生者を恐れて、らしいわ」

お姉さんがアリサの発言に補足する。

自身に対応できる人類が現れ始めたのを知り、モンスターの湧きを増やしたのか。

鬱陶しい奴だ。

「ま、この世界はそいつ倒せば平和になるんだろ?」

「そう簡単に言っても、サラッと倒せる相手では無いのですよ?エセ転生者だと尚更」

ニヤッ、と口角を上げてそんな事を言う。

こいつ!!

アリサと取っ組み合いを始める。

それを宥める様にお姉さんが

「まあまあ、大悪魔討伐を目指している冒険者もとても多い訳だし。意気込みは良いんじゃないかしら!」

うう、なんか当たりが冷たい気がするんですけど。

そういえばある事を思い出した、気を落としてる場合ではない。これでも転生者なのだ。

「お姉さん、集会所とかってありますか?」

するとお姉さんが、ああ、と声を出して

「冒険者登録をしなきゃね!」

へ?







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー








「では、こちらに本名でサインをお願いします」

ガヤガヤと騒がしい中で集会所の受付に来た。

どうやらお姉さんから聞くと、正式な冒険者となるには手続きが必要らしい。

正式な冒険者とは、モンスターの討伐やクエスト達成の時に報酬が貰えるようになったりするらしい。あと色々あるらしいが覚えていない。

さっきから色々と聞き耳を立てていたが、美味しい情報やクエストを知っている輩が大分居そうだ。交渉とかすれば聞かせてくれるのだろうか。

ちなみにアリサはフードの上に更に布を羽織い姿が分からないようにして貰っている。


アリサが先にサインをする。

俺はアリサに続き、達筆、のつもりで紙にサインをする。

「はい!有難うございます!ええと、アリサ・ラクーン・アフガンハウンドさんと...えっと、これは何処の国の言語...え!?」

突然、受付嬢が大きく目を見開いて、紙を顔面スレスレまで近づけ俺を見てを繰り返す。

そして大声で、

「知らない言語...!?もしかして!新たな転生者さんですかああああああ!?!?!?」

ギョッ!!

受付嬢が集会所中に響く声を出したため、周りで喋っていた冒険者達が一斉に話をやめこちらを向いてくる。

そして近づいてくる。


やばああい!エセ転生者では無いけれどほぼエセ転生者なのバレたら生きづらくなるぅぅ!!

この状況を打破するには...!!


......浮かびません。

無理して足掻いても余計ダメな事は分かってます。

色々考えてる内に一人のゴツくてチャラそうな金髪の男が近付いてくる。

俺は咄嗟に顔を背ける。

やべえ、このままじゃ醜態晒して集会所出入りできなくなっちまうぅぅ!

そうだ、アリサがいる。助けてくれアリサと言わんばかりに後ろを振り返るも、アリサは私この人知りませんみたいな感じで10mぐらい離れていた。

アイツ後で鼻潰してやる!!!

「兄ちゃん、あんた転生者かい?」

ゴツチャラ金髪が話しかけて来た。

「は、はい、そうです」

あっ。

怯えて自然に応えてしまった。

「はははっ!!そうか!!新しい転生......んっ?あんたもしかして...あの胡散臭い転生者ってやつか!?」

あぁ終わった。

もう別の国に逃げよう。そうしよう。

でも転生者は大悪魔ディアブロに対抗できる力を持つ程なのだからあっという間に世界に広まるだろう。

そうなったら、もうサバイバルにシフトしよう。そうしよう。

アリサはついてくるだろうか...いや、流石に食い逃げ人生を選ぶのか?


突然、ゴツチャラ金髪が不敵な笑みを浮かべて、

「お前が胡散臭いやつか、ガッハッハッハ!意外と顔はいいじゃねえか!ようこそフェーメルの町へ!ようこそフェーメル集会所へ!歓迎するぜええ!!」

「「「「「「「うおおおおおお!!」」」」」」」


んっと?

ちょっとよく分からない。

なんで盛り上がってんの?


「胡散臭いやつー!せめて上手くやれよ!」

「そんなヒョロイ体で大丈夫かよ!良かったら鍛えてやるぜ!」

「死ぬんじゃねぇぞ!胡散臭い奴!」


んー?????

俺は理解だけは早い方だと思ったんだがな。それは間違いだったようで。

全然理解できません!


「新しい転生者さん!...かどうか分からないんですけど、冒険者になって下さった事をとても感謝します!」

受付嬢までもが俺を祝福している??

「あのー...僕、一応転生者なんですけど弱いですし、この世界の事もよく分かってないんですがこれって茶番かなんかですか?」

もう茶番かと疑ってしまうレベルである。

こんな俺を祝福する訳がなかろう。

すると受付嬢がフフフッと笑い、

「弱くても胡散臭くても冒険者は冒険者。命を賭けてモンスターに対峙し、命を賭けて依頼を達成する。少なからず戦力がアップするのです。それを祝わない輩が何処にいるのですか?」


確かにそうだ。命をかけてまで冒険者になろうとかそんな重くは考えていなかったが、結局体を張っているのだ。それを馬鹿にするなどたかが知れている。

「でも幾ら何でもこれは盛り上がりすぎじゃ...」

その疑問に受付嬢が、

「最近、大悪魔に対抗できる転生者が現れてから、人類に希望が湧き始め、冒険者の士気が凄く上がっているのですよ。更に転生者...?なのかは分かりませんが、それもあっての盛り上がりですよ」


なるほどなぁ。

俺にも、居場所はあったみたいだ。


「よかったじゃないですか。ここなら私も人間のままなら顔を出しても」

「馬鹿!出すな!冒険者でも犯罪者は犯罪者なんだから顔隠しとけ!てかさっき逃げただろ。後で耳触らせろ」

「な!?それはダメです!!」

「だったら顔を出すな!」

周りに聞こえないよう小声で会話し、アリサは観念したのか布を深く被った。


それよりも、俺は今歓迎され、期待されている!この期待に応えなきゃならない!

なんか、ファンタジーぽくなって来たぞ!

そう考えるととても嬉しく感じて「胡散臭い奴!頑張れよ!死ぬなよ!」

「胡散臭い人!私と組まない!?」


感じて......


「強くしてやるぜ!胡散臭い奴!」

「防具ないのか?古い奴だが機能は落ちてねえから、持って来なよ胡散臭い奴!」


感じたのは一瞬でした。


結局!!どうして!!こうなるんだよおおおおおおおおおおおお!!!!



















逃亡成り上がり生活とかも面白そうですが、流石に可哀想なので居場所は与えました。


こんな感じにして欲しい、とかの要望は受け付けますので是非


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