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85話

「ノエラ、いやノエミ!。何も照れることはない、俺も既に聞き及んでいることだ。確かに最初は驚いたが、寧ろノエミであったら当然だと誇らしい」


どうでもいい私の思いが通じたのか?キャラ修正したディルクが、壇上から私の背中に声を掛ける。


「…なんであんたが誇るねんな…」


私は、誰にも聞こえないような声で呟きながら、ゆっくりと前を向き直した。


「ゴホン。えー先立って、これからノエミ伯に問わせて頂く質問は、何ら我が国がノエミ伯に対して敵意を持つ為の物ではなく、寧ろノエミ伯の力になるために必要な事実確認だと言うことをご理解いただきたい。」


進行役を任された文官は、少し緊張気味にそう言って私の眼をじっと見つめる。


「…はい。分かりました…。」


依然事態は飲み込めないが、私の為だと言う言葉を信じてそう言うしかない。

私の言葉を聞いた文官は、小さく息を吐いて緊張を和らげて、同時に謁見室全体も、どこか空気が和らいだような気がした。


「ゴホン。それではこちらの絵をご覧頂けるでしょうか。」


「絵?」


首をかしげる私の下に、別の文官が一枚の紙を届けてくれた。


「あっ…」


随分前に、クレオさんが私を探すために書いた白黒写真みたいな絵だ。

いや、厳密に言えば少し違う。クレオさんの絵よりも線が少なく影の付け方も甘い。

だけど、どこからどう見てもそれは私の顔を描いたものだ。


「えと…これが?」


だからといって、それがどうした? としか言えない。


「実はこの絵は、ノヴァリャ聖国の兵士が持ていた物なのです。」


「……ッ」


ノヴァリャ聖国の名を聞いて、私の中の心当たりが頭の中を一気に駆け巡って、身体が硬直した。

明らかに私がここに居るからだ…。

そんな私を他所に、文官はこれまでの経緯を並べていく。


事の起こりは、私が郊外実習に赴いていた頃。

国境警備する者たちと、例に見ないほどの大規模な盗賊集団との衝突があった。

連絡を受けた各都市は、後詰めに向かうべく準備を整えていたが、その盗賊団は規模の割には脆弱で、国境警備の兵だけで追い払う事が出来た。

脆弱と言ってもその数は2000近かったという事で、ローモス連邦はその背後関係を探るための行動を起こすが、その調査の段階で、今度はノヴァリャ聖国が進軍して来るのを発見した。

比較的早い段階で発見できた上、盗賊団に対処するべく軍備が整えられて居たこともあり、ノヴァリャ聖国の進軍による被害は最小限に抑えられている。

とは言え、大国であるノヴァリャ聖国は4万近い兵力で進軍しており、かたや、近隣国家の中でも最も小さいローモス連邦は1万を辛うじて超える数の兵力しかない。万全の体制で迎え撃てたと言っても、幾つかの街や村は守りきれずに数千の被害が出ていた。

ノヴァリャ聖国の進軍には常に殺戮がついて回る為、被害数はそのまま死者数に成る。

山岳地帯が主なローモス連邦では、進軍ルートが限られているため、現在は対峙した状態で膠着している。

レグレンツィ王国への応援要請は既に出しているので、受理され次第、共闘してこれを排除する予定。

この似顔絵は、進軍してきたノヴァリャ聖国兵が所持していた。



「ごめんなさい……完全に私のせいですね…」


私を目的とした進軍で、ローモス連邦の民間人に数千の被害が出てしまった。

心がポキポキと砕けていく、取り返しのつかない責任が重くのしかかり、膝をついて頭を下げた。


「違うぞノエミ!!」


そんな私に対して、ディルクが突然大声を上げる。

そのままズカズカと私の元までやって来ると、私の両肩を掴んで、無理やり立たせてこう言った。


「確かにお前は当事者だ。だから分かる限りの詳細をお前に話した。だがそれはお前に責を押し付けるためではない!!!いいか? 我が国は、過去何人ものお前のような事情の有る者を受け入れてきた。それはなぜか? それは国防に絶対の自信が有るからだ。この場にお前を呼んだのは、お前に謝罪させるためじゃない。お前がこの国に居ると情報を漏らした我々が謝罪するために呼んだのだ!」


目を反らせたい私の視界に、ディルクは無理やり入り込んでくる。真っ直ぐに向けられた視線が、ことさら私に痛みを与える。


「情報は漏れてないよ…私の似顔絵を持ってたって事は確証があったわけちゃうんや……この国の人は悪くないよ…」


「だとしてもだ!!だとしても、お前が何処に居ようとノヴァリャ聖国は攻めてきた!!これは何れ確実に起こってた事なんだ、お前に責任があるはずないだろ!!」

                                「ディルク!!!」


捲し立てるように、必死で私を庇おうとしてくれているディルクに向かって、王様は強い言葉で静止をかけた。

ディルクの言葉が、改めて私の胸に深く深く突き刺さる。


「…正解や。つまりはそういうことやねん。」


「????」


ディルクは何故王様に止められたのか、何故私が、ディルクの言葉に正解と言いながら沈んだ顔をしているのか、サッパリ解からないという顔をしている。

うかつだなぁ…とは思うけど、そんな真っ直ぐなところがディルクの魅力なんだろう。

ディルクの必死さも、心底私は悪くないと思ってくれてる事も痛いほど伝わってくる。

だから、別に決定的な言葉を言われたとしても、私がそれで恨んだり、やぐされたりすることもない。

そもそもそんな物は、言われるまでもなく、最初の段階で結論付いていた事だ。


「あはは、分からへん? 今、言うてくれたやん答え。私が何処に居ても起こったってことは、私が居る限り…」

       「違う!!違うぞノエラ!!!そういう意味で言ったんじゃない!!!!!」


漸く事の意味を理解したディルクは、顔を真っ青にしながら力強く私を抱きしめた。


「ありがとう…ゴメンなディルク。」


私はそう言いながら、ディルクの回された手を掴み、ゆっくりと力を込めて引き剥がしていく。普通よりチョット優れたノエラさんは終了だ。ノエミに戻った以上は、出し惜しみせず力を出しても問題ない。

物理的に抗えない力に引き離さたディルクは、顔を真っ青にして驚いている。

化物とでも思われているんだろうな………。


『顔はさっきから青かっただろ。』


やけに静かだったアデルが、ここに来ていきなり突っ込みを入れてきた…。


「『ノエミ。お前のことだからこのまま消えてしまおうとか考えてんだろ?』」


(って、アデルなんで今?! それ私の声出てるから!!!)


「え?ノエミ?!」


突然出しゃばって来たアデルとその言葉に、私もディルクも大混乱だ。


(ちょ、言いたいことは聞くから、そこから出て行け!!………ってあれ?)


「『カハハハハ、何時までもお前の好きにさせる俺様だと思うなよ』」


何時ものようにアデルを弾き出そうとしているのに、今日に限ってはじき出せない。


(何したんあんた!!アホ、これは反則やろ!!!)


「『反則だ?そんなルール決めた覚えはねぇぞ??魔力の調整を極めれば、お前の中に杭を打ち込むことくらい出来るんだよ。まぁ、一時だけどな。』」


(一時でもアカン! はよでてけ(・・・)!!!見て見い周り、めちゃめちゃポカンとしてるやろ!!!!)


「『知るかそんなもん。俺にすれば、ここのままリオの時みたいに引きこもられる方が迷惑なんだよ!!よく聞けノエミ。誰がなんと言おうとこの国の人間が死んだのはお前のせいだ。』」


(なんやそれ、言われんでも分かってるわ!)


「『ノヴァ何とかに眼を付けられたままこの国に来たのがそもそもの失敗だ』」


(ノヴァリャ聖国ね。だからそれも同じことやろ。)


「『お前が消えてノヴァは諦めるのか?』」


(やめて、略したら意味変わるから…やなくて、諦めへんやろうから、死んだって噂は流すに決まってるやん。)


「『死体もねぇのに、それで諦める奴らなのか?』」


(そんなん知らんわ)


「『それでまた、別の国が攻められても知らんでいいのか?』」


(じゃぁ、どしたらいいんさ!)


「『そもそもなんでお前が眼を付けられた?』」


(忘れたんか?勇者がどうしたとかって言いがかり付けられたんやんか……あっ…)


『お前こそちゃんと思い出したか?』


「ノヴァリャ聖国に対しては私なんも悪ないやん…」


『そうだぞ?それなのになんでお前が逃げなきゃならねぇんだ?』


「ほんまや、なんで逃げ回らなあかんねんな…(ってか、またいつの間に出てんな!)」


『カハハ、さっきな。……それで?』


(それで?)


『行くんだろ?』


(そやな、行かなムカつくな)


『だったら言うことが有るだろ?』


(うわ、それもまたムカつくな…)


『どっちのほうが?』


(………ギリ、ノヴァリャ聖国やな…)


『カハハハハ!ひでぇなギリかよ!!!』


アデルの爆笑と同時に、私の心が立ち上がる。


「ごめんディルク!それと王様と、この国の皆さん。私のせいで亡くなった人達には、後で一生かけて償っていきます。せやけど、チョットやらなあかんことが出来てしまったので、勝手言いますけど、今直ぐは勘弁してください。」


相変わらずポカンとしている皆に、頭を下げてから、出口に向かって振り返る。


「ノ、ノエラ、ミ…何処へ組んだ?!」


目の前で、いち早くその動きに気がついたディルクが、また名前を間違いかけながら口を開いた。まぁ、ノエラで呼びなれてるだろうから仕方がない。


「あはは、ノエラミて……何処へか…何処っていうのはハッキリ決まってないけど、とりあえずチョット、ノヴァリャ聖国滅ぼしてくる。」


出口に向かって歩きながら、背を向けたままディルクに答えた。

亡くなった人達への謝罪の仕方はまたあとで考える。一応敵討ちには成るはずだから、寄り道することを許してもらいたい。


「…あ、あぁ、そうか、気をつけてな………え?滅ぼす?!」


反応の遅れたディルクの声が、少し遠くで裏返っていた。


「アデル、宜しく!」


「『あぁ、任せとけ。』」



ブクマ及び評価有難うございます。

まだまだ手探りで書き進めていますので、忌憚のないご意見ご感想、お寄せいただければ幸いです。

稚拙な文章で読みにくいとは思いますが、生暖かく見守って頂けますようお願いします。


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