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20話

「え~っと‥‥‥ノエミ。気を悪くしないで聞いてほしいんだけど良いかな?」


ジェズ様が港に近い街の南門の前で立ち止まってそう言った。


「はい?何でしょうか?」


「この城壁はアレかな?将来的に独立でも目論んで居るんだろうか?」


「あ~…そんな風にも見えますよねぇ……」


街を囲む外壁の前には深い空堀が掘られ、石材が不足しているので大半がまだ土を固めただけの状態だが、それでも10メート近い高さがあり、その奥に見える完成した石積みの外壁は更に倍近い高さでそびえ立っている。

『城壁の高さはその国の国力だ』なんていうアデル理論の元に建てられた外壁は、対攻城戦を想定した不落の壁なんだそうだ。

『高ランクの魔物を阻むなら、これくらいの備えは必要だよ』なんてカストの言葉に乗せられたけど、やっぱり見る人が見れば野望の塊に見えるんだろう。

事実、私はアデルに野望がないと断言出来る自信がない。


「一応、周囲の魔物から街を守るためと頑張ったら、こんな形に…」


そんな苦しい言い訳を言ってみる。


「成る程、確かにAランクの魔物を阻むならこれくらいの壁は必要そうだね」


そんなジェズ様の言葉を聞いて、後ろを歩くマルディや、木工職人達が「え?Aランク?!」なんて呟きながら、ドヨドヨしてる。


「ザイラ伯、私もよろしいでしょうか…?」


そう言っておずおずと手を上げるのは、武官のエラズモさんだ。


「ノエミと呼んで下さい。どうされましたか?」


「それではノエミ様、あの魔物たちは大丈夫なのでしょうか…?」


エラズモさんが指差す先では今日も元気にゴーレム達が労働に勤しんでいる。

私としてはアデルが召喚したんだと正直に言いたいんだけど、陛下からアデカスの事は他言しないよう言われている。カストは兎も角、アデルが現存していると話が広がれば、無駄に国民を不安にさせると言われたからだ。

最近忘れがちだけど、これでも伝説の魔王なんだよね…。


それならカストの仕業にすれば良いのだけど、カストが魔法を使えないのは神話の中でも語られていて、後々辻褄が合わなく成りそうなので止められた。

なので仕方なく、


「私が召喚魔法で作り出したゴーレムなので安全ですよ」


と言うしか無くなってしまった。




それからジェズ様は4日程この街に滞在されて、隅々まで見て回られた。

完成した街道を通って50人ほどの兵の一団が迎えに来ると、


「それじゃあノエミ、ウベルティに来た際はぜひ僕を訪ねてくれ」


「分かりましたジェズさ……ジェズ。」


敬称をつけかけた私に、ビッと掌を向けて制止し、呼び直したら満足気に笑って馬車を走らせた。

ホント何がしたいのかわからない。



「本当に良かったんですか?何なら私から陛下に進言しますよ??」


ジェズ様を見送ったあと、横に並ぶ文官、武官の四人に声をかける。

聞けばこの四人、将来を有望視された非常に優秀な人達らしい。

それが、陛下の懐柔策に巻き込まれて、こんな辺境に飛ばされてしまっている。

お前せいだと責められても困るんだけど、謝らずにはいられない。


「ノエミ様、何か思い違いをされているようですが、私達は激しい争奪戦の末この任務を得たのですよ?」


女性騎士のニルデさんが予想外の言葉を発した。


「え?どういうことです?」


「敢えて喧伝(けんでん)することは陛下の令で止められておりますが、王城に詰める者たちにはSSランクの実力者が現れたと誰もが噂しております。その様な猛者の技を間近で学ぶことの出来るチャンスを誰もが欲し、王国騎士団長ですら手を挙げられたほどです。かく言う私達も千人長の座を退いてここにまいりました。幸運と思いこそすれ不満など微塵もございません。」


「我々も動機こそ違いますが、多くの者と争いこの地に来ることが出来ました。新領地などこの数百年建てらていないため、まっさらな地に自分たちの手で街を作り上げるのは多くの文官の夢なのですよ」


ニルデさんに続いて文官のアルホさんまでもがそう言って熱く語ってくれた。


「そ…そうなんですか……。えっとそれではお言葉に甘えてこれからよろしくおねがいします」






それからは二週間に一度の頻度でアメリゴさんが石材や食料などを運んでくれた。

5度目の船が到着した頃には殆の外壁が完成していた。

ゴーレム達が新しい採石場を発見してくれたので本来ならもっと早くに外壁が完成していたのだけど、アデカスが10階建てマンションの建設を優先したりして工事が遅れてしまった。


そして7度目の船がついた頃には、誘致に応じてくれた商人たちも続々この街で店を構えだし、その商人たちの護衛で訪れた冒険者の中にそのままこの街を拠点に活動を始める人が居たりして、僅かながらも賑わい始めていた。


「ノエミ様、国王陛下より至急来城してほしいと言付けを預かっております。どうか帰りの便に御同船頂けませんか?」


リーアさんと共に荷受けをしていると海運商のアメリゴさんが話しかけてきた。


「至急ですか…?了解しました、急ぎなら自分で移動したほうが早いので、お気持ちだけ頂戴します」


「そ…そうですか。流石はノエミ様です」


何が流石なのか知らないが、アメリゴさんの顔は若干引きずっていた。


『ノエミ大丈夫なのかい?』


(ん?何が??)


『この街から海路より早くウベルティに到着する手段なんて、普通は存在しないよ?』


(あ………。)


迂闊すぎる自分を恨むが、吐いた言葉は帰らない。

しかし、カストの言葉からすると、アメリゴさんの流石という言葉にどんな想像がなされたのか、非常に気になる…。




「そういう訳で、少しの間クローチェを離れます、出来るだけ早く戻りますので留守をお願いします。」


夜、領主邸兼政務所と成っている私の自宅で4人を集めて報告する。


「それならば私達もお供いたします」


そう言って立ち上がるのは武官の二人、エラズモさんとニルデさんだ。


「有難うございます、でもお二人には街を守って頂かなくてはいけませんので…。」


アデルが土塊人形と呼ぶサンドゴーレムの数を減らし、新たに岩石人形ストーンゴーレムを100体召喚してある。

ストーンゴーレムはサンドゴーレムよりも戦闘に特化していて、Bランク程度の魔物なら対等に戦うことが出来るが、如何せん目の前の敵を殴るだけなので敵の数が増えると簡単に突破を許してしまう。

そこで、武官の二人にストーンゴーレムの指揮権を与え町の防衛に当てていた。


「十分な体制が整っていない今はお二人だけが頼りなんです。どうかお願いします」


「……、わかりました。ノエミ様がお留守の間、我々の命に代えましてもこの街と領民をお守りします」



そんな少し重い誓いをしてくれた二人に街を託して、私は皆が寝静まった頃、首都に向けて飛び立った。


評価及びブクマ有難うございます。

話数<ブクマ数というのは初めての経験で、「100話あたりで100件ついたらいいなぁ」なんて欲が少し湧いてしまいます。

稚拙な文章で読みにくいとは思いますが、今後も生温くおねがいします。

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