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34話

(ホンマあんたふざけてるやろ、大概にしてや………。何回言うても聞かへんし。)


『うるせぇな、何で俺様が王族ごときに(へつら)わなきゃいけねーんだ』


「神代の頃より生きられるアデル様のお言葉ですから問題ありませんわ。我ら一国の王族如きがアデル様にかしずいて頂こうなど神をも恐れぬ行為だと理解しております」


『それ見ろ、この娘のほうがよく分かってるじゃねーか』


(それ見ろちゃうわ……)


ひたすら無礼を謝る私に、カーラ様はそんな風におっしゃって下さったが、それでも物には限度がある。

それの証拠に陛下やジャン様は常に難しい顔をして居られ、王妃様の目はずっと点のようになっていた。

せっかく今まで私のことを好意的に見てくださってるのに、夜中に毒蛇を仕掛けられたらどうするんだ……。




カーラ様、クレオ様、陛下、王妃様、ジャン様、私。そんな順序で転移陣を通り秘密基地へと移動した。

私が最後に基地に到着した時には、カーラ様はキョロキョロと物珍しくされていて、クレオ様とジャン様はピリピリと気を張られ、陛下はカーラ様以上に興奮気味に辺りを見舞わされていて、王妃様は目を点にされていた。


私の姿を目にすると、陛下は大層興奮されて話しかけてこられた。


「ノエミよ、これが魔王アデル殿の居城か?この灯は何故光っておる??この継ぎ目のない石はどの様にして積んだのだ???そもそも5000年もの歳月を何故朽ちさすこと無く残せたのだ????何か当時にしか無いような物は残されておるのか?????!」


そんな感じで矢継ぎ早に質問攻めに合う。


「も、申し訳ございません陛下。その辺りのことは後ほどアデルから聞いておきます。まずは説明させてください」


「お、おぉ。そうであったなすまぬ。聞かせてくれるか。」


そう言って少し落ち着きを取り戻された陛下は、私の言葉に耳を傾けられた。

先ずは王宮からの転移陣は基本的に一方通行だということを告げておく。

基地内は自由に動くことが出来るが、基地から出るときは基本的には私が立ち会わなくては出ることが出来ない。将来的に基地と外の街を物理的に繋いだ時に、侵入者がここから直接王宮に出るなんてことが無い様にするためだ。

基地の魔法陣はアデルを介さないと発動しない。それを王宮に書いたような汎用型の魔法陣に書き換えれば自由に行き来できるのだが、それではセキュリティーが甘くなってしまうらしい。王宮に描いた魔法陣も血を媒介に使用者制限をかけているが、転移陣に詳しいものならば突破することは不可能ではないそうだ。

専用型なら絶対突破されないのかと聞いたら、理論上は不可能らしい。詳しいことは聞いても分からないだろうと言われたが、その通りなのでぐうの音も出ない。


そういう事なので、陛下達には先ず放送室に案内する。

ここは館内放送などの機材が置いてあるのだが、その中で、部屋の片隅に置いてある小さな機械が目当てのものだ。放送機材を見て陛下がウズウズされているのは手に取るように分かるのだけど、今は敢えて気づかないふりをして説明を続けた。

40センチ四方の箱に小さな赤いボタンが一つだけついたこの機械、ボタンを押せば特殊な電波のようなものが発せられるらしく、遠く離れていてもアデルはこれを感じ取れるのだという。

要するに陛下たちがこの基地に来たときは、このボタンを押せばアデルが迎え位に来ると言った寸法だ。


その後は他の施設も一通り案内して回った。中でも、やはりと言うか、冷蔵施設を紹介したときの陛下の食いつきが半端なかった。

見て触れる範囲で研究するのは勝手だが、分解したり仕組みを聞いたりすることは一切許可しないと言うアデルの言葉を伝えたときの落胆様はそれは凄かった。

文字通り、私の血と汗と涙の結晶とも言えるこの冷蔵施設。恥を忍んで頑張ったかいあって可動することが出来ていた。大凡1000人30日分の食材を収納することの出来るこの冷蔵室、今はまだ10人30日分程度しか備蓄できていないが、有事の際陛下達を暫く匿う分には問題ないだろう。




一通りの案内を終え、歓談室で一休みする。

一休みと言っても、軽い食事も飲み物もないのでは流石にあれなので、僭越ながら私の手料理を出させていただいた。


「この様な料理をこんな短時間で作り出せるとは流石はノエミ様ですわ」


なんて、カーラ様を初め全員にお褒めいただいたのだが、手料理と言っても、サンドイッチとスープとお茶だ。これくらい誰でも出来ますよと言いかけた時、この面子では誰一人料理を自分で作るなんて発想すら持たないであろうことを思い出す。

貧乏貴族であったがために、この場で振る舞うことが出来たことに感謝しつつも、同じ貴族として少し気恥ずかしくも有った……。


『料理なら僕も結構得意だよ。まぁ、漁師料理だけどね』


なんて事を言ってくれたカストに対して、妙な親近感を感じてしまった。



「ノエミ様、他の家族達はいつここに連れてこれるのでしょう?」


歓談のさなか。とは言っても、大半が陛下の質問攻めに費やされ。少々辟易し始めた頃カーラ様がそんな事を仰った。


「『ここはお前たちが追い詰められた時に身を隠せる場所だ。いくら家族とは言えお前たちは王族だ、現王と継承権1位を持つもの、それ以外にここを教える必要はねぇ。』」


止める間もなく、アデルがそんな言葉を言い放つ。

少しの沈黙の後、陛下は静かに「心遣い感謝する」と仰った。




アデルの言葉で訪れた何とも言えない空気。間違ったことは言っていないんだけど、少しは言葉を選んでほしい…。そんな空気を払拭するべく懸命に話題を探して口に出す。


「そう言えば、ジェズアルド様の名前って7代目勇者の剣聖ジェズアルド・ソルレンティーノと同じですけど何か関係があったりするんですか?」


苦し紛れに出てきた言葉はそんな言葉だ。別段ジェズアルドという名前自体珍しい訳では無いので、被ったといっても普通なら「あぁそう言えばそうだね」程度の話にしかならない…。


「お、おぉそれはの、我にも剣聖に憧れる気持ちは有っての、他国の勇者ゆえあまり上の子に付けるわけには行かなんだが、ずっと我が子にはその名を付けたいと思っておったのだ。」


流石は政治のトップと言った所だろうか。陛下は私の意図を汲み取って、率先して話題にのかってくださった。


「勇者と言えば先代の10代目勇者ニエト・エスピリディオン殿をご存知ですか?この方は勇者としては珍しく武器を持たず戦う方でして、騎士の端くれながらに、一人の男児としては我が身一つで戦われたニエト殿にロマンを感じます。」


「おぉ、ニエト殿な。確かに無手で挑み続けられた彼の冒険譚は心揺さぶられるものが有るの」


ジャン様も負けじと話題を広げてくださる


「へえ、素手で戦うって随分不利な気がしますけど、それで魔王を倒せたっていうのは凄いですね」(アデカス知ってた?)


『勿論知ってるよ、僕の後輩とも言える勇者達の事は出来る限り見守るようにしていたからね。と言うかノエミは知らなかったのかい?!』


そんな事を言うカストの目はあり得ない者を見るような眼をしていて、その眼に気が付いたとき、また余計なことを聞いてしまったと後悔する……。


(んー…歴代勇者はカストと剣聖って呼ばれてた人が居た頃くらいしか知らんわ……辛うじてニエトって名前に聞き覚えが有る程度かな…)


一応最低限の教育は受けたし、歴史の授業で習ったことは間違いないのだが、例の如く歴代勇者なんて興味が無かったので覚えていない……

ちなみに歴代魔王に至っては、アデルの名前しか覚えてなかった。

なんというか、伊邪那岐や伊邪那美の名前はしてっても歴代総理の名前までは覚えてない。私にとってはそんな感じだ…。

カストは深い溜め息と共に『まぁ、ノエミならしょうがないか…』なんて事をボソリと呟く。

何がしょうがないのか後でじっくり聞く必要がありそうだ。


「ニエト殿は魔王討伐に出られたまま戻ることは無かったとされているのでな、恐らくは相打ちに至ったのだろうと歴史学者の間では語られておるな。結果としては魔王討伐を成したと言えるのであろうが、やはり無手という事で苦戦されたのであろう。」


そう言えば陛下は歴史学者でもあられた筈だ。こういう話がお好きなんだろう、質問攻めは鳴りを潜めて、嬉々として話を進めてくださる。


「そう言えば魔王に負けてしまった勇者様も居られるんですよね?」


「うむ。殆どの勇者殿は相打ちか勝利しておるが、惜しくも敗れ去った勇者殿も居られるな。とは言え魔王も力を使い果たしておるのだろう、勝利を治めた魔王もその後悪さをする間もなく滅んでおる」


「へぇ~……あれ?ソレなら何故負けたって分かるんですか?」


「一応3名の勇者殿が敗北を期したとされておるが、何れの場合も魔王の手によって亡骸が届けられておるのだ」


「へぇ~、魔王と言っても意外と律儀なんですね」


「ハッハッハ、律儀か。物は言いようでは有るが、実際の所は勝ち誇り遺体を晒す為に置いておるだけであろう」


そんな感じで、気まずい空気は次第に払拭されていった。適度に場の空気が温まり、皆の表情は明るい。ただ一つの問題は、陛下の学者魂に完全に火がついて、カーラ様の静止が入るまで数時間に及ぶ歴史授業が始まってしまった事だろうか。


ブクマ登録ありがとうございます。

そんな暇があったら話進めろと怒られるかもしれませんが、

ほんの少し余裕が出来たので、(、、、)表記を(…)に変えてみる事にしました。

毎回 (てん)を変換して(…)を出して……

最近はIMEなんかが優秀なのですっかり忘れてましたね単語登録機能。

稚拙な文章で読みにくいとは思いますが、今後も宜しくおねがいします。



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