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64話

結局ジェズは、私の顔をみて散々笑っただけで帰っていった。した事と言えば誇張なく、私に 「兄ちゃうやん」 とつっこませただけだ。

聞けば、近くに寄るついでがあったと言うが、あの悪戯だけのために時間を割いたジェズの思考が理解できない。

思い返せば以前も一度騙されている。

陛下の命令だと見合い写真を持ってきて、200名近い騎士団の護衛がついた豪華な馬車で迎えに来たのだ。

少し待っててとジェズを応接室に押し込めて、転移陣で陛下に怒鳴り込んだ私に、陛下は何の話だと首をかしげる…

そこでジェズの悪戯だったと判明したので、陛下は同情気味に許してくださったが、後であの態度は何だと、国の重鎮方にたっぷり嫌味を言われてしまったなんて事があった。




「ノエラ様。始業の時間が迫っております、ご準備ください。」


ノックと共に部屋の外からそんな声がかけられる。

私が充てがわれた部屋はそれなりの身分のある方たちが使う一角で、専属とまでは行かないが、二部屋に一人くらいの割合で世話役が置かれている。今声をかけて来たのもそんな一人で、毎朝起こしに来てくれるらしい。

因みに私は平民としてこの学校に来ている。元の世界風に言えば、政府の留学支援制度で来たような扱いだ。勿論ローモス連邦の上層部には話が通っているが、この学校内においては校長ですら私の持つ爵位などは聞かされていない。

ノヴァリャ聖国の目を逸らすため、目立たないようにと配慮された結果だけど、それでもこんな部屋が充てがわれているのは、国からの口利きということで、お客様扱いに成るらしい。


支給された制服に着替えて部屋を出る。一見水色のワンピースの様な制服なんだけど、細やかな縫製で体のラインに無理なくピッタリと沿っていて、ダボ付く感なく実に動きやすい。

だけど…写真技術も通信技術も乏しいこの世界で、何故私にピッタリあった制服が初日から用意されているのか少し怖い。


世話役の女性に案内されて教室に向かう。

教室の前で待っていた校長に連れられて中に入ると、簡単な自己紹介をして席に着く。

クラスの仲間には予想以上に好意的に受け止められた。

当初は引っ切り無しの質問攻めに合ったが、4日もすれば落ち着いて、2週間もすれば、問題もなく幾つか有る固定メンバーの一つに溶け込めた。


この学校では、歴史や算数、経済や社会、魔法や政治など、とにかく多岐にわたるカリキュラムを任意で選択して受講する。但しこの学校は、元々世界屈指の軍事教育学校であるらしく、基礎剣術と基礎魔法の実技授業については必修らしい。

私は当初の目的通り、領地運営に必要な授業を集中的に選択していった。




「えーですので、簡単な魔法だとしてもですね、えー繰り返し身体に覚え込ませる迄使い込めば、えー同じ魔法でも、えー効果に変化が現れるのです。」


毎日行われる基礎魔法の授業。私には意味がないと分かりつつも、捨てきれない憧れから真面目に聞き入ってしまう。

魔力が無いという申告に驚かれ、数人の魔法の先生立ち会いのもと魔力測定した結果に驚愕された。

なので魔法の授業は免除してもらえるという話だったが、同上の理由で参加させてもらっているくらいだ。


『つまんねぇ授業だな…』


(五月蝿いアデル。基礎やねんからしゃぁないやろ。)


アデルにとっては、足し算引き算を習ってるような物だろうから仕方がないないとは思うが、毎日毎日30分と持たずに愚痴を溢し出すからたまったものじゃない。


「えーこの事から分かるように、えー詠唱という形に置き換えられた現象が、えー魔力に力を与えて初めて魔法として、えー発動するわけです。えーなので、えーたった一音でも違えば、えー魔法は発動しないことを忘れてはいけません。」


『そうじゃねーだろ、言葉の通じない精霊に指示する為の定型文が詠唱であって、精霊と意思を繋ぐことに重点を置けば詠唱なんていらねーよ』


(へ~そうなんや。せやしアデカスは詠唱なしで使えんねんな)


とは言え、たまにこんな風にアデルが間違いを指摘するので、それがまた面白く、9割五月蝿いだけだが、一割の為になる話のために機嫌を損ねすぎない程度にする必要があるので、完全に無視するというのも勿体無い。

何だかんだと言っていても、8000年魔法を使ってきたアデルの言葉は重みが違う。


(ってか、精霊って居るんや?!どんな姿なん?)


『ん?あぁ。お前の思っているのとは違うものだと思うぞ。姿形の無い意思有る存在の事を便宜上そう呼んでるに過ぎないからな。』


(な~んや残念…んで、意思を繋ぐってどうやるん?)


『止めとけ、この国でもろともお前も消し飛ぶぞ。』


(分かってるわ!聞くだけやん。)


『…しょうがねーな…いいか?簡単に言えば、こう、脳ミソの後ろの方から話しかけるんだ。』


(……はぁ?)


『……はぁ?じゃねーだろ。ったくもう少し勉強してから聞けってんだ……。いいか?こうやって、グッと意思を込めて、グルンと集中で囲うだろ?そのまま言葉を後ろに運んで、バンッと一気に吐き出すんだよ。』


(………ん…もう良いわ…)


アデルの懸命な説明に、微塵も感じ入るところが見当たらない。

たぶんこれは私の勉強不足とか関係ない無い筈だ。

アデルが自分で良く言ってるが、天才だっていうのはキット本当の事なんだろう。


ブクマ有難うございます。

まだまだ手探りで書き進めていますので、忌憚のないご意見ご感想、お寄せいただければ幸いです。

稚拙な文章で読みにくいとは思いますが、生暖かく見守って頂けますようお願いします。


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