84話
支部長の言葉に、ギャフンとも言えずに言葉を失った。
私の中では必殺だったはずの言葉があっさりと覆されて、頭の中が真っ白になってしまう。
いや違う、本当のところは一つ手が残ってる。
冒険者として登録してるのはノエミであってノエラじゃない。つまり、冒険者みたいな事はしてましたけど登録はしてないんです って、言えば良いだけなのだ。
だけどそれをした場合、大きな問題が一つあった。
私が知る言葉で言うのなら、詐欺?公文書偽造?
領地でも、法律関連は完全に丸投げしてたので、その言葉が今の私に当てはまるのか、そもそもそんな法律がこの世界に存在しているのかすら判らない。
ノエラが冒険者をしていたという設定は、レグレンツィからの書類にも記載してあるはずで、それを嘘だと言ってしまったら、後でどれだけの問題になるかも想像できなかった。
そんなリスクを犯すなら と、渋渋渋渋協力することを了承した。
「私の一存で授業を休むなんてできません!」
そんな方向に持って行けばよかったなと気が付いたのは、討伐に向かう馬車の中でのことだった。
今回の討伐メンバーは、第二騎士団から団長を含む5人と従者が3人、ギルドから索敵能力の優れた2名を借り受け、最後にまた、教導隊長の姿もあった。
頭数の上では私を含む12名となってるが、従者は後方要員なので洞窟には入らず、冒険者の二人は、基本的に自衛以外の戦闘はしない契約で来ているらしく、実質的な戦闘要員は半分だった。もちろん私も数に含まない。
通常ならば少なくとも10人から20人規模の実働部隊が編成されるはずなのだけど、どうしても人員を増やせない事情がある今回は、例外的に私に召集がかかったのと同様、教導隊長にも招集がかけられたらしい。
教導隊長からは、敵意を感じるわけではないのだけども、決して好意的でない視線をずっと向けられていて、居心地が悪くて仕方がない…。
「はぁ……やっと終わった…。」
大きなため息と共に力が抜ける。
終始乗り気がしない中でも、何とかストーンリザードの駆除が終わった。
アデルが暴走することもあまりなく、全体を通してみれば、至極順調に終える事が出来た……2ヶ月かけて……。
出発前は、1週間位で帰れるだろうと踏んでいた。だって実習がそれくらいの日程だったから…
だけど、始めてみれば洞窟の入り口は10個有り、ちょっとした迷路に成っている1つ1つのルートは、全ての道を通っても3日で往復出来る広さに成っている。
だから実習でも3日だったのか…なんて気がついた時には、今更すぎる話だった。
(外国からの留学生を2ヶ月も授業以外で拘束するとか有りえへんやろ!!)
なんて、アデルに愚痴り続けていたおかけで、ある意味暴走を抑えられていたのかも知れない。
馬車に揺られて学校まで戻ってくると、この国の王様が私を呼んでいると連絡を受けた。
今すぐ来てほしいと急かす伝令の人に、汗くらい流させてくれと懇願し、最低限身体を洗って寮を出る。
豪華な馬車に詰め込まれ、王様直々に労って貰えるんやろか? なんて、考えている間にそのまま謁見室に案内された。
「盟主様ご入室の際の平伏は不要であると言付かっております。どうかご起立されたままでお待ちください。」
入室前にそんな言葉を聞かされる。
首をひねりながらもその言葉に従って、王様がやってくるのを待つ事にした。
歩きながら謁見室を見回すと、数人の文官を除けば、残りは綺羅びやかな鎧をまとった騎士達が整然と並んでる。
こうしてみると、物々しい筈の騎士達も、装飾品の役割を果たしてるんだなと気がついた。
待つこと数分、目だけでキョロキョロと周囲を物色していると、王様の入場が宣言された。
考えてみればこの国の王様に会うのは初めてだ。
どんな人かとドキドキしながら待っていると、この前顔を合わせたギルドの支部長に負けないくらい、ガラの悪い中年男性が、頭に王冠を乗せて登場した。
若干引き気味に見ていると、王様の後に続いてディルクが出てくる。
疑ってたわけじゃないんだけども、本当に王子様だったんだと感心してしまった。
ディルクは横目で私を見ると、手の平だけ返して手を振ってくる。
(うわっアホやあいつ…)
そんな感じで更にドン引いて無視していたら、
今にも泣き出しそうな顔をするので、仕方なく小さく手を振り返しておいた。
公私でキャラが変わる人が居るとは聞くが、ディルクの場合、少なくとも逆にすることをお薦めしたい…。
「ノエラ殿。先ずは急な呼び出しに応じてくれた事、並びに本国の治安業務に協力頂けたこと感謝する。」
王様は玉座に座ると、先ずは労いの言葉を下さった。
「いえ。留学の許しを頂いてから、この国の方々には大変良くして頂いております。この程度の事ですが、恩返しも兼ねまして、お役に立てたのでしたら幸いだと考えております。」
アデルに二枚舌だと笑われるかも知れないが、一応この言葉にも嘘はない。
「ふむ。そなたの寛裕な心に改めて感謝しよう。」
強面顔が満足気に顔を綻ばす様を見て、一先ず言葉選びには正解したと安心した。
王様は顔を整え直すと、脇に控える文官に目で合図する。
「ゴホン。それではこれよりは、ノエミ・ザイラ伯にお尋ねしたいと思います。」
「え????」
てっきりご褒美でもくれるのかと思ってたところに、突然出てきた私の本名。
ディルクも居るのにどういう事かと意味がわからず、とっさに背を向けて聞こえないふりをした。
我ながらこの行動も意味がわからない…。
ブクマ及び評価有難うございます。 まだまだ手探りで書き進めていますので、忌憚のないご意見ご感想、お寄せいただければ幸いです。 稚拙な文章で読みにくいとは思いますが、生暖かく見守って頂けますようお願いします。




