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54話

(……………。)


『何だ…なにか言いたげだな…』


(いや………皆殺しにしようとするアンタを、どうやって止めようか考えてたもんやから、以外でさ…)


『バカかお前…ここでアイツ等殺したら、あの時リオを一人で行かせた意味がなくなるだろ。』


私は今、戦場を離れ、大きく迂回する形で反乱軍の後方に回り込む為に走ってる。

リオは以前、ある程度の距離ならば大凡の勇者の位置がわかると言っていて、カストも同様に、殺意という形でアデルの居場所を知ることが出来たと言っていたのを思い出したので、念の為に今の私は純ノエミだ。


アデルが言うアイツ等とは、反乱軍の兵士を指している。

その兵士達の動きは気持ち悪いくらいに統率が取れていて、先日いつの間にか逃げてた6代目勇者の名前が浮かぶ。

挙げ句、一度死んだはずの兵士が起き上がる。

レグレンツィ側の兵士がアンデット化していないのが唯一の救だが、組み合わせとしては最悪の取り合わせだ。

そんな反乱軍の攻撃に、数は減らしながらも何とか耐え忍んでいるレグレンツィ軍の練度の高さにアデルは感心していた。




レグレンツィ軍の指揮官、レグレンツィ王国最大の都市、ロレンツォの領主である ヴェッツィオ・マッツカート大公に統率やアンデット化の事情を説明し、私が根源を倒すと言って6代目勇者を探すために走っている。

アンデット化させることの出来る、11代目勇者が何故生きているのかは気になるが、6代目を捕まえられればその答えも分かるだろう。


「うわ…こんなとこにもまだ居るわ…」


戦場は、若い林に囲まれた盆地のようなところで展開されている。

戦闘能力のない私は、6代目勇者に不意打ちするため、その林の中をこっそりと進むのだけど、時々偵察兵の様な少数の部隊が林の中に潜んでいて、更にそれを迂回するものだから思うように進めない。

5人ほどの部隊なので、私が戦っても勝てないことは無い気がするけど、カストのように瞬殺できるわけではないので、間違いなく呼子なんかを鳴らされるだろう。


(はぁ…アデルが魔法使えたらなぁ…)


『あぁ?どういう意味だ?』


(アデルが拘ってる、傍迷惑な広範囲魔法やなくて、フツーの対個人魔法が使えたらこいつ等倒していけるのにな…)


『……発想が過激だな…』


(嘘やん?!マジで???アンタに過激とか言われたら流石に凹むんやけど?!!!)


最初の少数部隊を見つけたときにアデルが教えてくれた。

統率の能力は、ひとつの集団であれば人数の上限なく統率できるが、統率できる集団は一つだけで、更に命令内容も複雑なものは出せないらしい。

例えるなら、犬にお手と命令しても、どの細胞や筋肉を使ってお手をしろと命令しているわけではないのと同じだという。

人ひとりひとりを細胞に見立てて一つの生き物として操っているだけに過ぎないため、複数ん目的を持った行動は取らせられないし、別働隊なんかは操れないんだと言っていた。

そんな説明からいくと、この偵察部隊は自分の意志で参加しているんだろうから、別に殺しても良いと思ったんだけど…


(まぁいいや…せやけど、ホンマに困ったときはそのプライド捨ててや……ホンマに…)


『困ったときは全部吹き飛ばせば良いだけだ。』


カッカッカと、アデルが笑う。

全く、こんな奴に物騒とか言われたくない…


(案外、使()へんの違って、使()へんのやったりな…)


『………………。』


アデルのプライドに対する意趣返しのつもりでボソッとそんな事を呟いたら、不自然な感じでアデルがそれをスルーした。


(え…?図星?!)


『うるせー!このバカノエミ!!!いいか?浴槽位あるお前程じゃないにしても、俺の魔力容量もバケツくらいの大きさが有るんだ!その大きさで仮定した場合の人一人だけ殺すだけの魔力がどれだけ必要か知ってるか?一滴だぞ一滴!!この調整の難しさも知らねぇお前が偉そうに言うんじゃねぇ!!』


(って…いや…その…ゴメン…)


普段と変わらないキツイ口調の中に、ムキに成っても仕方がないと、せめぎ合う感情が読み取れた。それが気配が一層、アデルのタブーを突いてしまった事を意識させ、互いに気まずい気持ちのまま、無言でその後を歩き続けた。






『見えたか?』


(うん…やっぱアレかなぁ…)


反乱軍の真裏に位置する木に登り、凸型に形成された布陣の出っ張り部分を望遠鏡で観察する。

この望遠鏡はヴェッツィオ大公が貸してくれたものなんだけど、如何せん倍率がオペラグラス程度しかないため、一人一人の顔を確認できるほどの物ではない。

当然背後に回り込んだからには全員背中しか見えないので、一度チラッと見ただけの人物の後ろ姿なんてとてもじゃないが分からない。


これからやろうとしている作戦はひどく簡単なことで、クサビ形に形成した障壁をまとった状態で空から6代目勇者に体当りし、そのまま人気のない所まで拐ってしまおうという物だ。

もし失敗したら、範囲を広げて威力を弱めた電撃系の魔法で死なない程度に感電させてしまう。

死なない程度と言っても、個人差が有る。死人を数えたほうが早いのか、生存者を数えたほうが早いのか全く読めない上に、確実にレグレンツィ軍も全て巻き込んでしまうために出来れば使いたくない。

なので6代目勇者のことは確実に視界に入れておきたかった。


(せめてこっち向かへんかな…このままじゃ、作戦って呼ぶのもおこがましい作戦すら出来ひん…)


『あぁ?なんか文句…』

        (有りません!)


『………仕方ねぇな、一度試してみるか…』


アデルはそう言うと私の中に入り込む。


(なにす…)

   『黙ってろ!』


私の言葉すら遮って、そのまま望遠帳を覗き続ける。


(あっ…馬鹿発見…)


『だろ?』


整然と並ぶ集団の中で、一人キョロキョロとあたりを見回す男が見えた。


ブクマ及び評価有難うございます。

いつの間にか200Pを突破しておりました。未だ話数<ブクマ数も守られており、感謝の気落ちで一杯です。

少なくともそれが守られているうちは週2更新で頑張ろうと思っておりますが…

一話ごとの文字数が減ってしまっているのにはもう少し目をつぶってください………

まだまだ手探りで書き進めていますので、忌憚のないご意見ご感想、お寄せいただければ幸いです。

稚拙な文章で読みにくいとは思いますが、生暖かく見守って頂けますようお願いします。



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