75話 二人の騎士の食い違い
自分はエフモント・ベルンハルト・ヘルハルト・ストクフィス です。
ノエラ君ごめんなさい。
自分の思い違いを口にしていない以上、このお詫びの言葉も口にはできませんが、外見だけにとらわれて、情婦みたいなものだと少しでも考えてしまった自分が恥ずかしい限りです。
ストーンリザードですら見抜く索敵能力と、あの、目にも留まらない投擲技術…恐らく、我が騎士団の諜報部隊長をも、凌駕する実力ではないでしょうか。
知識や感覚とっいった領分なら兎も角ですが、身体技能に一点特化と言うものはありません。あれほどの速さで動けるならば、それを可能にする筋力があり、その速さの物を見るだけの目が付いてきます。
訓練さえ積めば、瞬く間に諜報部隊長を抜ける実力があると示したようなものでした。
思い返してみれば、普段の授業の時、力を抑えているのでは?なんて思わされる場面が幾度かありました。実力を隠す意味がわからなかったので気のせいだとしていましたが…
この実力を考え見ると、基礎のなってない、荒いだけに見えていたノエラ君の剣術も、実戦的で合理的な剣術に成りうることに気がつきます。
一度は断られましたが、やはり亡命でも何でもして是非我が騎士団に入ってくれないでしょうか?
多くの者が触発され、騎士団全体を底上げする力となってくれる事に違いありません。
ディルク様は求婚されるつもりの様でしたが、流石にお妃様を騎士団に誘うわけにはいきません。
何か良い案はないかと考えてみるつもりです。
※※※※※
自分はデニス・ローデヴェイク・ハーンストラ。
何も知らない若い騎士が、無邪気にノエラ君を騎士団に引っ張り込もうと画策しているのを横目に、最近耳にした噂話が思い出します。
レグレンツィ王国に勇者が現れたと、そしてまた別の噂では魔王が現れたと…。
(もしかして彼女がそうなんだろうか?)
小さく沸いたそんな疑念は時間の経過とともに育ちます。
勇者という存在は、産出国以外にとってはあまり有り難いものでは足りません。
勇者は祖国のために魔王を倒し、祖国のためにその力を奮います。
過去の歴史に習ってみれば、仮にレグレンツィ王国の国益に叶うのならば、同盟国である我が国に勇者が侵攻してくる可能性はあり得るのです。
成る程、何故連盟主が慣例を崩してまで自分に護衛を託したか、漸く理解することが出来ました。
理解できましたが…彼女に護衛が必要なんでしょうか……。いや…きっと、彼女の機嫌を損ねないよう、自分が常に矢面に立てと、そういうことなのでしょう。
勇者といえども同じ人間である以上、自分がたどり着いた領域と、それほど差があるとは思ってはいなかったのですが…とんだ自惚れでありました。
※※※※
「ノエラ君。現役の騎士が四人も居て、満足に休憩も与えられずに本当に申し訳ない…」
騎士という立場上、余り頭を下げるのは良くないとされていますが、自分達の力不足を差し置いて、感謝も出来ないと思われてはたまりません。
平民出だと言う彼女にしてみれば、そんな騎士のプライドなんて知るはずもなく。少しでも親しみをもってもらえるなら、自分のプライドなんかは安いものです。
少数精鋭を地で行く我が騎士団にとって、何としても彼女を手にいれたく、親身になって彼女を気遣います。
隊長に怒られるかとも思いましたが、そんな自分の想いを汲んで、無言で見守ってくれているようでした。
『止まれ!』
ノエラ君が、突如声を上げて 皆を静止させました。
普段とは打って変わったぶっきらぼうな言葉遣いですが、実践の場においてはいかに端的に意思を伝えるかが重要です。
冒険者をしていたというだけのことはあり、流石に実践をよく理解していると、感心させられます。
※※※※
少女が突然止まれと叫びました。
ストーンリザードが出たかと警戒しました、どうやらそうではないらしく、この洞窟と間接的に繋がる場所に大型の魔物の気配があると言います。
格下の者に話すかのような不遜な言葉遣い。
実践の場で丁寧な言葉遣いなど不要とはいえ、普段と比べるとまるで人格ごと入れ替わったかのようなその豹変ぶりに、本音の部分が見え透いてきます。
「『大型と言っても精々オーク程度だろう。後々見失う可能性を考えれば、取り巻きの気配の無い今討伐しておいた方が良いんじゃないのか?』」
判断はこちらに任せるといった口ぶりですが、本心を知ってしまった以上煽り文句にしか聞こえません。
オークと言いながらオーガやトロールでも出てくるんでしょうか?この四人のメンツでは、どちらが出てきても運の転び方次第では全滅しかねない相手です。
そうして慌てふためく自分たちを見て、笑うつもりでしょうか?
それぐらいやりかねない相手だと、見抜けないほど無駄に年を重ねているわけではありません。
見え透いた挑発に乗るほど職務を軽んじてるつもりはありませんが、ここで自分が舐められるということは、我が騎士団全体が舐められることであり、それは国家の存続につながります。
個の力では敗北を認めても、騎士団全体が舐められるような選択をするわけにはいきませんでした。
ブクマ及び評価有難うございます。
まだまだ手探りで書き進めていますので、忌憚のないご意見ご感想、お寄せいただければ幸いです。
稚拙な文章で読みにくいとは思いますが、生暖かく見守って頂けますようお願いします。




