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40話

カーラ様とクレオ様、そして気乗りはしないがウザ男も連れて転移陣を踏む。

私としてはウザ男が絶対なにか仕出かしそうで、出来ればクローチェに置いて行きたんだけど、カストがそれを頑として許さなかった。

毎日毎日、文字通りカストに死にかけるまで虐められて、今更大それた事はしないと思うんだけど…


王城側の隠し部屋の中に出るとまずは小窓を覗いて陛下の私室内の様子を窺う。

扉を開けたら誰かとバッタリ。なんて事に成ったら隠し扉の意味がないのでこの確認は怠れない。


「大丈夫です、誰も居りません。」


小窓を覗いてたクレオ様がそう言って隠し扉の鍵を開ける。同時に連動している表の扉の鍵が掛けられ、出入り中に誰かが入ってくることもない。


「それでは早速陛下を読んで参りますね、その間はどうかご遠慮無くお寛ぎ下さい」


カーラ様がそう言って、クレオ様と共に部屋を出ていった。







「すまぬノエミ、待たせたの!」


大きな声と共に陛下が勢いよく扉を開けて入ってこられた。

私はフカフカのソファーが気持ちよすぎてうたた寝(・・・・)してしまい、反応が数テンポ送れてしまう。


「ぐわっはっは、騙されたな愚かな人間どもめ! 覚悟しろこの大魔王リオ・リオ・ベルターニ様が………グェッ」

    ”ズバン!”


突然立ち上がり芝居じみた言葉を吐くウザ男の鳩尾に拳を差し込む。


「陛下、少々お待ち下さい」


そう言いながら、陛下に微笑み軽く会釈する。

崩れ落ちたウザ男を部屋の隅に放り投げ、馬なりに乗りかかる。


「大魔王様、今だっての発言の意図をこの愚かな私に分かるようにご説明願えますか?」


襟首を引き寄せて、陛下たちには聞こえないようウザ男の耳元で囁いた。


「ノ、ノエミキュン…首がしまって俺様ちゃん息が…」


「息?……あぁ、そう言えばウザ男さん。私のとこには自殺しに来たんやったね?丁度いいからここで成就させてあげるわ」


「グッ…グェェ…アデ…アデル様に言うように言われたんす。」


「嘘はあかんよウザ男ちゃん?私を介さなあんたと話出来ひんねんから、私が知らん間にそんな話できるはずないやろ?」


「ホントです。ホントなんです。さっきノエミ様が寝てる間にアデル様が出てきて…」


ウザ男は目を涙で潤ませながら必死で訴えてる。実際その気になれば私なんか簡単に払い除けられる程の実力差が有るわけで、そうしないという事は本当の事を言ってるのかもしれない。


(アデル…説明してくれるよね?)


ウザ男の襟首を掴んだまま、私は背後のアデルに視線を送る。


『何を怒ってんだ?説明も何も、お前のためだろ。』


(私のため?)


『そうだ。勇者が現れた以上魔王も現れるのは誰でも知ってる。今はお前が勇者だと思ってるコイツらでも、あっちが本物の勇者な以上、お前が魔王だと疑われるのは時間の問題なのは分かるだろ。そうなったらまた面倒な事になるぞ?厄介事は嫌いだろ?だったら丁度本物の魔王が居るんだ、名乗らせといたら良いだろ。』


アデルは片肘を付いて寝そべったまま、プカプカと宙に浮いて気だるそうにそう答えた。


(………いろいろ言いたいことは有るけど……100歩譲ってそれは良しとしよ。せやけど…愚かな人間共の下りは必要やったか?)


『カハハハハ!アレな。まさか本当にやるとは思わなかったけどよ、なかなか面白かっただろ?!カハハハハ』


腹を抱えて爆笑しているアデルに対し、私のコメカミがプルプルと痙攣し初める。

陛下の面前だ、声を荒げる訳にはいかない。グッと堪えて平静を取り繕うが、頬の筋肉が吊り上がる。


(………カストは…なんで…止めへんかったん…かな……?)


『い、いや…なんせ彼は魔王だからね…ここで人の手で裁かれるのならそれに越したことはないかなぁ…と…………マズかったかな………?』


「不味いにきまってるやろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!!!!!!!」


陛下の私室に私の叫びが響き渡る。

同時に私の魔力が爆発し、窓ガラスが砕け散る。

周囲の者も物も吹き飛んで、均しくに壁の染みになる………。


なんて事は流石に起きないが、私の心境としてはそれ位の勢いだ。

それでも洗い浚いを叫ぶこと無く、一度の咆哮で済んだのは警備の兵たちが雪崩込んで来たからだった。


「ハァハァハァ…」


『ノエミ…その…そろそろ手を離さないと…魔王を討ち取った勇者に成っちゃうよ?』


そう言ってカストが指差す私の手元見ると、ウザ男が泡を吹いて青くなっていた。








人払いを済ませ、入れ直されたお茶を抱えながら陛下と対面してソファーに座る。

残念ながら気を失っていただけのウザ男は、呼吸以外の全ての動作を禁じられ、私の横に座り小声で絨毯の毛の数を数えてる。


「………ノエミ、少し落ち着いたのなら何が有ったか聞かせてくれるか?」


陛下が困惑気味に、しかし優しく語りかけてこられた。


「………スイマセン………無理です………。」


対する私は、ウザ男と同様に床を見つめ、気の効いた誤魔化し方も浮かばずに素っ気なく答えることしか出来ない。


『お前、王に向かってその返事は駄目だろ!ついに吹っ切れやがったな。カハハハハ』


(黙れハゲ!)


アデカスの事はだいぶ理解してきてたつもりで居たけど、まだまだ甘かったと猛省する。


「………その…隣の者は初めて…」

             「最近雇った取るに足らない小姓です。見ての通り害はありませんので無視して下さい。」


失礼なのは承知の上だが、陛下が話し終わるのを待たずに話を被せていく。


(その話題には触れないでってアピールですよ~。政治のプロでしょ~、空気読んでくださいよ~)


心の中で訴えつつ、顔を上げずに目線だけ送って合図する。


「いや、しかし…その者は先程魔王が…」

              「そんな事より陛下…至急のお呼びと伺いましたが?」


伝わらなかった…いや、伝わってたとしても、流石にこの話題をスルーする訳にはいかない陛下の気持ちは良く分かる。

だからといって、私も説明するわけには行かず…強引に話の流れを断ち切った。


アデルの存在すら秘匿したい陛下の前に、現役魔王連れてきたとか言ったら流石にどんな反応が返ってくるのか想像もつかない。

いずれ話さなくてはいけない時が来るとは思うが、少なくともそれは今じゃない。


「う…うむ…だがその前…」

          「至急の御用とは如何なものでありましたか?!」


尚も食い下がる陛下に向かって体を起こし、顔を真っ直ぐに上げ、目線に力を込めて繰り返す。


「まぁ……信じるしかないのだな……」


何時になく強い私の眼力に、陛下は諦めるように呟かれた。


ブクマ登録有難うございます。

思った以上に時間がとれなくて、また水土更新に戻ります。

稚拙な文章で読みにくいとは思いますが、今後も宜しくおねがいします。


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