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魔王「もし、我の味方になるのなら世界の半分をお前にやろう」勇者「いや、いい。……代わりにお前をくれ」

作者: 日暮キルハ

魔王「……は?」

勇者「ん?聞こえなかったか? それとも今のじゃ分かりづらかった? なら、もう一度。……お前が好きだ。魔王」

魔王「……気でも狂ったか?」

勇者「まさか。俺はすこぶる正常だよ。正常だから、魔王のそのサラサラの白い髪も宝石みたいな赤い目も柔らかそうな唇も全部独り占めしたくなる。お前、気付いてないかもだから言っとくけど、俺が今まで見てきた女の中で一番綺麗だからな?」

魔王「…………」

勇者「……? おーい、どーかした? 聞こえてる?」

魔王「…………何なのだ。……お前は」

勇者「何って……。そりゃあ、勇者だろ?」

魔王「……勇者は魔族を滅す存在だろ。それが……こんな……好きだとか……」

勇者「照れてるところも可愛いな」

魔王「う、うるさい! 何なんだお前は! 調子が狂う!」

勇者「だから勇者だって。惚れた相手が人間じゃなかっただけでそれ以外はどこにでもいるようなただの勇者。……魔王を殺すためのただの捨て駒」

魔王「その捨て駒がなんで我の事が……その……す、好き……だとか言うんだ!」

勇者「ひっどいな。捨て駒にだって恋愛する自由くらいはあっていいだろ?」

魔王「そ、それは……それにしたって相手が魔王である必要はないだろ!?」

勇者「や、それは俺に言われても。別に俺は魔王を好きになったわけじゃないし。たまたま好きになった相手が魔王だっただけだし」

魔王「……っ」

勇者「ま、そういうわけだからさ。考えてみてよ。勇者になったせいでもう寿命もそこまで長くないだろうし、お試しみたいな感じでいいから」

魔王「お試し……」

勇者「うんうん。魔王は俺の事なんてよく知らないだろうし、俺の事を知って、それで嫌いだなって思うなら殺してくれてもいいからさ。もちろん抵抗なんてしない。惚れた相手に殺されるってのも悪くなさそうだし」

魔王「なら、今すぐ殺してやろう」

勇者「別にいいよ。はい、どうぞ」

魔王「………………はぁ。もういい。分かった。少しだけ頭のおかしいお前に付き合ってやる。どうせ勇者なら長くはもたんだろうしな」

勇者「やった。相変わらず優しいね」


◇◆◇◆◇


勇者「あれ、魔王。何してんの?」

魔王「人間が新しい勇者を五人送り込んできた。もうじきここに着くだろうから我が相手をする」

勇者「五人? 随分多いね。勇者ってバカみたいに強くなれる代わりにアホみたいに短命になるから滅多になりたがる奴いないのに。犯罪奴隷とかかな? いや、そうだとするとわざわざ魔王を倒しに来たりするわけないよね。ってことは自分で望んで? ……変わり者が多いんだね」

魔王「お前もその変わり者の一人だということを自覚しろ」

勇者「俺はほら。魔王に一世一代の告白をするって目的があったからさ。ところでそろそろ俺の事好きになってきたりしない?」

魔王「なるわけないだろ。お前がここに来てまだ一週間だぞ? ……あ、でもお前の作るご飯は美味しい」

勇者「お、マジで? 胃袋から掴む作戦成功だねー。ちなみに俺は美味しそうに俺の作ったご飯食べる魔王の顔ハムスターみたいで可愛くて好きだよ。ほら、見て。昨日隠し撮りしたんだけど可愛く撮れてるでしょ?」

魔王「なっ!? よ、よこせっ!」

勇者「魔王のお願いと言えどそれは聞けないなー。あ、お仕事頑張ってね」

魔王「ま、待て! 勇者! バカ勇者! せ、せめてもっとクールな感じですました我を撮って……!」


◇◆◇◆◇


勇者「さて、今日で一月が経ったわけです」

魔王「……それがどうかしたのか?」

勇者「一つ気付いたんだけどさ。……魔王ってほんとボッチだよね」

魔王「……そんなことはない。友達くらいいる」

勇者「どこに?」

魔王「…………十年前。魔獣に襲われて死にかけている人間の子供を助けたら何でもするって言ったから友達になれと言った。…………う、嘘じゃないぞ? いつか会いに行くって言ってたから!」

勇者「…………。魔王の言う事ならなんでも信じるけど。……イマジナリー?」

魔王「…………死にたいのか?」

勇者「マジかよ。睨んでても可愛いな……」

魔王「……」

勇者「っと。あまりの可愛さに本題から逸れるところだった。それで魔王がボッチだって話なんだけどさ」

魔王「軽率に可愛いとか言うな! あと、それ以上その話をしてみろ! 消し炭にするからな!」

勇者「えー。いいじゃん別に。今はもう俺が側に居るわけなんだし」

魔王「何もよくない! むしろお前が近くに居るせいで誰も我に近寄って来んのだ!」

勇者「それはないよ。だって俺、もう四天王とメアド交換したし」

魔王「なっ!? わ、我だって……その気になればメアドくらい……」

勇者「四天王的に魔王は強すぎて近寄りづらいんだってさ。あと、常に冷たい目をしてるってのも相まって。要は怖いんだろうね」

魔王「……っ。……仕方、ないではないか。威厳がないと誰も我に着いては来ん。……着いてきてくれないと守ることもできん」

勇者「うんうん。だから、魔王の可愛い写真送っといた」

魔王「そうか……。……ん? ……んんっ!? お、おまっ! なんてことを!!」

勇者「大絶賛だったよ。魔王様こんな可愛い顔するんだぁって四天王全員から返信来たし」

魔王「ぬわぁぁっ!? お前ぇ!!」

勇者「あと、四天王主導で魔王のファンクラブ作るってさ」

魔王「っ!?」


◇◆◇◆◇


魔王「ふふっ。ふふふっ♪」

勇者「そんなにフレアと会話できたの嬉しかったの?」

魔王「なっ。何のことだ!? 我は別にっ。そんな。部下と会話をするくらい当たり前のことで……っ」

勇者「そーなん? でも、フレアからメール来てたよ。魔王様と初めて喋ったー!ユウユウが言った通り凄い可愛い声だったよ!って」

魔王「なっ!? 可愛っ!? 可愛い……のか? 我としてはあまり威厳の無い声だから良くないと……。ん? ユウユウ?」

勇者「俺のこと。勇者だからユウユウ」

魔王「……なんか、我より仲が良さそうだな」

勇者「お? もしかして嫉妬? いやぁ、モテる男は苦労が絶えないなぁ……」

魔王「違うわ! 我はもっとフレアと仲を深めたいのだ! お前の事なんかどうでもいいわ!」

勇者「あっはは。それならなんの心配もないよ」

魔王「む? まさか、また余計なことを」

勇者「違う違う。誤解は解けたんだからさ、魔王はきっともっと四天王の皆とも他の魔族とも仲良くできるに決まってるってこと」

魔王「……そうかの?」

勇者「もちろん。だって、魔王は優しいんだから」

魔王「……そ、そうかの?」

勇者「あははっ。ほんと魔王は可愛いなぁ。あ、ところでそろそろ俺が来てから三か月だけどそろそろ惚れたりしない?」


◇◆◇◆◇


魔王「……のう。勇者」

勇者「んー?」

魔王「その……ありがと。……お前のおかげで我は四天王と仲が深まったような気がする」

勇者「……お礼は嬉しいけど、四天王がただ魔王の魅力に気付いただけだよ」

魔王「でも……その、フレアもお前にきっかけを貰ったと」

勇者「きっかけはきっかけだよ。それを活かしたのはフレアと魔王だ。ま、活かせなかったら活かせなかったで何度でもチャンスは作るつもりだったけどね」

魔王「……どうしてだ?」

勇者「……?」

魔王「どうして、お前はそこまでしてくれる?」

勇者「そりゃ魔王が好きだから。で、魔王が寂しそうにしてたから。俺は長くないからね。ずっとは居られない。死ぬまでに魔王がもう寂しい思いをしなくて済むようにするくらいはするよ。俺は魔王の顔だったら笑ってても怒ってても拗ねてても喜んで見れるけど、泣いてるとことか寂しそうにしてるとこだけは見たくないからさ」

魔王「……勇者」

勇者「あ、今のはポイント高かったんじゃない? 惚れた?」

魔王「ほ、惚れんわ! バーカ!」

勇者「マジかぁ……。そろそろ半年経つし惚れてくれてもいいんだよ?」

魔王「ふ、ふん。我はそんな尻軽な女ではないわ。お前など……何とも……」

勇者「……っ」

魔王「勇者……?」

勇者「……んー? どうかした?」

魔王「いや……お前、今なんだか苦しそうに……」

勇者「んー? ……あー、うん。たしかに苦しいよ」

魔王「だ、大丈夫なのか?」

勇者「全然大丈夫じゃない! 魔王が可愛すぎて胸が苦しいよ!」

魔王「……っ。……死ね! バカ!」


◇◆◇◆◇


勇者「……あのさ、魔王」

魔王「なんだ? 急に改まって」

勇者「迷ってたんだけどさ、やっぱり言っとくわ」

魔王「……?」

勇者「十年前に魔王が助けた子供。あれ、俺なんだよね」

魔王「……は?」

勇者「で、魔王は友達になってって言ったって言ってたけど、それは間違ってるよ。魔王はあの時、一人は怖い一人は寂しい。だから一人にしないでって言ったんだ。で、バカな俺はそれじゃあ友達になろうって答えてしまった。恋人になろうって言えば万事解決だったんだけどね」

魔王「……それはつまり。……その約束のためにお前は我のところに……」

勇者「あはは。そう思うよね。でも、違うよ。俺が来たのは俺が魔王を好きだから。なんで?とか聞かれても困るからね? 好きにいちいち理由なんて考えてないし。まぁ、でも死にかけてるところをかっこよくて可愛い女の子に助けられたらそりゃ惚れますよ。惜しむべくは俺がガキ過ぎて抱いた感情が恋心と気付けてなかったことだけど」

魔王「……どうして、黙って」

勇者「いらない誤解を生みたくなかった。約束の為とかそういう風に俺のこの気持ちを受け取られたくなかった。あと、友達として来ちゃったらもうそれ以上先にはいけないでしょ?」

魔王「……なら、どうして今になって」

勇者「いや、俺の体がそろそろ限界っぽくてさ。魔王、十年前のことバッチリ覚えてたみたいだし、変な期待させ続けるのもよくないと思って。迷ったんだけどね。結局全部話しておくことにした」

魔王「限界って……」

勇者「そのまんまの意味だよ。さすがに一年経つとキツイね。ぶっちゃけ今も倒れそう」

魔王「……普通、死ぬのが分かってて告白とかする?」

勇者「いやぁ、我ながら勝手で申し訳ない」

魔王「…………はぁ。……ん」

勇者「……? 両手広げてどうしたの? 抱きしめろってこと?」

魔王「よく分かってるじゃないか。早く来い」

勇者「…………もしかして、俺の事好きだったりする?」

魔王「……まぁ、否定はしない」

勇者「……俺、たぶんあと二日もしたら死ぬ。……ごめん。マジで勝手なことした」

魔王「約束守って会いに来てくれたから許してやる。それにお前は死なない。我は魔王だぞ? 人間の寿命程度いくらでもどうにかできる」

勇者「……マジか。じゃあ、お言葉に甘えて」

魔王「否定はしなかっただけだからな?」

勇者「あー、はいはい。分かってるよ。まだ寿命ありそうだし、これから惚れさせてみせるって。あ、それはともかく一つだけいい?」

魔王「……なんだ?」

勇者「魔王、めっちゃ良い匂いするんだけど。あと五年くらい抱きしめててもいい?」

魔王「~~~っ!? 良いわけないだろ! この変態!」

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