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俺はチートアイテムを手にしたはずなのに  作者: りゃもぺで
序章
2/4

食い逃げ犯

ギリギリギリギリ......


「...あら、見て!あれが噂の...」

「うわほんとだわ!胡散臭い転生者だわ!」


ギリギリギリギリ...


「あれが胡散臭いやつか...あいつ本当に転生者なのか?」

「やめてやれ、雰囲気に浸かりたかっただけなんだろ」


ギリギリギリギリ...


「あー胡散臭い人だー」

「ほんとだー」


俺の名前はケンジ。聖剣エクスカリバーを持って敵をなぎ倒し、ついには魔王を倒し、歴史に名を馳せる。

予定だったのに。


ギリギリ...

「ああああああああ!!もうクソ重いんだよ!!何が聖剣エクスカリバーだあ!」


ガタンッッ!


俺は無駄に光り輝く聖剣を地面に強く叩きつけた。無駄に頑強なのか傷一つ付いていない。


「無駄に重いわ無駄に光るわ無駄に硬いわ。もおお何なんだよ!これが聖剣だと!?ふぅざけんなよお!?持てなかったら只のガラクタじゃねえか!!...クッソ、ゼウスぜってえ殺してやる!」

耐えきれず大声でそんな事言ったせいで、周りの人達は余計に引いてしまって俺から離れていく。


こんなはずじゃ...こんなはずじゃなかったのに!


いや、苛立っていても仕方ない。取り敢えず今の状況を整理しよう。


まず、このガラクタが持てないんじゃ武器にならない。素手でモンスターに挑むなど馬鹿もいいところだ。だが俺は武器を買う金も無い。

いや、どうしろと!?


待てよ。このガラクタ、おそらく一応伝説の武器なのだろうから、売れば高値で買い取ってくれるんじゃ無いか?







「お兄さん、それはちょっと無理だねぇ...」

「そ、そんな...」

俺はすぐ近くに見つけた武具屋にガラクタを持っていき事情を説明したのだが。この通りである。

「そこを何とか!お願い出来ませんか!?」

「んん...さっきも言った通り、伝説級の武具やアイテムは国の取り決めで売買禁止にされてるから...ごめんなさいねお兄さん」


俺はガックリと首を落とす。

そりゃそうだよな。伝説の武器売る奴なんかいないし、急に売るとか言われても困るよな。ゲーム感覚でいたのが間違いだった。

「すいません、お姉さん...じゃ、僕はこれで」

気力無い声で言い、とぼとぼ歩いて入口のドアに向かう。

「ちょっと待ちなお兄さん!なんか、すごい気の毒だからさ...ほら、これ」

そういうと武具屋のお姉さんはカウンターの下の棚から少し錆びた剣を取り出した。

「護身用にはなると思うよ、少し古い中古だけどね」

「良いんですかお姉さん!」

こんな良くされるのは初めてだ。俺はカウンターの剣を取る。

確かに少し古ぼけていて錆びているが、十分使えそうな剣だ。

「本当にありがとうございます!このツケはいつか...」

そう言いかけると

「そのツケは今払って貰うよお兄さん」

微笑みながらそういうと、

「薬草を取ってきて欲しいんだよ」

「薬草ですか?武具屋なのに何で?」

「実は薬屋の主人が薬草の在庫が無いから取りに行ってくれないかと頼まれてね。店を閉めてから行こうと思ってたんだけど、丁度いいからお兄さんが取りに行ってきてくれないかい?」

薬草か。RPGならそこら辺で採れるものだと思うのだが、どこで採れるのだろうか。

「あの薬草ってどこで採れるんですか?」

「ん?あぁそれはね」







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー








まさか、こんな森の中まで入るとは...


ここはリーフの森と呼ばれる場所らしい。昼間はモンスターの活動が無いが、夜になると夜行性の獣がウヨウヨ出てくるらしいので素早く薬草を取って帰りたい。

ちなみに例のガラクタは一時的に武具屋のお姉さんに預かって貰ってる。持って行ったら集めるどころじゃ無くなる。


それにしても、空気が美味い。風が肌に当たるととても気持ちがいい、清々しくなるな。

ファンタジーを感じながらも、ある木の根元にすずらんみたいな形の紫色の花を見つける。

「あった!これが薬草か」

俺は薬草を取り、武具屋のお姉さんが貸してくれたポーチに入れる。

大体10個ぐらいで良いと言われたから、このペースでいけば暗くなるまでには余裕で間に合うな。

「ん?クサッ!?なんだこの臭い!?...あぁ、このキノコか」

臭いの発生源はキノコだ。見た目は美味しそうだが強烈な臭いを発してるため食おうとは思わない。でもこのキノコは周辺を見る限り此処に数本しか生えて無さそうだ。貴重な物なのか?




もうそろそろ日が暮れる時間だ。

ポーチは薬草でパンパンになった。20個は取れたかも知れない。最初採った薬草の周りに密集してたから沢山手に入った。

「よし、武具屋に戻るか」

俺は来た道を戻り始める。


それよりも今後はどうしようか。

ガラクタは使えない。町の住民からは引かれてる。そして今のステータスは恐らく一般市民クラスだと思うので魔物一匹も満足に狩れないだろう。そしてお金が無い。どうしよう。俺、これから。


ガサゴソ...


ん?今横の草っ原動いたような...


ガサゴソ...ガサガサガサ!!

「「「クォオオオオン!!」」」


三匹のオオカミが襲ってきた!


「うわあああああああああ!!!誰か助けてええええ!お助けえええ!!」

やばいやばいやばい!ヨダレ垂らしながらこっち走ってきてるんですけど!?てか意外とこの世界の犬デカイんですけど!?てか昼間から魔獣居るんですけど!?なんでぇ!?

「「「クォオオオオン!!」」」

ヤバイこのままじゃ追いつかれるぅ!!

突如閃いた。

「そうだ!!...これでもくらえ!!」

俺はポケットの中から酷い臭いがするキノコを断腸の思いながらも手ですり潰しオオカミに投げつける。

「「クゥウウウン!」」

良し、なんか効いてるようだ!今のうちに逃げなければ!


「ハァハァ...」

死ぬかと思った、本当にこんなんで魔王倒せんのかよ。

そういえばさっきキノコを投げつけた時オオカミは2匹しか居なかったな、あと1匹はどこに...


ガサゴソ...

「クオオン!!」

「うおっ!?!?」

急にオオカミが飛び付いてきて、俺は体制を崩しそのまま地面に倒れこむ。

「グルルルル...!」

何とか噛み付こうとしてくるオオカミを抑えこむが、力はオオカミの方が強い。このままじゃ...!

「クソッ!」

俺は咄嗟に腰に納めていたショートソードを右手で抜き

「うらあああああああ!!!!」

オオカミの横腹に二回刺した。

「クゥン!!クゥン...」

「ハァハァ...」

噛み付かれる寸前だった。予想以上に血がリアルで、血生臭く、吐き気を催した。

「おえぇ...」

俺はホラーとかグロの分類のゲームも結構やってて耐性はついていると思ったが、かなりキツイな。

本当に今度こそまた死ぬと思った。恐らくゲームみたいにリスポーンとかコンティニューは出来ないんだ。慎重に行動しないとな...。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー








「いらっしゃ...お兄さん大丈夫かい!?」

「あはは...何とか」




「成る程、そんな事が...危険な目に合わせちゃったね。これが今回の報酬だよ」

武具屋のお姉さんはそう言ってお金らしき物を差し出してきた。

「え!?お金なんて貰っちゃって良いんですか!?」

「当たり前だよ!まず薬草を多く持って来てくれたし、危険な目に合わせたてしまった慰謝料、依頼料、あと私の気持ちだよ!」

「遠慮なく頂きます」

これは嬉しい。宿とか飯とかどうしようと思ってたんだ。

「それにしても、そんな返り血浴びてちゃ殺人鬼見たいに見られちゃうし、手ちょっとエグい臭いしてるから...町の大浴場でも行ってきたらどうだいお兄さん」








ふぅ...。

俺は幼い頃から風呂だけは好きで、温泉にも通っていた時期が有ったのだが、久し振りに入るとやっぱり気持ちがいい。異世界でも変わらないものは変わらないんだな。


着替えは武具屋のお姉さんが用意してくれて助かった。色々助けて貰ったんだし今度ちゃんとお礼言わなきゃな。

......ん?


「待てコラァァ!!例の食い逃げ犯だぁあああ!!」


大浴場を出て、飯食って宿を探そうと思ったんだが...何の騒ぎだ?


「追え追ええええ!今度こそ逃がさないぞおおおおお!!」

料理長と思しき長い帽子を被ったおっさんとその手下みたいな料理人三人がかりで誰かを追いかけている。

追い掛けられているのは...見た感じ中学生ぐらいの女の子か。黒いフードを被っている。


どうやらあの女の子が食い逃げをして追い掛けられてるのか。そして『例の食い逃げ犯』とか言ってたから常習犯なのか。あの少女がか。何だか不憫だな。


...待てよ。あいつ今までで捕まったことないのかな?そうだとしたら...


俺は食い逃げ犯が走ってくるルートに先回りし、裏道の隣で待機している。

そして今その食い逃げ犯がこっちに走ってきた。

俺は食い逃げ犯が見えるように手招きをして裏道に誘導する。

食い逃げ犯は一瞬驚き躊躇いの表情をしたが焦っていたのか俺の言う事を聞き裏道に入る。


「くそおおお!また逃げられた!!何であいつ逃げ足だけは速いんだああ!」

「まだ周辺に居ないか捜し回れ!!クソあいつ許さんあいつ許さん許さん許さん!!」


「あ、あの、何で私を助けてくれたんですか?」

少女を良く見ると、フードの中の顔は綺麗に整っているが少し窶れている。華奢な体で、充分に食事を取っていないのだろう。

可哀想...だが...


「フフフ...」

「え?」

「お前相当な食い逃げ常連らしいな!しかもまだ捕まってないと見た!」

「そ、そうですが...」


「よし、お前をあの料理長に突き出す」


困っていた食い逃げ犯の顔が絶望の表情に変わった。

食い逃げ犯は逃げ出そうとするが既に食い逃

げ犯の腕にホールドを掛けている。

「えぇ!?なんでですか!?!?助けてくれたんじゃ!?」

「ハッ!!残念だったな!!お前は罠にハマったというわけだ!今まで捕まえられず相当ご立腹な料理長に引き渡せば報酬の一つや二つくれると思ったんだ!!」

「最低です!!あなた最低ですよ!!」

「犯罪犯してる奴に言われたくないわ!側から見りゃ俺は正義のヒーローなんだから、だから抵抗するのは辞めろ!男の力に勝てると思ってんのか!オオカミ三匹相手に一人で退けた男に!!」

「知りませんよそんなの!!ううう!離してください!!」

「やーだ離しませええええん!!!お前は俺の金になるんだよおお!!」

「わ、分かりました!分かりましたから!!何でもするから突き出すのだけはやめて下さい!!!」

「ん?今何でもするって言ったよね」

「あっ」























今回はちょっと短かったかもしれません。

次回ムフフな展開に!?

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