83話 ベネデットの勝算
俺の名はベネデット・ブロット。
レグレンツィ王国の正当なる継承者だ。
何十万もの民の期待を一身に受け、王座奪還に乗り出した俺だったが、卑劣な罠にかかり、あと一歩の所で捕らえられてしまった。
何百万もの民に後押しされて立ち上がった俺の姿を見れば、少しは父の目も覚めるだろうと期待していたのだが、邪悪なカーラが禁呪を用いて行った父の洗脳を解くには至らなかった。
俺は、王国全土の民の協力で、不幸にもカーラに洗脳された将兵達の拘束から逃げ出すことが出来た。そしてノヴァリャ聖国に求められ、そこで力を蓄えることにした。
ノヴァリャ聖国といえば、独自の宗教教義を掲げていることで有名だ。
ノヴァリャ神の事は、俺が今まで信仰してきた教義に照らし合わせて、あまねく神々の中の一柱に過ぎないと考えていたが、それは恥ずべき思い違いであった事をこの国に来て思い知らされた。
ノヴァリャ神こそが、有象無象にひしめく神々を収める唯一無二の存在で至高であった。
ノヴァリャ神の教えの前には、俺が今まで崇めてきた教義など、幼児が綴る日記ほどの価値もなかった。
俺が今、何の戸惑いもなく世界中の人々に即位することを望まれていると断言できるのは、ノヴァリャ神の至高の教えに触れることができたからだ。
至高の神は、迷いや悩みや後悔といった、人が生きる上で足枷となる感情を、全て昇華してくれたのだ。
至高の神は、俺がレグレンツィを治めることをお認め下さったばかりか、さらなる魂の研鑽を積むチャンスを、試練という形でお与えくださった。
愛深き至高の神から、2000もの神の子をお借りすることが出来、俺は与えられた試練に挑む。
神の子等は、武器や鎧、戦闘技術すらも持ち合わせていなかったが、そんな事は、至高の神に認められた俺にとっては些事に過ぎない。
例え路傍の石ころしか手に出来なかったとしても、この神の軍団を遮る者は尽く倒れるだろう。
俺は神託に沿い、2000の神の子と共に、ロモース連邦に進軍する。
国境近辺の集落を襲い、ロモース連邦軍をおびき寄せよと、至高の神がご指示なされたからだ。
ロモース連邦は、愚かにも俺を阻むために軍を送り込んでくるだろう。2万や3万程度の軍勢ならば、簡単に蹴散らすことが出来るが、至高の神は敢えてそうせず、ロモース連邦の軍を時間をかけて引きつける事を望まれた。
何故その様な事をするかと言うと、その揺動を契機として、ノヴァリャ聖国の神軍がロモース連邦に進行する。
卑俗なカーラの洗脳はローモス連邦にまで及んでいるため、聖国の総力を上げてその眼を覚まさせるのだ。
勿論狙いはローモス連邦だけではない。至高の神の神算には、レグレンツィ王国をも同時に救う意図が含まれている。
俺の揺動によって混乱したローモス連邦軍は、ノヴァリャ聖国の神軍の前に為す術もなく敗北する。そうなればロモース連邦は、同盟国であるレグレンツィ王国に救援要請を送り、要請を受けたレグレンツィは、ノヴァリャ聖国に対抗すべく全勢力を持ってロモース連邦に派兵する。
そのタイミングを持って、俺はレグレンツィに人知れず入り込むと、醜悪なカーラの手勢を一気に制圧する事が可能になるのだ。
下賤な者は、これを余計な手間と考えるだろう。
しかし、王都の中は賎劣なカーラの手勢で埋め尽くされており、洗脳された父が激しく抵抗するのは目に見えている。そのため王都の兵力を少しでもそいでおく必要があるのだ。
慈悲深き至高の神は、どれほど愚かな異教の民の血であっても、多く流すことは望まれない。
愚かな国家に追従するしかない哀れな民の血が少々流れてしまうが、それは、俺がレグレンツィの王となり、恒久的な世界平和実現するための礎であるならば、喜んで血を流してくれる。
至高の神も、そんな民達の魂を、俗世では味わえない幸福の地に導かれることだろう。
「神の子らよ、間もなく国境を超える。流れる血を減らすためには、少しでも早くローモス連邦軍をおびき出さなくてはならない。国境警備に遭遇することが考えられるが、これには最小限の対処で当たって欲しい。兵士も一般の民も流す血が同じであるならば、よりローモス連邦の怒りを誘うことが出来る、民の血を流す方が良いからだ。一つの命を粗末に扱うな、一人一人を惨たらしく、より残虐に蹂躙して流れる血を抑えるのだ!」
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稚拙な文章で読みにくいとは思いますが、生暖かく見守って頂けますようお願いします。




