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49話 リオの剥けた皮(後編)

「何してんねんリオ!はよ起きろ!!!カストに殺されるて自分で言うてたん違うんか!」


カスト様の回復魔法で傷一つ無くなった僕の身体を、ノエミキュンが激しく揺る。

それでも僕の現状に変化は無くて、奇跡は期待できないと理解した。

アデル様に貰った上等そうな真っ赤なローブが、僕の血で赤黒く汚れてしまってるのが申し訳ない。



(「ノエミキュンて、僕が死んでも”アホやな”で済ませそうだよね…」

「うわ、ひっど…そんな人でなしやと思てんの?!」)


たしか、ノエミキュンのお兄さんと3人でご飯を食べたとき、僕の扱いが悪いという話からでた、そんな些細なやり取りを思い出す。


「ごめんね。ノエミキュン…あれ、半分くらい本気だったから、そんなに泣いてくれるなんて、俺様ちゃんチョーびっくりしてる。愛情表現だとか言ってたけど、満更嘘でもなかったんだね」


僕の身体を抱くノエミキュンの肩に手を掛けて、普段の戯けた調子で言ってみた。


『ゴメン……僕がいつまでもあの場にこだわったから…』


そんな僕とノエミキュンの後ろで、カスト様は膝を付き、伏せるようにそう呟いている。


「いやいや、関係ないですって!止めて下さいカスト様!!自分で選んだ道なんで!!!」


カスト様にゴメンとか言われたら、びっくりしすぎて潰された心臓が動き出してしまいそうで、体に悪い。


『ノエミ。見てみろよこの残骸…これほどの敵をアイツは一人で倒したんだ。

 それにこの男…ジゼラの話しぶりからすると、コイツが当代の勇者だろう。

 勇者を倒すのが魔王の使命だ。これほどの敵に阻まれながらも、立派に使命を果たしたリオが…俺は誇らしい。だからお前も褒めてやれ…』


アデル様はノエミキュンの前で、僕の身体を見下ろしながらそう言ってくれた。


「そうなんですよ、アデル様!まぁ、こんな姿になってなきゃ完璧だったんでしょうけど…なんというか…意外と満足出来てる自分に驚いていて、自分を誉めてやりたい気持ちで一杯なんですよ。」


こんな結果で満足するなと怒られるかもしれないけど、見栄や強がりでなくて本心からそう思えてしまうんだから仕方がない。


「ってか俺、アデル様の姿がみえてるんですけど?!声も聞こえてるんだけど?!いやぁ…想像以上にアデル様男前だったんですね、低くて良く通る声も…マジしびれます!………カスト様はアレですね…想像よりも…軽い感じなんですね…」


そこまで言って、慌てて頭を押さえてしゃがみこむ。

いつもの通りだったらカスト様の怒りのパンチが飛んでくるからだ………………


………だよね。なんとなくそんな気はしてた。

ノエミキュンは勿論、アデル様やカスト様にも、僕の声は届いていないみたいだ。

独り言いってた自分が恥ずかしくて、思わす辺りを見回したけど、誰が聞いてるわけでもない。


未だ大きな声で泣き叫んでくれているノエミキュンに、どんな言葉も届けられないと思うと、急に切なくなった………。

遺書でも書いて置けば良かったなんて思うけど、死ぬつもりなんてこれっぽっちも無かったんだから仕方がないよね。


「そや!!リオ!!!まだこの辺に居るんやろ?!」


ノエミキュンが周囲を見回してそう叫ぶ。


「この辺も何も目の前だよ~」


僕は、僕の身体を挟んでノエミキュンの前に屈んでる。


「幽体になって私の中生きれば良いんや!大丈夫、私の容量は底なしらしいから、リオの一人や二人余裕で面倒みたる。アデル!やり方教えたり!!」


ローブどころか、顔にまで僕の血を付けたノエミキュンの、ボロボロに泣き崩れた顔が僅かに明るく輝いた。

幽体というと、アデル様達と同じ状態だ。

例えどんな形でも、ノエミキュン達と別れないで済むなら有りがたいんだけど…

話を振られたアデル様は、ただ無言でノエミキュンから目を逸らす。


「ッ………カスト!あんたはたしか、気合いで幽体化したって言うてたよね?!…リオ!気合いや気合い!!気合いで幽体化して私の前に顔見せぇ!」


今までで一番の無茶振りだ。

今の僕の状態とアデル様達との違いも解らないのに、気合いと言われてもどうしたら良いか分からない。

なんとなく、現世に執着すればいけそうな気はするんだけど…生憎僕は既に満足してしまってて、一度感じた充足感はどう思い込んでも消せそうにない。



フッと、視界がぶれて、同時に意識が揺らぐ感覚に襲われる。

時間が来たんだと本能が察知する。


これから行くのは天国だろうか地獄だろうか?

まぁ…魔王なんだから地獄一択だよね…。

どんなところかな…痛いのは、ヤダなぁ…


「あぁ、ノエミキュンはどんなに泣き崩れても綺麗なままだよね」


俯くノエミキュンを覗き込み、ゴクリとツバを飲み込むと、そっと僕の唇をノエミキュンの唇に添えてみる。

コレばっかりは今じゃなきゃ出来ない事だから、最後の思い出と許してほしい。

でも、実際触れた訳でもないのになんだこの充足感?!

僕ってやっぱり、ノエミキュンに恋してたんたんだろうか?

違うよね?こんな綺麗な子とキスするチャンスがあるなら、健全な男子として当然の行動だよね?


「リオ?!」


俯いていたノエミキュンが再び顔を上げる。

伝わったのかな?!


一瞬自分が物語の主人公に成ったかのような錯覚を起こす。

奇跡でも起きたのかとドキッとしたけど、ノエミキュンの瞳は僕を捉えてない…。


まぁ、しょうがないよね…

しょうがないけど、もう少し早く顔を上げてくれたら、あんな体勢でキスしなくて済んだのに…そんな小さな後悔が、今更小さく湧き出てきた。


「もしかして、この感情を押せば残れるかな?」


完全に諦めていた心に、小さな希望が灯る。

それと同時に景色の一部が、掠れるように消えてきた。

景色はみるみる速度を上げて消えていき、考える間もなく景色が黒く塗りつぶされた。


やっぱりもうすこし一緒に居たかったな…


ありがとうノエミキュン。


地獄でアデル様が来るの待ってますね。


カスト様はあま………………





ブクマ有難うございます。

まだまだ手探りで書き進めていますので、忌憚のないご意見ご感想、お寄せいただければ幸いです。

稚拙な文章で読みにくいとは思いますが、生暖かく見守って頂けますようお願いします。



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