顔合わせ
三話目のつもり。恐らくほかの小説での第入部分の終わり。まだ全然主題には入ってないつもり。目に付いたらどうぞ。
「ママ?おでかけ?」
誰だかわからないがとても幼い少女の声が聞こえる。
周りの風景はとてもおぼろげだった。
この光景を知ってる気がする。わからない。これは本当に自分の記憶なのだろうか。
少女の母らしい人物は少女に背を向けたまま立ち上がりこちらを向かない。
やっとこっちを―――
「ん?」
どこだろうここは。記憶がはっきりしていないのもあり状況判断が追い付かない。
私の記憶が正しければ森の中で気を失い倒れてしまったはずなのだが屋内にいるとはどういうことだ。
その部屋を見る限り、絵にかいたようなファンタジーの木造部屋のようで、私が寝ているこのベッドの真正面にはドアがあり後ろと横の壁には外を見渡すための窓がある。他には本棚と思わしきものと衣服が乗っている小さなテーブル、そして私が寝ていたベッドがとても大きいことに加えて私の記憶と違う服を着ていることに気づく。さらに、テーブルの上にあるのは私が着ていたはずのものであるということもだ。
ここまでの事があって誰かが私の事をかくまってくれていると察することができた。なんとものんきなことだ。
せっかくなので窓を開け外を見よう。
驚いた。どの方角を見ても一面森であるとしか言いようがない。いくら何でも山が一つも見えないというのは衝撃だ。
流石に奇妙なのでまだ見ていない方角を見ようと部屋から出る。
早朝だからか少し肌寒く光が青白かった。
(何処かよさそうな場所は…)
部屋を出て少し開けたスペースがあった。真ん中には下に降りるための階段、向かい側にはドアがあった。意味があるのか分からないがそのドアには"closed"と書いてある板が掛けられていた。
恐らく中に人がいるのだろうと思い、今は早朝なので起こすのは申し訳ないと、一回へ降りるため階段のところへ戻る。
戻ろうと思ったのだ。
そこには人がいた。
ああ、紛れもなく人だろう。
だが人にしては貫禄がある。私と同じくらいかそれよりも少し幼いぐらいの見た目で放たれるそれに人とは違うものを感じずにはいられない。
言葉が出ない。五日間ほど野宿をしていたのも相まって開いた口が塞がらない。
パニックに陥っていた矢先、
おはよう
とても穏やかな口調で目の前の彼女は言を発した。
「お、おはようございます!」
とても驚いたのでそう返すしかなかったのだろう。
頭を深々と下げる。
謎の間を作ってしまった…どうしよう。
「ほらほら、顔をあげて、」
とても楽しそうに、
「人の客人なんて久々なんだ、色々と話もしたいし、キミも何かあってここに来たんだろう?こんな所に偶然で来れる、なんてことはないからね。さあさあ入ってくれ。ちょっとしたお茶会だ。」
...対応の素晴らしさに心奪われつつも、言いたい事が山程あるのも事実。だから今は二人だけのお茶会を楽しもうと思った。