71話
皆に過剰な緊張による気疲れを除き、何事もなく出入り口にたどり着き外に出た。
ストーンリザードの事や今後の事を相談するのだろう、騎士団員たちは直ぐに教師のもとに駆け寄っていった。
騎士団員と教師は互いに口を開く度、交互に渋い顔をしていて話が長引きそうな気配を見せる。
私達はその間、アニカがいつの間にか教師のテントから拝借してきた、お茶とクッキーを並べて歓談する。
「うん…これはなかなか…モグモグモグ。」
「モグモグモグ…良い物食べてるやん…モグモグモグ」
「茶葉もなかなか高級…」
「我々が中に居る間こんな贅沢してたとは…考えものですね」
シルケと私、アニカとエトは何だかんだ言いながら、次々と教師たちの楽しみを平らげていく。
ディルクは一人、静かにお茶を飲みながら教師と騎士団のやり取りをジッと見つめていた。
「…………………………」
私達が無駄話に花を咲かせている途中、教師たちの方から、ふと 私の名が聞こえた気がした。
だからかどうかは知らないが、同時にディルクが立ち上がり、教師達の下に歩いていくと、直ぐに何やら言い争いを始めている。
残された私達は誰が言い出すでもなく、会話を止めて耳を澄ませる。
かと言ってそれで内容が聞こえるような距離ではないので、各々静かにお茶を飲みながら、溢れた単語を拾い会話の流れを想像して楽しんだ。
「馬鹿なことを言うな!ノエラは近い将来お前達が仕える存在に成るのだぞ!そのノエラに同行を乞うならば僕も同行するのが当然だろう!!」
”ブーーーーーーーー”
私の口から盛大にお茶が吹き出していった。
対面に座っていたエトは軽やかにそれを躱す。
「ゴホッゴホッ…ナイス、エト…」
私は、咽返りながら親指を立ててエトを讃えた。
「有難うございます、でもその前に先ずお詫びが欲しかったですね。」
「かかってへんねんから謝らんでも良いやんか。全てはあんたの類まれない反射神経様々や」
口元を拭いなら、そう言って最高の笑顔をエトに送った。
「あははははははは…」
それを見ていたシルケは壊れたように笑ってる。
その声に驚いた教員たちの話が止まり、私はディルクに突っ込むタイミングを失った。
「…ノエラさん。」
先生の手招きで呼び出され、ディルクの横に並んで輪に混じる。
要するに、未だ別ルートで洞窟内にいる、他の班を呼びに行くためのパーティーに、ディルクを連れて行く行かないで揉めていた。
索敵能力に期待して騎士団員達は私の同行を求めるが、私が行くなら自分も行くとディルクは一歩も引かない。
「あのぉ…私が参加するのは確定なんですか?」
まだ頼まれてもいないのに、確定してる見たいな話の流れに、オズオズと手を挙げて聞いておく。
「いぇ、あくまで手を貸して頂くことが理想なだけで、無理にとは言いません。授業とも関係ありませんし…」
明らかにショボクレた言葉の響きに、謂れのない良心が苛責した。
「まあ…私の手に余ることじゃなければお手伝いさせていただきますけど…精度とかはあんまり期待しないでくださいよ?」
「そんなに気負って頂くことはありません。私たちもあくまで保険としてご同行いただけたらと思ってるだけですので…」
そんな遠慮がちに言ってるが、私が行かなかった場合、相当危険度が高まると考えて居るんだろう。
言葉の端々に気遣いが見れるようになった事から、私がレグレンツィ王家からの肝いりで来てることは既に教員達から伝わっているんだろうと考えて、私の身に何か有れば、国際問題にも発展しかねないと普通なら考えるところで同行を求めているんだ。
相当の覚悟が伝わってきて、流石に無下に知ることはできそうにない。
「だから、保険が必要なら人手はあったほうが良いのだろう?僕がノエラを守ることに専念すればお前達の負担も減るのでは無いのか?」
ディルクの方は、口調こそ穏やかになったが尚も引かない様子。
見当違いの解釈を突きつけられて、騎士団員も言葉に詰まってる。
「…ディルク…あんなぁ…護衛対象が二人になった時の騎士団の人等の負担考えてるか?」
兎にも角にも、私が参加しようがしまいがディルクの参加は論外だ。
授業中の想定外の事故なら仕方がないが、危険種が居ると分かりながらディルクの身に何か有れば、この二人の騎士の首が飛ぶ程度じゃ済まなくなるかもしれない。
騎士団員が言い出せないであろう言葉を、代わって代弁した。
「ひどいぞノエラ。僕が負担に成るほどの実力だとでも言うのか?これでも自分の身は自分で守れる程度の鍛錬は積んできたつもりなんだが。」
負担と言われてカチンと来たのか、ディルクは少しムッとしながらそんな事を言った。
「……。」
ディルクの護衛のエトに、チラリと目線で言葉を送る。
(こんなん言うてるで、ほっといて良いんか?)
エトはフルフルと小さく首を振って目線をそらした。
(僕からは何も言えません。)
そんなところだろう。
「ハァ…それは立場ある人間が言って良い言葉ちゃうからな?エトや騎士団はあんたら王族を守るために生命張るのが仕事で、あんたら王族の仕事は騎士団の力が及ばへんかった時に命張って国民守ることちゃうん?こんな程度の事で自分の身は自分で守るとか言うのは、それら全ての人に失礼な話なんちゃうか?」
聡明なディルクには、本来言われる迄もない事だとは思うけど、どうにも視野が狭くなってしまってる様なので正論をぶつけて目を覚ましてもらう。
「この程度って…ノエラ…君は学友の身の危険をこの程度っていうのか?!」
だけど、そんな目論見はすっかり外れ、思いもしなかった部分に引っかかってきた。
「そこ食いつくか…んじゃぁ言うけど、この程度やで?ええか?
もし戦争に負けかけたとして、何万もの国民の生命と引き換え位できる生命の価値を持っ てるのは、ここではアンタら王族だけや。私やシルケみたいな外国の一般人からしたら、 アンタの生命にそんな価値見いだせへんけどな?アンタも同じこと言うてたらあかんのは 今更言うことちゃうやろ?」
「グッ……」
ディルクは唇を噛み締め下を向いた。
自分で言うのものなんだけど…これがもし、私に惚れたゆえの盲目なんだとしたら…恋愛っていうのも考えものだ…。
パチパチパチと、少し離れたところから小さい拍手の音が聞こえる。
「エト…君とは後でゆっくり話し合おう。」
「えっ?!あっ。やだなぁ……あはははは…」
エトの拍手は無意識のうちに出ていたらしく、今更ながらに体をはたくフリをしてごまかしている。
すがるようなエトの視線に気がつかないわけではないが、さっきの仕返しとばかりに、視線を外して騎士団員たちと打ち合わせを始めた。
ブクマ有難うございます。
まだまだ手探りで書き進めていますので、忌憚のないご意見ご感想、お寄せいただければ幸いです。
稚拙な文章で読みにくいとは思いますが、生暖かく見守って頂けますようお願いします。




