31『虫・虫・昆虫』
なんとか1時間前に書き上がったぞ
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飛んでくる虫を【識別】! しかし、反応しない、ここでrank:B以上とか来たら対応なんて出来るわけないぞ!? チラッとクモのゲージを見たら、あれだけ皆が攻撃したのにまだ9割も残ってるんだよ!? クモだけでも手に負えないのにムカデまで来てこっちはもう絶望的なんだよ。そのムカデも【識別】したらこれだよ。
【ハイポイズンセンチビート】対応rank:C
『猛毒を持った巨大な百足
麻痺、睡眠、ダメージ毒の3種類をを使いこなす』
毒を受ける前にあの大きすぎる顎に噛まれて終わりな気がしてならないよ!? 一体どうしたら!?
そんな事を考えている内に虫が更に近付いて来て姿が鮮明になってきた、雨で濡れながらも微かに輝く黒い体、頑強そうな6本の脚、そして頭部から伸びる2本の触角、ではなくツノ、あれは、クワガタか!
飛んできたクワガタは馬車、ではなく馬車の上で争うクモとムカデのムカデの方に向かって大きな角(顎?)を広げて突撃。そのままムカデを角に引っ掛け馬車から引き剥がした。
ムカデが空に上っていくのを遠目にイアンが尋ねた。
「え~と、どういう事だ?」
イアンの問いは全員が思っている事だ、当然その答えは誰も持っていない。
そんな中、俺のかわりに手綱を握っていたアンク君が提案する。
「さあ? とにかくクモを何とかしましょう」
「でもどうするッスか? 倒せそうにないッスよ」
『とにかく、馬車から離れて貰いましょう、この脚を見てるだけで気持ち悪いです』
『私、虫は平気な方だけど、これはちょっと』
『とりあえず攻撃は続行でいいのね!? じゃあガンガンいくわよ!』
2階から甲高い金属音が聞こえてくる、これは固くて攻撃が弾かれてる音じゃないかな? 1階の男性陣もまともにダメージが入ってそうなのはイアンの大斧だけみたいだし、やっぱりこのままじゃダメだ。でもどうすれば? そんな時にクロウは告げる。
「! この動きは、さっきのクワガタ戻ってきたッス!」
「出来ればさっきみたいにクモをどかしてくれねぇかな?」
「だったら、いいんですけど」
『ボーッとしてないでさっさと攻撃しなさい男共!! クモは張り付いたままなのよ!?』
『そうです、その通りです! 皆さん早くこれを退かしましょう!』
そうは言ってもどういう訳かクモは馬車に張り付いたまま動かないし、【気配察知】で確認するとクワガタも馬車の周りを飛ぶばかりで何もしてこない。馬車もなんか変な音してるし、ガガ達も苦しそうに走ってるし早く何とかしないと。しかし、どうすれば? とりあえず、
「アンク君、交代」
「はい、まぁ、ほんとに持ってただけですけど」
「それでいいんだよ、持ってるだけでもガガ達が安心するから、それとウォーターソードを渡しておくね、壊しちゃっても良いから」
「ありがとうございます、それじゃ攻撃に参加してきますね」
手綱を握りアンク君を後ろに送り改めて頭上を飛び回るクワガタを見ながら思う。何故クワガタはムカデを攻撃してこちらには攻撃してこない? 何か理由があるのか? この硬直状態を考えればあるんだろうけど、それは何だ?
「なあ、皆」
「何だジン!? 今は皆忙しいぞ!」
「じゃあ攻撃しながらでいいから聞いてくれ、どうしてクモは馬車に攻撃できてクワガタは出来ないと思う?」
「どうしてってそりゃあ……何でだ? クロウ!」
「えっ!? おいらッスか!?」
「情報担当、だろうが!」
「それは、そうッスけど、それは分からないッス」
『あの、さっきカンナさんが言った虫と昆虫の話が正解だと私は思います』
戦闘しながらだからか少々歯切れが悪く話をするイアンとクロウの会話に、2階にいるキキから回答が来た。
虫と昆虫、些細な差だけどそれが【CWO】でどういう設定になってるかなんてプレイヤーには分からない。だからこそどんな意見にも話を耳を傾けるべきと話を促す。
「続けて! 出来れば具体的に」
『クモには【虫除けのお香】が効かなくて、クワガタには効いてるんじゃないですか? だからあれ以上近寄れないんだと思うんです!』
「つまり原因は」
「これって事だな」
俺達は御者台の屋根の両端ぶら下がるお香を見る、他の皆の攻撃音が止んでるから皆も馬車の後ろに取り付けられたお香を見ているのかも。
そして俺はミツミツハニーを売っていたおじさんの話をようやく思い出した。だから、提案する内容はもちろん。
「お香、捨てよう」
「確かにこの膠着状態を何とかするにはそれしかない気がするな」
『何言ってるんですか!? そんな事したら虫が寄ってくるじゃないですか!? 断固反対です!!』
「その虫に絶賛襲われてる最中ですけどね!」
『それは、そうですけど、あ、あれが味方だとは限らないじゃないですか! クモではなく馬車を襲われたら私達ではどうする事も出来ないですよ!?』
「確かに、そのあたりどうなんだ?」
ネリネさんの言うことはもっともだ、あの人、普通に考える時はまともなんだよな、ジロウも気にしてるみたいだ。しかし、俺には情報がある、おじさんから貰った貴重な情報が、
「あの町には守護獣、いや守護虫と呼ぶべき虫がいる、多分あのクワガタはその1体だ。どうしてここに来たのかは分からないけど、今はアイツがそうだと信じるしかない、と俺は思ってる。どっちにしろ、このままだと馬車が壊されて森に放り出される結末が待ってるだけだ、だったら俺はアイツに賭ける」
俺の情報と思いは全て告げた、あとは皆がどう出るか、こればっかりは俺にはどうしようも出来ないしな。
少しの沈黙、そんな中最初に口を開いたのは大斧で脚を外に押し出したイアンだ。
「……OK、その賭け俺も乗った! 皆はどうだ?」
「僕もいいですよ、僕の槍じゃクモに傷1つ付けられないですしね」
「右に同じです」
「それなりの理由があるなら俺も問題ない」
「俺の矢なんて役立たずも同然みたいですし、こっちも賛成です」
「おいらもOKッス、この森で徒歩なんてゴメンですし」
『そういう一か八かの賭け私大好き! もちろん乗るわ!!』
『ビウムちゃんが~、そういうなら私も~』
『私も乗るわ“女は度胸”って言うしね』
『私もOK!』
『レキちゃんがそういうなら私も』
ここまでが賛成を示したメンバー、そして反対意見はアヤメさんとネリネさんの2人だ。
『私は反対、クワガタが本当に味方って完全な確証が無いなら、このままクモに抵抗を続けて離れるまで粘るべきよ』
『私はもちろん断固反対です、お香を捨てるなんて自殺行為、進んで賛成する気はありません!』
2人はそう言った、しかし、
『こう言う時は多数決! それが【春夏秋冬】でしょ! ってことだから皆外しちゃって!!』
「よし! クロウはクワガタを見てろ! ジンは前のヤツを外してくれ! アンク、ユキムラは後ろだ! 外したら外に投げ捨てろ! ジロウは俺と一緒にクモに攻撃続行! 2階も攻撃だ!」
「「『了解!!』」」
『ちょっと! まだ話は終わってませんよ!!』
『は~い、ネリネちゃんも攻撃攻撃~、アヤメちゃんを見習ってね~』
『アヤメさん! 反対じゃないんですか!?』
『ルールはルール、ルールには従わないとね、例えそれが自分の本意じゃなくても、ね』
『ですがーー』
『諦めなさい、これはもう決まった事よ』
アヤメさんは潔いな、それに対してネリネさんの諦めの悪いこと。俺がお香を外してる間も通話器からは愚痴が聞こえてきたよ。まぁ、攻撃はしてるみたいだからイアンの指示は一応聞いてるみたいだから俺も何も言うまい。
さて、グレイス達にも攻撃する指示をだし、不規則に揺れる中片側のお香を外し外に投げ捨てる、そしてもう片方を外してる最中にアンク君達が叫ぶ。
「お香、捨てました!」
「こっちもOKです」
「分かった! ジン! そっちは!?」
「もう少し、よっと、取れた! それ! よし! こっちも捨てたぞ」
あとはこれでクワガタがクモだけを攻撃してくれたら賭けは俺の、俺達の勝ち。それ以外になら負けだ。
雨もだんだん激しくなってきたが、クワガタはどう動く?
クモが動かない事に疑問を抱く人がいるかもなのでここでちょこっと解説
ハントスパイダーは所謂“徘徊型”のクモになります、糸も出せます。
彼等は獲物を見つけると背中に取り付き、毒爪を獲物の体に突き刺し相手が動かなくなるまで離れません。
そして動かなくなると、糸でグルグル巻きにして巣穴まで引きずり安全な巣穴の中で食事をする習性を持っております。
よって馬車が動きジン達が抵抗を続ける限りヤツが馬車から離れる事はありません
それではまた次回!




