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23話

運ばれてきた料理を丸いテーブルに並べ、私とチェリオは向かい合って椅子に座り夕食を食べながら話を続ける。


ほんへ(ほんで)ほにゃには(ボニャには)なにひにきたん(何しに来たん)?」


「お前、腹の音気にするんやったら、そういうとこも気にせーよ…」


サラダを頬張りながら話す私にチェリオが言った。


「ん゛ん……しゃーないやん誰かと違ってお腹空いてるんやし。それに家族の前で今更何を気取れ言うねんな。」


食事を飲み込み軽く咳払いして答える。


『ノエミ、僕達が居るのも忘れてないかい?』


(忘れるか!あんたらなんかそれ以上やんか。プライバシー皆無のこの状況で気取ってたら、息するだけで疲れるわ…。)


「ん?どした?……虫でもいたか?」


思わずカストの方に振り返った私を見てチェリオが首を傾げた。


「あ…あぁ何でもないよ。ほんで結局この街で何してるん?」


強引に話題を変えて誤魔化していく。


「あぁ……実は支店任されるための条件に絡んどってな、ダメモトで聞いてみるけど………ノエミ。クローチェにコネとかあらへんよな?」


(コネ?コネと言って良いかは知らんけど、領主なら知ってるよ……私やもん。)


何て事を頭の中で考えて、チェリオにばれない程度にニマリと笑う。

再会したときから思ってたけど、チェリオの奴、私が叙勲した事を知らない様子だ。

面白そうなので今はあえて黙っておこう。


「クローチェになんか用事あるん?」


「いや、俺が任される予定の店が、クローチェ支店になる予定やねん。その出店の交渉なんか一切合切を自力で熟すっていうのが条件なんやけど………調べてみたら、出店はとっくに締め切られて門前払いやし、露天ですらも順番待ちでどないにもならへん……。しゃーなしでこの街戻ってきて、なんか取っ掛かりがないか探し回ってるんや」


店舗に関しては優遇策の一つとして現在は初期誘致に応じてくれた店と、そこからの紹介された一部の店に制限している。露天も乱立すれば価格破壊に繋がるだけだとアルホさんに言われ、3日単位で営業許可を出す形で数を調整していた。


「なるほどね、言うてもそんなんすぐ見つかるもんなん?あとチェリオ、話していく度に訛りが全開していってんで。」


「あぁ、、ホンマやな。せっかく治ってたのに同郷の言葉聞いたら伝染(うつ)るわやっぱ。ほんでな、そんな簡単に見つかってたらお前にまで聞かへんて…。」


「治ってたって、何処がやな!私の名前呼んだときからマテラ弁全開やんか!ちゅうか、コネ見つからへんかったらどーするん?」


マテラというのは私達の故郷の村の名前で、その辺りで話される方言をマテラ弁と呼んでいる。

伝染ったなんて言うが、私の言葉はかなり標準語寄りになっているのでそんなはずはなく、色々突っ込んでやりたいが、方言の違和感なんて自分では中々気が付かないものだ。

チェリオは鼻で笑って流しているが、私も聞いていて懐かしいのでソレは置いておいて話を進める。


「期限は決められてへんし、可能な限り粘るつもりや。クローチェの受け入れ枠も増えるかもしれんしな。せやけどまぁ…実際3ヶ月位が限界やろな……。」


「後三ヶ月?」


「準備にかけれる時間が三ヶ月や」


「今何ヶ月目なん?」


「2ヶ月ちょっと過ぎたとこや…。」


「あかんやん…」


「あかん言うなや!!!」


「言うな言うてもあかんやろ?何か手はあるん?」


「明日からまたクローチェいって土下座する!護衛の冒険者も雇ってきた!!」


「………情けないほど絶望的な案を自信満々で言いなや…」


「喧しいわ…………しゃーないやんけ、実際もうソレしか手があらへんねんから…。」


初めに比べれば見る影もないほどシオシオに萎んだチェリオが、椅子に深く持たれて天井を仰ぐ。


「しゃーないな、それわたしも着いてくわ。クローチェの食堂に友達居るし聞いてみたる」


「マジか!!そんなん早よゆえや!ってかノエミ今何してるんや??」


ただ単に食堂に知り合いが居ると言っただけなのにチェリオはテーブルを叩いて立ち上がった。普通に考えれば食堂から出店許可が繋がるとはとても思えないが、それだけ切羽詰まっていたんだろう。

その後は、わたしの家出の動機なんかから現状までを、話せる分だけ説明していった。

チェリオは兄弟の中で誰よりも気があったので常に一緒にいた、認めるのは少し癪だけど、チェリオが家を出た時は大好きな兄が居なくなったと人知れず泣いたりもした。

泣いた話は絶対知られてはならないが、再会を喜ぶ気持ちは隠せない。

話しだした言葉は止まることを知らずにどーでもいい事からくだらない事まで話し続けた。






「ノエミ起きろ。そろそろ出発するぞ」


「ん~…カストもうちょい寝かせてぇな…」


昨日はあのまま話し込んでいて、気つけば空が白みかけていた。

仕方なく、急遽チェリオのベットを奪って寝たはずなんだけど、全く寝た気がしない。


「ん?カストってなんや??………ノエミ!まさか男おるんか?!!!」


そんなチェリオの叫びでハッと目が覚めた。

やばい、完全に寝ぼけてた。

早々弄る気満々の目がウザイ。


「ちゃうちゃう、ちょっと寝ぼけただけや、そんなん良いからはよ行くで」


平静を装いながら、ベットから起き上がり衣服を正す。


「なんや、照れんなよ。別にお前の事やし男出着てても不思議やないやんけ」


どういう意味かわからないが、不思議じゃなくてもそれをネタに遊ぶ気なのは良く分かる。居もしない架空の彼氏で弄られるのは真っ平御免だ。

架空と言われてカストが少し凹んでいるが、彼氏のカストは存在しないので架空と言って間違いない。


寝ぼけただけ(・・・・・・)!その意味が分からへんねやったら紹介はやめる!」


「うわ!せけぇ!!」


そんな兄弟のやり取りを、アデカスがまるで孫でも見るかのような視線で見ていて、途端気恥ずかしくなった…。





慌ただしく準備を済まして宿をでる。大きな荷物を担ぐチェリオに続いて街を歩き、門を出た所でチェリオはキョロキョロと辺りを見回した。


「お、いたいた。ラウロさーん」


チェリオは手を振りながら冒険者らしき3人組に向かって歩いていくと、それに気づいた冒険者が大きく手を振り返した。


チェリオとラウロさんは昨日のうちに顔合わせは済んでいたようで、残りの2人の紹介から始まった。

続いてチェリオが、二人になった事を告げ、背中で隠れる私を押し出した。


「こっちがその妹のノエミです。一応冒険者なんですが、薬草採取しかしていないらしくて。護衛対象として頂けると助かります」


「おぉ。ソレは問題ないが…ノエミ様…」

                「ラウロさあぁぁぁん!お久しぶりです!!」


様付けされかけた声を懸命にかき消し、そのまま腰に抱きついてチェリオに背を向けさせる。


「公の場以外では冒険者として扱ってって頼みましたよね?!」


ラウロさんの身体を盾にしてヒソヒソと話しかける。


「ソレはそうだが、ノエミさ…んの場合冒険者としてもSSランクじゃないですますか」


「いやいや、使えへん敬語使わんでいいから!取り敢えず今はFランク冒険者の体でザックバランにお願いします!」


「お前が良いなら、楽でいいけどよ…Fランクってまたえらい詐称だな…」



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