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16話

その後、懲りないゲスメンに絡まれるのを恐れ、しばらくボニャには行かないようにして秘密基地で数日すごした。

その間に港の工事が終わり、陛下から頼まれた建築物は、内装を除いてすべて完成したので、報告のためにウベルティへと飛ぶ。



王城に着くと直ぐに謁見申請を出し、待合室で待機。早朝にも関わらずそこには20人以上が既に待機していて、長期戦を覚悟しながら開いてるソファーに腰をを下ろす。

外で時間を潰すことも可能だが、「不在の間に順序が来れば、処罰こそ無いが二度と謁見許可は出ない」なんて噂が流れているので怖くて出れない。

出された紅茶に手を伸ばすと、謁見室の扉が開き、誰かが出て来た。

それと同時に名前が呼ばれる。


「ノエミ・ザイラ伯爵様。どうぞお入り下さい」


「え?」


思わず自分で自分を指差す。同時に先約だったはずの人たちの視線が突き刺さる。

特別扱いには憧てたけど、実際受けるといたたまれない。



「おぉ、よく来たノエミ。今日はどうした?」


明らかにテンション高めの陛下が、私の挨拶を待たずに壇上から声をかけられた。

お忍び中とかならともかく、ここでそれは止めてほしい。

ほら、周りもザワザワ言ってるし、、、、。


「はい。陛下が依頼なされた施設類の建設が終わりましたので、今日はその報告にまいりました…。」


こうなればとっとと済まして立ち去ろうと、簡潔に用件だけを伝えて逃げ出した。


次に王城から王宮へと移動して、衛兵にカーラ様へ面会を希望する。


「おはようございますノエミ様、カーラ様は自室でおくつろぎ中です。いつでも通すよう言付かっておりますので、このままお進み下さい。」


ここまで特別視されると、懐柔の意志がミエミエ過ぎて、逆に警戒したく成る私は歪んでるんだろうか…。



「まぁ、今日は忘れず立ち寄って下さったのですね」


カーラ様の部屋を訪れると、開口一番チクリと言われた。

以前この街に買い物に来て、そのまま帰ろうとしたところ、カーラ様付きの近衛兵に連行された。「黙って帰るなんて酷いですわ」なんて言うカーラ様の言葉から察するに、私が街に入れば連絡が行くようになってたんだろう。

そんな事があったため、首都に立ち寄った際は用がなくてもカーラ様を尋ねる事が義務に成った。


カーラ様の皮肉っぽい挨拶を受け流し、相談事を持ちかける。

世話好きのカーラ様の機嫌をとるにはこれが一番なんだと、以前クレオさんに教えてもらった。

相談と言う名のご機嫌取りは、石材購入の件と私の領地に商人を誘致出来ないかと言う内容だ。


「なるほど、そういう事でしたら私からも商業ギルドに一筆書きますわ」


王家にもカーラ様にも御用達の商人は居るが、公平な取引の機会を守るため、原則直接の紹介はしないらしい。カーラ様に頂いた手紙にも、「後継人は王家だから舐めるなよ?」みたいなことが遠回しに書かれているだけだった。

その後はご機嫌になったカーラ様と世間話で盛り上がり、昼食を共に頂いて王城を後にする。


カーラ様にお借りした案内人と共に商業ギルドに到着すると、既に面会の手続きは終わっていたらしく、直ぐに商業ギルドマスターと面会することが出来た。

名前をコルンバーノ・クリッパといい子爵位を持ってるらしい。片眼鏡とカイゼル髭のよく似合うナイスミドルだ。


簡単な挨拶を交わして、海運が出来る石材商家と誘致に応じてくれそうな商家の紹介をお願いすると、すぐに幾つかの商家に紹介状を書いてくれた。


意外なことに、この世界にはまだ誘致という概念が無かったらしい。

本来街とは自然に人が集まった末に出来るものだし、人為的に開発された場合でも工夫(こうふ)が集まるから、自然と商人が集まり市が立つ。

経済都市がまだまだ未発達なこの世界には、今まで必要なかったんだろう。


「成る程、税制などの優遇により経営規模の大きな商人を招き入れて地区経済の活性化を図ると、いやぁ実に面白い発想です。」


そんなふうにコルンバーノさんは、思いの外誘致に手応えを感じてくれたようで、直ぐに具体的な優遇処置の設定をしましょうと知恵を貸してくれた。


商業ギルドで随分時間を使ってしまったので、私は急いで工業ギルドに向かい、内装業者の手配を依頼する。

どれくらいの規模をどれくらいの期間でドコまでやるか聞かれたが、私に答えられる知識が有るはずもなく、アデカスに話を振っても、抽象的すぎて要領を得ない。

一先ず、10人ほどの木工職人を手配してもらえるようお願いしておいた。




(後は街道が完成したら一段落かな?)


夜空を飛びながら、最低限の責任は果たしたと満足する。

実際のところは、街道が完成しても警備なんかの問題が残ってる。

ボニャまで続く街道は、トルネロの森でも最も弱い魔物の生息域を選んで通してるが、弱いと言ってもCランクだ。魔物が人工物を嫌う習性を考慮しても、他の街道に比べたら安全には程遠い。

一応アデカスが過去の記憶を思い出しながら、魔物除けや、結界の魔道具を再現しようと頑張ってくれてるが、未だ材料すらも判明していないのでまだまだ先になるだろう。

揚げ足を取るようで申し訳ないが、街道の安全確保までは依頼されてないし、私兵すら持たない新参領主には荷が重い。しばらくは海路のみで我慢してもらおう。



そう思ったところで私のお腹がグーと鳴った、そう言えばまだ夕食を食べてない。


(アデルごめん、ボニャよってご飯食べたい)


『はぁ?しょうがねぇなぁ…』


(しゃーないやん、御飯食べる時間なかったんやから)


ぶつぶつと文句を言うアデルにグチグチと文句を言いながら、進路を変えてボニャの郊外に降り立った。

トルネロの森に隣接するこの街は、街の規模に似合わない強固な壁で覆われているが、街の門が閉じられることはない。不規則な生活を送る冒険者たちで成り立つこの街独特の習慣だ。

そのため、街にある様々な店舗も一日中どこかしらの店が開いているので、非常に助かっている。

徒歩で門をくぐり、街に入る。マルディの店を目指して歩いていると、何やら人が集まっていて騒がしい。

こんな時間に何だろうと、集まる人を掻き分けて中に入ると、マルディの食堂が倒壊していた。


「ちょっと、マルディどーしたんこれ!大将、女将さん大丈夫??!」


倒壊した店の前でへたり込む、マルディ一家に声を掛ける。


「あぁ、いらっしゃいノエミ。でもごめんね、今日は出せるご飯無くなっちゃったよ」


そんな気丈な言葉を吐き出してから、マルディは私の胸に顔を埋めて、声を殺しながら泣き出した。


「ちょっとちょっと、ほんまに何があったんよ」


泣き崩れるマルディを抱きしめながら、あたりを見回すと、先日この食堂で相席した筋骨隆々の冒険者が近づいてきた。たしかラウロって名だったと思う。


「よう…。この前の男…覚えてるだろ?…」


そう切り出してラウロは事のあらましを話してくれた。

この前のゲスメンは再び店にやってきて、いきなりマルディの腕を掴み連れ出そうとしたらしい。「お前のせいで僕が恥をかいた責任を取れ」なんて叫びながら、抵抗するマルディを殴り倒し、髪を掴み引摺り出そうとしたところで、居合わせたラウロを始めとする10人ほどの冒険者で取り囲んだそうだ。

ゲスメンはそれでようやくマルディから手を離したものの、今度は取り囲んだ冒険者に殴りかかると、次々に一撃で倒していった。

その頃には完全に言動がおかしく成っていて、店の人間を全て殴り倒した後も止まること無く暴れ続け、最後には店を倒壊するまで破壊してしまったようだ。


「すまん、たった一人に好きなようにさせてしまって…」


「『そいつは何処に行った!!!』」


話を聞き終えた途端カストは怒りを顕に声を上げる。


(コラ私のセリフ取るな!)


「追っても無駄だ。アイツが立ち去ってからもう2時間は立っている」


「『くっ…すまないあのとき僕がしっかりと倒しておけば…』」


さめざめと泣き続けるマルディをギュッと抱きしめる。


(カスト、皆に回復お願い…。)


よく見れば、多くの冒険者たちが傷を負っている。脱出が間に合わず倒壊に巻き込まれた者も多く居て、ようやく全員を救出したそうだ。

それぞれのポーションや回復魔法で治療されているようなので命に別状はないだろうが、数日は痛みが残るだろう。


「『マウロ、傷を負ったものを集めてくれないか?僕の回復魔法で跡形もなく傷を消し去ってみせる。』」


「嬢ちゃんスゲーな、回復魔法が使えるのか。でもそこは心配すんな、皆それぞれ治療は済んでいる、重症と言えるようなやつも居ないから安心してくれ。」


「『いや、こんな事で皆に傷を残すのが僕達には耐えられないんだ。勝手なことを言うけど治療させてくれないか』」


そうしてカストは倒壊に巻き込まれた者も含めて、20人以上を治療した。


「『ほら、マルディ君も…』」


最後になったが、胸に抱いたマルディを離し顔を覗き込む。


「『くっ…』」


マルディの頬は大きく腫れ、鼻は曲がり、奥歯も折れ飛んでしまっているようだった。



マルディの傷を完全に癒やした後、カストと私は交代する。


「…ごめんねマルディ。私が中途半端な事をしたばっかりに…」


「違うよノエミ、あの時はノエミが助けてくれなかったら私が引っ叩いてたもん。それに比べればこれくらい…」

     

「そうだノエミさん、あの時は俺も我慢の限界だった、平民が貴族様に歯向かった時点でいづれこうなってたんだ。そんな気負わないでくれ。」


「そうよ、マルディを助けてくれた貴方が恥じることなんてなにもないんだから。私達は貴方に感謝しかしてないわ」


少し落ち着きを取り戻した、マルディ一家は揃って私に気にするなと言ってくれる。


「…これからどうするんですか…?」


「そうだな………先ずは風呂に入りたいな。店は綺麗に掃除してたつもりだが、すっかり埃だらけに成っちまった」


「ほんとね、次からはもっと隅々まで掃除しないと駄目ねぇ」


「やだな父さん母さん、ノエミはそんな事聞いてるんじゃないでしょ、アハハハハ。」


そんな風に明るく振る舞うマルディ達は、けして強いわけじゃない。家も店も財産も失って、出来ることは空元気でも笑う事だけなんだろう。


「親父さん、実は私国王陛下から領地を任されてるの、酷い辺境の田舎でマダマダ何んもないようなところやねんけど、よかったらそこでまたお店してくれへんかな?」


「領地って、え?いや…しかし…」


親父さんは明らかに、私が領地を持っていることに驚いてる、皆の前で伯爵位だと言ったはずなのに、聞こえてなかったのかな?


「えぇぇ、ノエミって貴族だったの?!すごーい!!」


「これ、ノエミ様でしょ」


マルディまでそんな事を言って女将さんに頭を叩かれている、マルディ真横に居たよね???

どうやらまるきり信じてもらって無かったようで、後ろに居たマウロ達もザワザワしてた。


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