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58話

『お前なぁ…』


ため息まじりにアデルが零す。


(なによ?私がおかしいの?!)


『いや、おかしくはないんだが…この世界じゃそれは通用しねーよ…』


(何でやさ!!!)

   「ザイラ伯。」


アデルに詰め寄ろうと思わず背後を振り向いた瞬間、マッツカート大公が私の名を呼ぶので、その勢いのまま一周して再び前に向き直る。

傍から見れば、突然くるりと回った変なやつだ…

『ブハッ!』とアデルが小さく吹き出すので、恥ずかしくて耳が赤くなる。

結構本気で怒ってるんだから、こういう事は本気で止めて欲しい…


「そなたは未だ叙勲して間もない、騎士道の何たるかを知らぬからその様に耳を赤くしてまで憤るのであろう。良い機会じゃ、少しここで勉強していきなさい。」


そう言って、マッツカート大公直々の騎士道講座が始まった…


A:無駄に被害増やして何処が勇猛果敢なんですか?


Q:どれほど劣勢の状況でも常に挽回の芽を探し、己の志を通すのが騎士道である。


(アデル先生)(の補足):王を含む全ての諸侯が持つ軍は、個人財産で賄う私兵なので、他の者が無駄にしたと指摘することは無い。



A:国王に反逆したのに爵位没収だけってどういう事?死刑ちゃうの?


Q:全ての貴族は、貴族である前に騎士である。騎士として王に忠誠を誓うが、王が己の騎士道から反れた時、忠誠を撤回することは騎士道に反するものではない。そして如何に王といえ、投降した騎士を極刑に処すのは騎士道に反する。更に今回の布陣から、王城陥落を狙ったもので無いことは明らかで、命ではなく王位を狙われただけであるのに対し、代償に命を求めるのは人道にも反する。


ア補:貴族、特に高位の者は、王に忠誠してやっている(・・・・・)と考えている。



A:ほんなら反乱しても地位返上だけで終わりなん?リクス低すぎるやろ??


Q:騎士道に反しないとはいえ、忠誠の撤回は名誉を下げる。何よりも名誉を重んじる騎士にとって、それは生半可な覚悟ではない。


ア補:騎士共の身体の2/3は、自分勝手な名誉で出来ている。



そんなふうに質疑応答を三回程繰り返した所で、肩の力がガクリと抜けた。


(なんなんこれ…)


既に、私の質問を待つことなく騎士道論は続いてる。

大公は自分で語りながらも、うっとりとその言葉に悦に入っていて、取り巻く諸侯たちも、一様に力強く頷いている。

そりゃ、初見で見た印象だけだけど、人格者だと思っていたマッカート大公がこの有様だ。


『だから言っただろ。あの大公が温和な性格でよかったが、下手したら貴族社会で総スカン食らうところだったぞ。まったく…面白いから良いけどよ、お前にはいつも振り回されるよな』


(はぁ?!アンタにだけはソレは言われたくないわ!!!)


まだまだ終わる気配のない騎士道論をBGMに、アデルと私はそんな言い合いをして時間を潰す。大公に向けられる周囲からの圧倒的多数の冷めた視線に、私の考え方が世界基準で異常というわけではなさそうなのでホッとした。




騎士道論は佳境に入り、最大の盛り上がりを見せている。

大公は両手を振り上げ、髪を振り乱しながら熱く語っているが、ずっとアデルと言い合いしていた私には何を言っているのか分からない。


(ここまで来たら寧ろ面白そうやったな…失敗した、聞いといたら良かったわ…)


そんな素直な反省を、私が密かに感じた瞬間


「急報です!!」


一人の伝令が飛び込んできた。


「ベネデット王子及びエンニオ王子を護送していた一団が、何者かの襲撃を受け壊滅。両王子共に攫われました!」


「「「「何っ!!」」」」


ベネデット第一王子だけでなく、エンニオ第二王子まで、それぞれが行方知れずになった時の兵をそのまま引き連れてこの反乱に参加していたようだ。

ジェズの捜索にエンニオ王子が兵を連れて連絡を絶ち、続いてベネデット王子がそれを探す形で城を出た。

だとすると…それを思い返えしてみれば、ジェズの行方不明からが一連の計画だった用に思えてしまう…


(なに?もしかして王子全員が結託して反乱起こしたん?!)


『まぁ、そう考えるのが自然だな…ジェズアルドもカットゥーロと一緒に行動してたみたいだしな。』


(うわぁ……)


あまりにスキャンダラスな可能性に、さすがの私も言葉を失う。


ジェズとはそれなりに多くの言葉を交わして来た。

カーラ様以上に歯に衣着せぬ質なのか、聞いていない事までボロボロ零す彼の言葉からは、形だけの継承権ですら疎ましく思っている様に感じられ、何よりとてもカーラ様を可愛がっている事が伝わってきていた。

だから、その彼が反乱に加担するとは少し考えられないのだが…


そんな私の困惑を他所に、周りは騒がしい。

主犯格を逃してしまったレグレンツィ軍は当然のことながら、反乱軍に加担していた諸侯側はそれ以上だ。


『うまく行けばバカでかい利権に預かれると担いだ神輿は、失敗した時の責任を全て投げ込む箱でも有る。その神輿の証言がなければ、自分達のなけなしの正当性すら証明できなくなっちまうからな。神輿に逃げられて一番困るのは、間違いなくアイツラだ』


アデルがそう解説してくれた通り、駆け込んできた伝令に強い罵声を浴びせるのは、反乱軍側の貴族ばかり。中には「お前が誘ってきたからだ!」なんて、早々に責任転嫁場所を移そうと言い合う者たちも居る始末だ。

レグレンツィ側の貴族たちはそのあまりの熾烈さに、寧ろなだめる側に回っていた。



ブクマ及び評価有難うございます。

まだまだ手探りで書き進めていますので、忌憚のないご意見ご感想、お寄せいただければ幸いです。

稚拙な文章で読みにくいとは思いますが、生暖かく見守って頂けますようお願いします。


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