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90話

気を取り直し、カストとの再会を喜ぶ私を他所に、アデルは緊張気味にジェズと向かい合っていた。


「久しぶりだねノエミ。折角だから少し話そうか。」


そう言って、ジェズは普段どおりニコニコしながら、ベット脇のテーブルセットに歩いていく。

ジェズが入ってきた扉を見れば、相変わらず固く閉じられていて、誰も入ってくる気配はない。

どうやって入ってきたんだろうか?

入り口をよく見てみれば、普段は薄ピンク色のアデルの障壁が、今は薄水色に変わっていた。

そんな中で、ジェズはサイドボードからワインとグラスを取り出すと、テーブルに置き、ワインを波々と注いでいる。


マイペースなジェズの姿に、改めて現状を把握してみれば、何処から突っ込で良いのか解からない状態だった。



ジェズはソファーに腰を下ろすと、一つのグラスに口をつけながら対面のソファーを手のひらで指し示す。

アデルはその意を汲み取ると、ジェズから視線を離すこと無く腰掛けた。


「『それで、お前らはこの国を使って何を企んでるんだ?』」


アデルは注がれたワインに目もくれず口火を切った。


「企むって何さ。僕はノエミを助けに来ただけだよ。」


グラスを揺らし、ワインの香りを楽しみながらジェズが答える。


「『それで誤魔化せると思ってんのか?たとえカストが協力しても、こんなに早く俺を追ってこれる筈がない事くらい分かるだろ』」


私とアデルがこの国に来たのは、言ってみれば思いつきだ。

助けに来たと言う限りは、後追いしたと考えるのが普通のことで、ジェズが何処で話を聞いたか知らないが、飛行魔法の使えないジェズやカストが、こんなに早く追いつくなんて出来るはずがない。

それでもココに居るということは、元々この国に滞在していなければ不可能だと言うアデルの理屈は筋が通る。


「そんな事言われてもね…其れなりの情報を集めて、正しく情勢の流れを読めれば、大体のことは先読み出来るん事なんだよね。」


「『成る程先読みか…それで、助けるというのは、誰から誰を助けに来たんだ?まさか、アレだとは言わないよな?』」


アデルは教皇の遺体を、チラリと一瞬見てそう言った。


「ハハハ、そういうことにしておいてくれたら有難いんだけど、これだけ警戒されてたら、何を言っても無駄なんだろうね。でも、ノエミを助けに来たのはホントなんだよ?」


ジェズは愛想笑いを浮かべながらそう言うと、カストに目で合図を送る。

カストは小さくうなずくと、ゆっくりとジェズの中に消えた。


「『ノエミ。直ぐに生き返らせてあげるから…少し怖いけど我慢してね。』」


(は?)


「『大丈夫。僕を信じて眼を閉じていてくれれば直ぐに終わる。やっと君を、魔王の呪縛から解放してあげられる。』」


言い終わると同時に、カストが入ったジェズの身体が光を帯だした。


(まてまてまて、生き返らすとか、怖いとか、そんな不審な単語聞いて信じるもクソもないやろ!)


必死で静止を求めるが、カストは光の中から取り出した巨大な両手剣を構えて、問答無用で斬り掛かってきた。


”チッ” っとアデルは舌打ちしながら、素早く前方に防御壁を展開する。

カストの剣は防御壁で一瞬止まるが、直ぐに ”グニャリ” と防御壁を歪ませて、そして真っ二つに切り裂いてきた。

破られるとは思っていなかったのか、アデルの反応が一瞬遅れ、咄嗟に出した左腕にカストの剣先が届く。


(痛っ…)


左腕に走った、焼けるような軽い痛み。

思い返してみれば、カストの自損を除けば初めて身体に傷を受けたことに成るんじゃないか?

そんな事を私が考えている間に、アデルは素早く右手に火玉を作ると、それをカストに向かって投げつけた。

火玉はカストに当たると、激しい爆発音と共にあたり一面を吹き飛ばしす。

先程とは違う、私の体を使っての魔法の行使だ。教会右翼の建物は、最上階を中心に半分以上が吹き飛んでいた。


粉塵に紛れながら、アデルは飛んでカストと距離を取ると、傷口に手を当てて回復魔法を行使する。

痕跡なく塞がった私の腕を見て、「『なに?!』」 と、何故かアデルが驚愕した。


(何?どうしたん??)


尋ねる私に、『これだ。』 と、短く答えて、器用に左腕だけを私の中から抜け出した。


(あれ?アデルの腕切れたままやん??)


見せられたアデルの腕には、先程斬られた傷が何故かそのまま残されていた。


(アデルもカストも、お互い傷つけることは出来ひんの違ったん?)


『いや。ダメージを受けたと思わされれば、互いの攻撃でダメージを受けることは有る。だから、今の様に不意を突かれれば反射的にダメージに成ることは珍しくないのだが、まぁそれも、治療をすればイメージ通りに回復するのものだ。』


粉塵に紛れて移動したアデルは、同じく粉塵に巻かれたカストを見失っていた。

キョロキョロと、周囲を警戒しながらアデルは続ける。


『だが見てみろ。』


(切れたままやな…)


『そうだ、何をしたのか分からないが、どうやら本当に俺を倒す術を手に入れたらしい…』


(それって…マズイんちゃうん?)


『まぁ、それ程気にするな。腐れ勇者が空を飛べない以上、奴の攻撃が俺に届くことはねぇ。』

  『なんて油断してて良いのかな?』


アデルの言葉を遮るようにカストの声が聞こえた。

それと同時に左膝が熱い。

アデルの視線に釣られてみると、私の左膝から下がくるくると血を吹き出しながら

落下していく。

意味が分からず、声の一つも上げられない私を他所に、アデルはその膝を素早く拾って患部に当てると、そのまま回復魔法で治療した。




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