十五七
「七歳の誕生日おめでとう。リア」
「「「おめでとうございます。リア様」」」
お父様とお母様が、私の誕生をお祝いしてくれる。
幸せで懐かしい風景。
メイドが大きなケーキを運んで、美味しい紅茶を入れ直してくれる。
「ありがとう!お父様!お母様!」
なんの憂いもなかった。ずっと続くと思っていた幸せな日々が、今では遠い昔のよう。
ああ、どうして。あの家でただ幸せに暮らすのすらも、許されなかったのだろう。
我が国では、生まれた子供の七歳のお祝いと、十五歳のお祝いがある。
女の子にとっては、七歳が主役で、男の子にとっては、十五歳が主役となる。
とは言え、どちらも男女共に参加する儀式である。
七歳で、貴族も平民も関係なく、子が魔法の制限を解除する儀式があり、同時に聖女の資質のある女児を選定する為に女の子が主役となる。
その為、平民ですら七歳の儀式は特別なものとし、ドレスアップするのが風習になっている。
十五で、剣の儀式があり、この時に勇者の資質のある男児を選定する為に男の子が主役となる。
これも、平民であっても、子息の為に剣を用意するのが習わしとなっている。
リアという名の少女も、七歳の誕生日を迎え、魔法の制限を解除する儀式へと参加する歳となった。
「十五七おめでとうございます。それでは、お待ちかねの解除の儀をこれより行います」
住まう地の真ん中には、必ず一本の聖木が植えられている。その他を浄化し、豊かにする為のもの。
その周りを取り囲むようにして子供が集まり、祈りを捧げるのが七の儀である。
『わぁ……!』
聖木から妖精が舞い降り、金の粉を子供達の頭上へと振り撒いた。
とても幻想的で、思わず感嘆の声を上げる。
リアの頭上にも、精霊が舞い降りるが、なぜか避けるように別の子のところへと飛んでいってしまった。
周りは、火の魔法に愛されている子は赤い妖精が、水の魔法に愛されている子は青い妖精が、色とりどりの妖精が気に入った子に金の粉をかけている。
赤は火、青は水、緑は木、黄色は雷、茶色は土、白は風。
不安になってきた。ただ一人、粉をかけてもらえていないのだから。もしかしたら、不適正者かもしれないと。
たまに、どの属性からも愛されず、魔力なしと判定されてしまうことがある。あくまで、精霊魔法によるものではあるが、なかなか貴族の中で無能者は居心地の悪いものである。
なぜか、紫の精霊がいる。リアのところへ来ると、嬉しそうに金の粉をかけてくれ、その上くるくるとリアの周りを飛んでいた。
ほっとするものの、紫の精霊は話に聞いていなかった為に、何の魔法かわからない。
しかも、紫の精霊がぐいぐいと他の精霊を引っ張り、無理やりレアに金の粉をふりかけさせている。
渋々といった様子だ。
精霊がみな、聖木に帰っていく。
聖女がもし、この場にいた場合は精霊王からの祝福がある。今年はいないようだ。
「さぁ、これにて儀式は終了です。お気をつけてお帰りくださいね」