31話
ワイバーン討伐後、皆に持ち上げられるわ恥ずかしいわで。
すぐさま逃げ出そうと思ったが、カストに陛下に呼び出された内容をまだ聞いていない事を指摘され、逃げる様に王城に入った。
今思うとあのまま逃げていれば良かったんだろう。直に呼び出されるのも邪魔臭いと、横着したのが失敗だった。
いつもの様に謁見申請をして待合室に向かう途中、変な爺さんに絡まれた。
発声一言目から呼び捨てで、第一印象は最悪だ。
別に私自身、伯爵位は過ぎた物だと思っているし、皆にへつらって貰いたい訳じゃ無い。だけど、貰えてしまった以上私の肩書は伯爵で、この爺さんも私の事をノエミ・ザイラと呼んでいるのだから、私が何らかの爵位を持っている事は分かっているはずだ。
聞けば自身は公爵だと言っている、爵位に上下の差が有るとしても、何らかの敬称を付けて呼ぶのが大人の社会って奴じゃないかと思うわけだ。
更には黙ってついて来い発言。
用事があると言っても聞きやしない。
痴呆の化があるんじゃないかと本気で心配し始めた時に、ジェズ様が登場した。
どうにも苦手なジェズ様だけど、この瞬間は評価が鰻登った。
陛下の呼び出しを些事だと言ってのけた爺さんは、それをジェズ様に聞かれてたじろいでいる、切れるアデルを抑えるのは本当に大変だったので、問い詰められる爺さんを見て胸がすく。
「成るほど、探求に焦る余りに思わず出てしまった言葉であって、本心では無いと言う事ですか。安心しました。」
どれだけ爺さんを問い詰めるのかと楽しみにしていたのに、ジェズの奴…あっさりと納得してしまいやがった…。
そうじゃないだろうと視線を送るが、何を思ったのかにこやかに笑顔を返してきた。
やっぱりジェズ様との相性は最悪だ、この瞬間ジェス様の評価鰻は海の底に消えていった。
「さすがは聡明と名高いジェズアルド王子。ご理解いただけました様で幸いで御座います。良ければどうかご一緒に、この娘に世間の道理というものを教えてやって頂きたい。」
礼儀知らずに道理を説かれる覚えはないわ!
なんて言ってやろうと一歩前に踏み出した時、ジェズ様に肩を捕まれ阻まれた。
「ハハハ、そんな評価 お世辞にも貰った事ないけどね……。まあいいや、それでノエミは公の研究に協力してくれるつもりはあるのかな?」
「ありえへん。絶対にお断りです。」
爺さんをキッと精一杯睨みつけて全力で否定する。
たとえ上から目線でも、あから様に取り繕った礼儀でも、最低限の物の頼み方をされていれば協力することも少しは考えただろう。
だけど駄目だ、こんな態度を取られてまで協力出来るほど私は出来ちゃいない。
「なんじゃとこの小娘!異例の勲章を手にして陛下の覚えめでたいと勘違いしたか!!貴様の爵位ごとき私の言葉ひとつでいつでも剥奪出来るのだぞ!!」
「望むところやわ。そうなったら他国に渡ってひっそりと暮らせる道を探せるってもんで、心底清々するわ。」
真っ赤な顔で激昂する爺さんの言葉に、売り買いしたわけでも、強がりを行った訳でもない。アデカスにさえ出会っていなければ送れていたであろう平穏な日々に憧れる気持ちは今も尚持ち続けている。
『それは無理だろ』
『それは無理だね』
「ノエミ……それは無理だと思うよ?」
「………何やねん三人して…。」
ジェズ様が無理だと言った原因はアデカスの事だろうから納得できるが、当の問題児たちは口を揃えて『自分や身内の事に成ると途端に気の短くなるお前に平穏な暮らしは無理だ』と言う……お前ら自分の行い思い出してから言ってみろ…。
「この小娘が!下手に出ておればいい気になりおって。金輪際城門を潜れると思うなよ!!」
アデカスの発言に気を悪くしていた私に、爺さんが追い打ちをかけてくる。
「どこが下手に出てんねん!下手の意味理解してから口に出せ!それじゃあジェド様お世話になりました!この爺さんにどうこうされる前に爵位は私の方から返上させてもらいます。陛下によろしくお伝えくださいね!!!」
そんな風に投げ捨てるように言い放ち、歩き始める私の肩をジェズ様が再び掴む。
「待って!お願いだから待ってくれ。ここで君を行かせたら公が斬首されるだけならまだいいんだけども、絶対僕も怒られる。せめて陛下に会ってからにしてくれないかな?」
必死の様相で包み隠さず保身発言をするジェズ様が清々しくて、心の中で思わず(露骨すぎるやろ!)なんてツッコミを入れてしまい毒気を抜かれる。
「王子までもが何を世迷言をおっしゃるか。学問に縁のない王子には分からないかもしれませんが、私の偉業とこのような小娘を比べるまでもないと、陛下なら一喝されますぞ」
「うん確かに一喝するだろうね…でもクリオーネ公、斬首は言い過ぎだとしても公が今の地位を失うのは間違いないよ」
「愚かな。そのような事を仰っているから出来損ないの王子だと皆に言われるのですぞ……あっ……。」
「‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥(爺さん、穴掘り名人て呼んだるわ)」
「いったい何事か?!何時までもノエミが来ないからと探しに行かせた者が、とても口をはさめる雰囲気じゃなかったと泣きついてきよったではないか。」
さらなる墓穴を掘って焦る爺さんに、小さくガッツポーズを決めていると、今度は陛下がお見えになった。
「あ、陛下……」
お待たせして申し訳ございませんと言いかけた私を押しのけて、ジェズ様が慌てて陛下の前に向かう。
「陛下、私からご説明させて頂きます。」
恐らくは、私が爵位返上すると言い出すのを阻止したのだろうけど、毒気を抜かれた私としてはすっかり熱が冷めてしまった。
話す度に自ら墓穴を掘りまくる爺さんが、寧ろ可愛く見えてくる。
まぁ、協力は絶対せえへんけどね。
(返せと言われたら返すけど、もう自分から返上するとか言わないから安心してねジェズ様。)
チラチラと、私の様子を伺いながら陛下に成り行きを説明しているジェズ様に向かって、心の中でそう呟いておいた。
「フム…ダヴィデよ、一つはっきりと言っておくことが有る」
ジェズ様の話だけではなく、私と穴掘り名人からも直接話を聞いた陛下は少し考えられてから、そう仰った。
「ハッ、申し訳ございません。私の言葉一つで爵位を奪えるなどとは些か出過ぎた発言で御座いました。」
穴掘り名人は陛下の雰囲気から何かを感じ取ったのか、陛下の言葉を待たずして陛下に深く頭を下げた。
「フム。そのとおりであるな。だが良いか?もしもノエミがそなたの爵位剥奪を望むなら我はそれを無下には出来ぬ。」
「‥‥‥‥?」
微妙なこの間が穴掘り名人のキョトンとした顔を想像させる。
「何を陛下!ご乱心なされたか?!!」
陛下の突飛もない言葉に穴掘り名人は驚き、また暴言を口に出す。
陛下の私の持ち上げ方に節操がないなと若干引いていたら、何故かジェズ様の顔が勝ち誇っていた。
「乱心ではない。その程までにノエミの存在は我が国に無くてはならない者なのだ。そなたの研究の成果は認めるが、たまには表へ出て世間の道理を学が良い。」
陛下はそう言うと、私とジェズ様を引き連れてそのまま王宮に戻られる。
これでもかとコテンパンにされて、1人取り残されて呆然とする穴掘り名人の姿がちょっと気の毒に思えてしまう。
まぁ、陛下を乱心扱いした事をスルーされて良かったねと、心の中で親指を立てておいた。
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忘れられてしまう前になんとか更新頻度で返そうと、少しでも書き溜め出来るよう頑張っている次第です。
稚拙な文章で読みにくいとは思いますが、今後も宜しくおねがいします。




