56話
アデルはロケットみたいに一度上空高く飛び上がると、さっき眼を付けた男めがけて急降下する。
多分あれが6代目で間違いない…たぶんその筈だと思うとアデルが言っていた。
なんとも頼りない返事だけど、私も、たぶんあんな雰囲気だったと思うとしか返せない。
(ちょっ、いきなり話が違う!)
「『よう。お前がカットゥーロとか言う6代目で合ってたよな?』」
飛び上がった所で不安は感じてた。事前の話ではま直ぐツッコんで周りを守る兵士をなぎ倒して行くはずだったのに…アデルは真上から急降下すると、障壁も張らずに男の背後に着地して、挙げ句のんきに話掛けている。
「ヒッ、ヒィッ」
(あれ………?)
「『おい…幾ら何でもその反応は傷つくぞ…』」
いきなり敵の真ん中に立った私の不安を余所に、6代目勇者と思わしき男はアデルの登場に腰を抜かしてへたり込んでいた…。
「『少しは落ち着いたか?』」
腰を抜かした男の襟首を掴み数キロ飛んで、深い森のなかに降ろすと男が落ち着くのを待っていた。
座り込んだまま、地面についた両手に体重をかけて男は荒い息を整える。
2~3回静かに深い深呼吸をすると、男は弱々しくも、僅かに私を睨みつけた。
「『変な気は起こすなよ?お前が大人しくしているうちは生かしといてやる。既にお前の周りには障壁を張ってあるので逃げられないからな。それに、見ろ…』」
そう言ったアデルが指差す方を見ると、5m位はありそうな巨大な火の玉がいつの間にか頭上高くに浮いていた。
「『お前が俺の身体に触るよりも早く、ここにアレを呼び出せるからな。自殺したいなら質問に答えた後にしてくれよ。』」
アデルはそう言うと、上空を指さした手を一度開いてからまた握る。
瞬間、上空に浮かんでいた火の玉はその手に握りつぶされるかのように消滅した。
「ツッ…………」
男は、声にならない驚きを漏らすと共に、完全に戦意を失ったのが見て取れた。
(そんな事して私の身体は平気なん…?)
『だからやらねーよ』
(うわ……………。)
「『先ず確認だ、お前は6代目勇者カウ何とかで間違いないな?』」
「カットゥーロだ…カットゥーロ・ペロージ。…今更それを聞くのか…」
(うん、そう思うよねぇ…ってか名前くらい覚えといたりぃな…)
「『それで、カッなんとか。お前は自分が死んだ後もこの世界に幽体として残り続けてたのか?』」
(無視ですか、そうですか。ってか、覚えてないんやなくてわざと煽ってるんや。そういや、始めはちゃんと言うてたな…)
「…幽体という言葉の意味がよくわからないが、死後の記憶はなにもない。強いて言うなら死んだと思った次の瞬間には、神と名乗る数人の老人に囲まれ、世界を救うために再び力を貸してほしいと頼まれた空間が死後の世界と言えるのかも知れない。」
(うんうんそうなんよねぇ。死んだ思た次の瞬間、全然別の所で目が覚めて、はぁ?ってなるんよね…せやけどアンタ、神様に出会えたんなら良いやんか、私なんて何の説明もなしやしな…)
「『……世界を救うか…それで?そいつらにはなんて言われたんだ?』」
「…この世界の誕生以来、時間と共に歪んでいく流れを調整するために何人もの勇者が生まれ、その度に遅れて誕生する魔王に邪魔をされている。多くの勇者が魔王と共に倒れた。勝ち残り流れを調整できた勇者も居れば、勝ち残り流れを乱した魔王も居る。例え勇者と魔王の力関係が均衡していたとしても、流れの歪みは時間の経過で起こる不変の物らしく我々勇者側には分が悪いそうだ。このままでは、近い将来世界の破滅を迎えるらしい。だから我々過去の勇者が、世界のルールを曲げてまで再び立ち上がる必要があるということだ。」
「『……………。』」
(流れってのがよく分からんけど、世界の破滅ってのは嫌やなぁ…どうするんか知らんけど、勇者手伝ったった方が良いんやろか………?)
「私こそ問いたい!きさ…貴方こそ一体何者なのだ?!いや違う、魔王なのは間違いない…しかし、当代の魔王は討ち取ったではないか?!いや違う、その前に初めて対峙したときの貴方は魔王ではなかったはずだ!そうだあの時だ、確かに初めから常人の域を超えていた。しかし、今のような障壁を張ると同時に貴方はあの場に突如現れた。この私が思わず逃げ出したほどの圧倒的な存在感。魔王だからといって…」
「『黙れ!!!!!』」
アデルの叫びにビクッとなって頭を手で覆い縮こまるカットゥーロと、同じくビクッとなった私。
アデルが放つ見たことのない殺気に、気を失いそうな恐怖を感じる。
普通でもアレだけビビっていたカットゥーロだ、このショックで死んでしまったとしても私は驚かない。
「『………次の質問だ。お前はその体から出ることは出来ないのか?』」
「…………………」
(…………死んだんちゃう?)
『………………』
アデルはゆっくりカットゥーロに近づき脈をとる。
『死んでたら手間が省けたんだけどな…』
アデルは小さく舌打ちすると、少し離れて地面に腰を下ろした。
(…起きるまで待つん?)
『せっかく生きてたんだ、どうせなら聞きたいことはまだ有るからな。起こしたショックで今度こそ死なれたら…流石に凹むだろ…』
(あはは、目覚めて間近にアデルの顔があったら、確かにショック死するかもしれんわ)
『…言っとくが、こいつに見えてるのはお前の顔だからな……』
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まだまだ手探りで書き進めていますので、忌憚のないご意見ご感想、お寄せいただければ幸いです。
稚拙な文章で読みにくいとは思いますが、生暖かく見守って頂けますようお願いします。




