21『山間の村【マウケン】』
「なぁ、イアン」
「なんだ?」
「なんでイアンがリーダーなんだ? ジロウの方が良かったんじゃない?」
「俺も最初はそうしようとしたんだが、ジロウが『俺はリーダーって柄じゃない、参謀位にしておいてくれ』って言うんでな。なんでもそれほど目立ちたく無いらしい、【ジロウ】って名前も一番より二番が良いって事でつけたそうでな」
「なにか昔にあったのかね~」
「リアルの事を聞くのはマナー違反だぞ」
「それくらい分かってるよ。ちょっとした疑問、ってだけだよ、わざわざ聞いたりしないさ」
「それなら良いが」
エッグイーターの襲撃を退け再度進みだした俺達は平和な時間を過ごしていた。カンナさんも先程目を覚まし、「ご迷惑をお掛けしました~」と皆に告げ今は2階で寛いでいる。俺は襲撃を受けた時のジロウの冷静な判断能力をみて、なぜ彼がリーダーでないのかをイアンに聞いた所だ。
ちなみに、馬車にはそれほど大きな損傷はなかった、俺達の見る限りは。残念ながら俺達の中に馬車を修復出来るスキルを持っている者が居ないので損傷を直すことは出来ない。よって今回の事は幸運と言って良いだろう。
さてさて、そうこうしている内に遂に門らしき物体が遠くに見えた。今日の目的地の村だと思われる。まあ、こんな山の上に幾つも村のような集落があるとは思えないから間違いは無いはずだ。と言うことで皆に報告しようか。
「皆! 村が見えてきたぞ」
「おっ、ようやくか」
「予定よりかかったな」
「異世界系のノベルなら先ずは宿探しですね」
「村に宿ってあるのかな?」
「一軒位あるんじゃないかな?」
「無かった時はまた馬車でログアウトするッスよ」
と男性陣が話しだす。それに対して女性陣は、
『先ずは虫除けです。森の中の村にしかないと言う話の真偽を確かめなくては』
『もしかしたら~商人さんが個人用に持ってるかもしれませんしね~』
『虫はそれほど苦手じゃないけど、無いよりあった方が良いよね』
『私はどちらかと言えば苦手なのであった方が良いです』
『探すのは手伝うけど無かった時は諦めなさいよ』
『それと無くても怒らないでよ! ネリネは自分が納得できない時の癇癪が酷いんだから!』
『私は説明責任をしっかり果たしてほしいだけです、癇癪なんかじゃありません』
『あれが癇癪じゃ無いなら、一体何を癇癪って呼んだら良いのよ』
『それはですね──』
俺は静かに通話器の蓋を閉じる、聞かない方が良さそうだ。そして出来ればその状況に巻き込まれない事を願うよ、切実に。
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雑談を挟みつつ馬車で進む事数分、やっと村の前までやって来た。アイン同様壁はあるが見上げるような高さはない、精々2,3メートル程だろう。そして素材は門も壁も木だ、エッグイーターを見た後だと大丈夫か不安になるな。
そして門の前には鎧を身に付けた騎士っぽい人が2人立っている、門番かな? そして門番という事は呼び止められる訳で、
「止まれ! この村になにようだ!?」
「え~と、王都に向かう途中なんですが、今日はここで泊まろうかと」
「そうか、では身分を証明出来る物を出してくれ」
「身分の証明、ギルドカードで良いですか?」
「問題ない」
「ではどうぞ」
「……確かに暫しここで待て、照合をしてくる」
そう言うと、俺がギルドカードを渡した方が門の柱に走っていった。その間に、もう一人の方が話しかけてきた。
「相方がすまないな、命令するみたいで」
「いえ、そちらもお仕事ですから」
「そう言って貰えると助かるよ。ところで道中エッグイーターがいなかったか? あれのせいで最近アインから人が来なくて困ってるんだ」
「エッグイーターなら卵を食べて満足したのか森に降りていきましたけど」
「本当かい!? 後で確認に行かなきゃな、所でここに泊まると言ってたけど何泊位の予定だい?」
「一泊の予定ですね、明日の昼過ぎには巨虫の森に入るつもりです」
「そうか。おっと、相方が帰って来たな」
門の方を見るとこちらにもう一人が走ってきていた。そして、
「確認した。村への立ち入りは問題ない。今門を開ける、速やかに村の中に移動するように」
「分かりました。それでは失礼します」
「うむ、それとこの村に異人が来るのは初めてだ、聞かれたら極力答えてくれると助かる。我々自身まだよく分からない事が多いのでな」
「はい」
「では、ようこそ【マウケン】へ。ゆっくりしていくと良い」
「宿は村の奥にある。馬車や馬、従魔も世話してくれるよ、今は人も少ないから確実に泊まれるはずさ」
「ありがとうございます、早速行ってみます」
2人に見送られ門を抜け、村に入る。村の印象は、それなりに豊かって所か。砦の跡地と違い家同士は並んでるし、道も馬車が2台が余裕を持って通れるほど広い。そして門の近くは店が立ち並んでいる。見た感じお土産と言った所か? あんまり人はいないけど。
ここ観光地なのかな? でも町じゃなくて村なんだよな? 不思議な場所だな。道を進んで行くと店が少なくなって来た。そして目の前に大きな建物が見えた。建物には大きな文字で『マウケンの宿屋』と書かれた看板がある。宿の経営者は派手好きか、それとも目立ちたがりやか。……どっちでも良いか、分かりやすいから。あっ、それが理由か。
「いらっしゃい! お泊まりかい? それとも村長に用事かい?」
宿の門前で俺達を出迎えたのは、恰幅のいいおばさんだ、宿の女将さんかな?それと村長? 村長も宿にいるのか? まあ、今回村長に用はないからそっちは良いや。
「泊まりです。プレ、異人14人と従魔4体。それと馬車1台と馬2頭、可能ですか?」
「大丈夫だよ。異人さんは初めてだからどこかで粗相をしちまうかもだけど」
「俺達は食事を必要としませんので部屋が確保できれば大丈夫です。従魔と馬には必要ですが」
「あら、そうなのかい? それならまずは部屋だね。1人部屋、2人部屋、4人部屋があるけど、どれにする?」
おっと、これは相談案件だな。宿に泊まった事がないから頭に無かったな。
「少しお待ちください」
女将に待ってもらうように告げ、馬車の中に顔を入れイアンに尋ねる。
「話は聞こえてたよな、部屋割りはどうしたらいい?」
「あ~、そういや決めて無かったな。どうするよ?」
「とりあえず4人部屋3、2人部屋1ですかね」
「ユキムラ君、まずは男女で分けないと。ゲームとはいえ男と一緒じゃ、な?」
「そ、そうですね。忘れてました」
「え~と、今は男女7人ずつですから、……別けきれません!」
「落ち着け。とりあえず4人部屋を2つだ、後の6人をどう別けるかだが」
「面倒だし同じ部屋をもう2つで良いんじゃないッスか?」
『良いんじゃない? こっちは問題ないよ』
『私も大丈夫です』
『私達も大丈夫よ!』
「分かった、じゃあ少し待っててくれ」
馬車から顔を引っ込めて、女将に告げる。
「4人部屋4つでお願いします」
「あいよ。異人さん達は食事がいらないから、1人900zlだよ」
「分かりました。ギルドカードを出したら良いんですか?」
「門を通ったら勝手に支払われるよ。さあ、入った入った!」
女将さんが門を開けて、中に入るよう促す。俺は小声で皆に尋ねる。
「皆、お金大丈夫?」
「大丈夫だ。遠出と言えば宿ってことで金は用意してる」
「生産職舐めないでよ! 武器を売ったお金が私達にはあるのよ!」
問題ないようだ、つまりギリギリなのは俺だけか。でも、グレイス達の食事は不可欠だしな~。
もっとクエストこなすしかない、か、はぁ~。よし! 行くか。
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「それじゃ、お願いします」
「あいよ! 任せなさいな」
馬車と従魔達を預けて皆に合流、それぞれの部屋に案内された。男性陣の部屋の割り当てはイアン、ジロウ、クロウ、カブの4人と、俺、アンク君、ユキムラ君の3人だ。女性陣は春夏秋冬の4人とレキ、キキ、シャロンの3人で別れた。
部屋は2段ベッドが2つ、部屋の両端にあるだけの簡素な部屋だった。俺は右側の下を使う事になった。ベッドの質はマイルームとそれほど変わらないが、寝転んでログアウトするだけだし問題ないだろう。
「ジンさんはこれからどうするんですか?」
「俺か? そうだな~、とりあえず回収したスワローの羽でも売れる所は無いか探そうかな」
ユキムラ君の質問にそう答える。切実にお金が無いからね、森の中にも村があるらしいし少しでも稼がないと。
「あっ、それなら俺も行きます。俺も回収しましたから」
そう言うのはアンク君、そういえば君もアイテムボックス持ちだったね。
「そうか、それじゃ早速行こうか?」
「はい!」
俺達が部屋から出ようとするとユキムラ君が「僕も行きます」と言ったので3人で部屋を出る。さて、冒険者ギルドって村にもあるのかな?




