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82話

洞窟を抜け出して、ようやく日の当たる場所に戻れた。なんだかとても久しぶりな気がする。

日の当たると言っても、日はすっかり傾いていて、森の向こう側で空を夕焼けに染めていた。


私がクラスの皆に囲まれている頃、気を失っていた騎士は目を覚まし、本人の意識が低迷している間に、サイクロス討伐の偉業は全て彼のものになっていた。

「あぁ?」と聞き返した言葉が「あぁ。」と肯定に受け取られ、気が付いた時には既に、何を言っても謙遜しているようにしか見られていない状況だ。

普段からよほど信頼されてるんだろう。私としては非常にありがたい。



こんな感じで、この年の郊外実習は途中終了した。

サイクロスの事は解決したが、そもそもストーンリザードが発見されたために中止の判断が下されていた訳で、後日行われるであろう掃討作戦の跡、仕切りなおすかどうかはまだわからないということだった。


誰が言い出したのか、実習が完全に中止になった場合、帰り道での行動が評価に大きく影響する、なんて噂がまことしやかに囁かれ、ピリピリとした空気の中、学校までの帰路時に着いた。



家に帰り着くまでが遠足です。なんて言葉を地で行くように、最後まで気の抜けない旅を終えて、漸く学校まで戻り着く。

そんな私とは対象的に、やりきったと、言わんばかりに生き生きしてるクラスメイトを見て、いかに自分が場違いなクラスにいるかを痛感させられた。

アデカスのお蔭でこのクラスに留まれている私にとっては、そんな彼らが眩しく見える。


実習の疲れを癒やすために設けられた2日間の休養を、ダラダラと過ごした後の登校日、教室に着くと早々校長室に呼び出された。


コンコン

「ノエラです、入ります…………ウゲ…。」


校長室に足を踏み入れると、中には3人の男性が立っていた。

2人は初めて見る顔だけど、一人は隊長と呼ばれていた騎士で、思わず心の声が零れ出てしまう。

どこがどう悪いという訳でも無いのだけれど、なんとなく敵視されているような気がして、どうにも苦手意識が先立つ相手だった。


「初めましてノエラさん。私はローモス連邦第二騎士団団長を務めております ジャンルカ・オノフリオ・ゴッツィと申します。こちらは当王国冒険者ギルドの支部長を勤められているセヴェリアーノ・ボンディ殿、最後に、ご存知でしょうがローモス連邦騎士団教導隊長のデニス・ローデヴェイク・ハーンストラです。」


そう言って切り出したジャンルカさんは、明るい茶色い髪を9対1で横分けにした短髪の細身の男性。威厳を示すはずの騎士甲冑が、とってつけたようにしか見えず、いち早く甲冑を脱がせてあげて事務机に座らせてあげたい。

その横に立つ支部長は支部長で、何と言うか、人の味を覚えたヒグマみたいなおっさんだ。支部長なんて肩書きよりも、暗黒街最強最悪の男みたいな二つ名の方がよく似合う。

そんな突っ込みどころ満載の二人を前に、マテラ人の血がワシャワシャと騒ぎ立てるが、デニスさんの鋭い視線がそんな空気を与えてくれなかった。


「は、はぁ…初めましてノエラです…。」


だからどうした という思いを込めて、戸惑いを隠さず挨拶を返す。

と言っても本気で戸惑ってるわけじゃない。

この国の騎士団は、大きく分けて三つの部隊で出来ていると聞いた。

第1騎士団は、国外向けの、所謂国の武力で。

第2騎士団は、国内向けの治安活動を行う部隊。

そして教導隊が独立した組織として置かれているそうだ。


第2騎士団の治安活動には、国内の魔物の討伐も含まれているわけで、私に法を犯した記憶がない以上、心当たりはストーンリザードの討伐に駆り出される事くらいしか思い浮かばない。


「早速で申し訳ありませんが、ノエラさんの力はデニスから聞いております。どうかストーンリザードの駆除にお力をお貸し願えませんでしょうか?本来ならば我々だけで対処すべき事なのですが、諸事情によりそちらに人手を割く余裕がなく、かと言って放置して個体数が増えれば手が出せなくなってしまうのです。」


ジャンルカさんは背筋を伸ばしてそう言うと、私に向かって深く深く頭を下げた。


やっぱりそうきたか…

なんてことを考えながら、用意してきた断り文句を頭の中で整理する。

一時とは言え、せっかく手にした平穏な日々だ。せめてこの国にいる間くらいは、周りに騒がれず穏やかに暮らしたい。


「協力したいのは山々ですが、何分レグレンツィ王国から勉強の機会を与えて頂いている身の上です。王国の許可なく勝手な行動は致しかねますので、どうかご容赦ください。」


極めて申し訳なさそうに、そう言って負けじと頭を下げた。

私の立場は、なんと言っても他国の王家の肝いりの留学生だ。その部分を強調しておけば、レグレンツィ王国を飛び越えて軍事行動に従事させるなんて出来ないだろう。


「その点に関しては問題ありません。」


頭を下げている私に向かって、ギルド支部長のセヴェリアーノさんがそんな事を言う。


「え?」


「君は冒険者の資格を持っていると聞いた。少々強引な手では有るが、騎士団からの依頼として、冒険者の君に依頼を持ちかけることが可能だ。そうすればレグレンツィ王国から何を言われても、我々が矢面に立って君を守る事が可能になる。先程協力したいのは山々だと言ってくれた言葉に偽りがないのならば、どうか引き受けて貰えないだろうか。」


「ッ………」


ブクマ及び評価有難うございます。

まだまだ手探りで書き進めていますので、忌憚のないご意見ご感想、お寄せいただければ幸いです。

稚拙な文章で読みにくいとは思いますが、生暖かく見守って頂けますようお願いします。


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