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世界の半分をお前にやろう

作者: 仙人掌絶叫

「世界の半分をお前にやろう」

「わかった!」


ウカウカ、ウダウダしている暇はない。

勇者は転移魔法で取り急ぎ国王の下へと帰還した。


「おおゆうしゃよついに魔王を」


「この国をよこせ」


「そんな殺生せっしょうな」


勇者は国王になった。


うかつな国王は勇者が自分に刃を向けるリスクを考えていなかった。


側近は気心の知れないどこかのおっさんより、気心の知れた仲間の方がいい。


戦士を将軍に任命した。

この国の兵士は戦いを全て勇者たちに丸投げしていたもんだから、本物の戦いを知らなかった。

剣も鎧も兜も兵士という職業もただの飾りと化していた。

将軍は長い冒険と魔物との死闘で培った、活きた実践的な技術を兵士たちに叩き込んだ。


魔法使いに魔法大学の学長をやってもらった。

この国の魔法使いは研究熱心なのは構わないが「雷は風属性に含むか含まないのか」だとか、現場からしたら全く使い物にならないどうでもいい事柄にばかりかまけて、卒業生の将来が心配だった。

学長は将軍と同様、実践経験をもとに現場で使える知識を教示した。


僧侶は広報大臣になった。

本来は法王にしたいところだが、「枢機卿以上は男しかなれない」という神のご意思を疑うようなしょうもない規律が邪魔をした。僧侶は女性だったのだ。

一瞬、法王に脅しをかけようか検討したが、教会勢力を敵に回すとまとまるものもまとまらない。

今は「勇者を回復し続けたレディ」としてプロパガンダに徹してもらった方がいい。

幸い、僧侶は美人だったため、彼女が町中を歩くだけでパーティの人気はうなぎ上りだった。


「あのぉ、勇者様?」

「どうした"元"王女様」

「私はこれからどうなるんでしょうか?」

「どうにもならねえよ」

「いやぁ、でもこういう場合の王女って普通は勇者と……」

「お前は自分の心配ばかりか。もういいわ出ていけマジで。いや本当に出てって。この国は何の役にも立たないお飾りにただ飯食らわせる余裕もないの。欲しいものいっぱいあんの。引っ越ーせ! 引っ越ーせ! さっさと引っ越ーせ!」


"元"王女様は"元"国王様と田舎に引っ込んだ。



1年後



国民の士気は最高潮、兵士の訓練は抜かりなし、魔法使いも軍事運用が可能となった。

王族を追い出したことで資金の余裕も生まれ、軍団には最新鋭の装備がいきわたっている。


「全軍、進め」


最強の男、勇者と仲間たちが作り上げた最強の軍団が城を発った。

目指す先は一つしかない。


「止まれ」


勇者は国境付近で全軍に停止命令を出した。


国境挟んで向こう側にはゴブリン、オーク、スライムにドラゴン。

有象無象の魔物たちが集結しつつあった。



「魔王よ。約束通り作って見せたぞ。勇者の軍団を」


「この日を待ち望んでいたぞ。それでこそ我が終生の好敵手」


「個人戦では三日三晩戦っても決着つかなかったがな」


「あれはさすがに魔王でも眠かったぞ」


「安心しろ、今回は一日、いや一時間で終わらせてやる」


「ぬかせ、下等生物が」



無言の会話をかわす勇者と魔王。

言葉はなくともヤツが何を言っているのかはわかる。

三日三晩の死闘を繰り広げた二人の間には友情にも似た奇妙な絆が生まれていた。


一対一で決着がつかぬのなら、集団でケリをつけるしかない。

世界の半分対半分。

条件は同じ。

あとはお互いの知恵と仁徳、威信をかけるだけ。



天下分け目の戦いが、今、始まる。

元ネタは信長の野望ですけど。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 連載で読みたいです
[良い点] 完読した後、作者様の目論見というか、誘導の見事さに脱帽しています。 テンプレからの始まりで私利私欲を満たすありふれたオチになるかと思いきや、勇者としての義務を放棄していなかったどころか国家…
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