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36話


『僕達幽体同士の戦いは、幻術師同士の戦いに似てるんだ。相手に死を意識させる程の攻撃を当てれば消滅させることは出来るけど、生憎、僕もアデルもそんなタマじゃないからね。』


二人共何で無傷なのかと聞いてみたら、そんな答えが帰ってきた。


(ほんならなに?どれだけやりあってもお互い無傷なん??)


『そうだね、僕とアデルの戦いに限って言えばそうなるかな』


(え?涙まで流して本気で心配した私の立場は???)


『それはお前が勝手に先走っただけだろ。大体考えても見ろ、こんな事で決着が付くならコイツなんかとっくに消滅してて、5000年も俺に着きまとえるはずがねーだろ。』


『ハハッ、それは僕のセリフだよ』


(……………。)


好きに暴れて妙にスッキリしている二人を前に、私のこの怒りは何処に向ければ良いんだろう……。


「ザイラキュン、いきなり叫んだかと思えばボーッとしたり、俺様ちゃんチョーびっくりしたんだけど?、、、、、もしかして、俺様ちゃんとの未来を想像してチョードキドキしたりしてた?」


あ…居たわ怒りのはけ口……。







「すいませんでしたぁぁぁぁぁ」


私の足元で、ボロボロになったウザ男が土下座して謝っている。

空気を読まずアピールを続けるウザ男に、もう一度テストしてあげると言って私自ら模擬戦相手をかって出た。

私を泣かせた罪をカストに背負わせて、私の指示通りにウザ男を痛め…テストしていった。


結果的に身体能力だけで見ても、ウザ男はAランクに近いんじゃないかとカストは言う。

訓練を積んで戦闘技術を磨き上げ、それなりの場数を踏めばSランクにも届くんじゃないかと、驚くべき高評価だ。


「あんた何でこれだけ戦えるのにEランクなん?」


一番気になるところを聞いてみる。

現在18歳のウザ男は冒険者3年目で、身体能力だけでもAランクに近いと言われる男が何故Eランクなのか?私みたいに身の丈に会わない力を得でもしない限り、ランクを低く見積もることにメリットは無いはずだ。


「あの、話せば長く成るのですが。自分、急成長を遂げてからは殆ど冒険者としての活動が出来なくて、ランク審査どころじゃ無かったんです…」


「ちょい待った。キャラが完全に普通になってるやん?」


話の内容も気になるが、それ以上にキャラの変貌ぶりが気になって仕方がない。

あれはあれで邪魔くさいけど、そういうキャラが普通に話すと、それはそれでつまらない。


「あ…いや……アレはその……合格したいなら強烈に印象に残るほうが良いと、冒険者仲間にアドバイスを貰って演じてました…スイマセン…。」


ウザ男は土下座の姿勢そのままに、顔だけ上げて上目遣いでそう話す。


「……あんたもうちょい友達選んだほうが良いと思うで…。」


「えぇぇ!駄目でしたか?!!」


「当たり前やろ!初めから今の話し方で来てたら、私が呼ばれる間もなく合格してるわ!!ってか逆にあれでいけると思った理由を教えて!!!」




本気で何が悪かったのか理解していないウザ男に、1~10迄ダメ出しをした後、話を本題に戻す。ウザ男が人払いして欲しいと言うので、場所を執務室に移して話の続きを聞くことにした。


「あの…ザイラ伯様……この座り方は続けないといけませんか……?」


執務室の私の机の前で、正座させられたウザ男がオドオドと聞いて来た。


「ん?なんか問題有ったか?」


「いえ…自分は余りこの座り方が得意ではなくて……その足が痛むと言いますか…」


「ウザ男、言い忘れてたけどな?貴族になったら無礼討ち言うて、貴族様に失礼なことした平民を処刑する権限が与えられるんやで?座り方一つで首がつながるんやったら有り難いと思わへんか??」


「す!スイマセンでした!何の問題もありません!!是非この座り方のまま居させてください!!!」


なんて意地悪な事を言ってみる。

実際この程度のことで処刑してたら、相手が平民だとしても流石の貴族様でも罰せられるのだけど、今まで貴族なんて見たこともない田舎で暮らしてきたんだろうか?打てば響く反応が面白くて、ついつい弄って遊んでしまう。


「んで、結局何が有ってこんな強くなったん?」


全身でビビりまくってビクビクしてるウザ男に、私は優しく微笑みかけてそう言った。


「は、はい……実は自分、ドラープ帝国の出身でして…」


ウザ男は慣れない正座にソワソワしながら、自身の誕生から語りだした。


(そこからか…。)

『そこからかよ!』

『そこからなんだね…。』





ウザ男の本名はリオと言うらしい。ドラープ帝国のベルターニという村で、狩猟を生業とする両親の元に次男として生まれたそうだ。

父の狩りを手伝い育ってきたリオは、いつしか獣より強い魔物を狩って暮らす冒険者に憧れだす。それは同時に父に対する憧れであり、そんな父を超えたいという強い意志の現れでも有った。

懸命の説得もむなしく、冒険者に成る事を両親から反対されたリオは、15際の誕生日の夜に冒険者に成るため家を出たらしい。

そんなリオの行動に、私は少し親近感を抱いてしまう。


大きな街に出て、新米冒険者として歩き始めたリオは、細々と初級クエストを熟しながら日々を何とか過ごしていた。そして半年程立った頃、同じ様なランクの仲間と出会いパーティーとして活動を始めた。


パーティーを組んでもう直ぐ一年になろう頃、低級の魔物討伐に出向いた時に、森に迷いこんでしまったそうだ。見知らぬ森で不安に駆られ、仲間と共に眠れぬ夜を過していた時、突然一つの感情がリオに目覚めた。

降って湧いたとしか言いようのないこの感情に困惑するが、この日を境にリオの身体能力はありえない速度で成長し始めたという。


「ずっと誤魔化して我慢してたんです。気のせいだ、そんな筈がない、何かの間違いだって…」


リオは痺れた両足をモジモジさせながらそんな事を言う。


そうして更に一年ほど過した頃、ドラープ帝国がノヴァリャ聖国と開戦する。何処に行っても戦況の話題しか聞こえてこない暮らしの中で、リオはノヴァリャ聖国が勇者を擁立しているという話を耳にした。

その瞬間、積もり積もった感情が弾けるかのような衝動がリオを襲う。

自身が考えるまでもなく体は勝手に走り出し、勇者が現れると言われる最前線に向けて走り出していた。


”勇者を倒さなくては”


その思いだけがリオの頭を埋め尽くす。


「自分どうやら魔王になってしまったみたいなんです」


リオは麻痺した足に顔をしかめ、足の裏をトントン叩きながらそんな事をサラッと言ってのけた。


ブクマ有難うございます。

おかげ様で増減しつつも、何とか更新の度にBm数が増えており、

喜びながらもここに書くネタが無いと、嬉しい悲鳴を上げています。

稚拙な文章で読みにくいとは思いますが、今後も宜しくおねがいします。


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