15『襲撃』
御者台にグレイスとシロツキを乗せ、御者台と客車の間のカーテンを閉めた状態で馬車を走らせていると、8人の男女が道を塞いできた。そして、その内1人が前に出てこちらに話し掛けくる。
「おいそこのプレイヤー、ちょーっと俺達の話を聞いてもらえないか?」
「悪いけど急いでるんだ、話を聞いている暇はない。そこを退いてくれ、馬車が通れないから」
「なぁにそう邪険にするなって、話ってのは簡単だよ。その馬車を俺達に貸してくれないか? 大丈夫、後でちゃんと返してやるよ」
「見ず知らずの人に物を貸すような間抜けなマネするわけないだろう」
「そうかい、だったら」
男が手を上げると、後ろの7人が武器に指をかける。
まぁ、そうなるとは思ってたけど。そして、
「やれ」
掛け声共に7人が前に出てきた。更にその後方から矢と魔法が俺めがけて飛んでくる、が、その攻撃は全て空中で止まった。更に、指示を出した男の首が落ちて光に変わる。それに気付かず突撃してきた7人は上から飛んできた矢と魔法を受けて足を止めた。
ふむ、異人でも首を落とすと一撃で終わるみたいだね、首を守る防具が必要だな。しかし、LPが無くなるとあんな風に消えるんだな。少しの間は残ると思ったけど、あれかな? 首を落とされると蘇生出来ないのかな? それならすぐ消える理由にはなるかな。
「矢も魔法も効かないってどういう事!?」
「なにかしらの対策がされてたってことだろ!」
「チッ、バレてたみたいだね、リーダー! 次は、って、あれっ!? リーダーは?」
「えっ!? さっきまでそこに」
狼狽えてる狼狽えてる、盾で防いで剣で斬っただけなんだけど、見えないから気付けないみたいだな、これほど楽な暗殺も無いな。しかし、馬車を寄越せと言うのはいいが、何故馬を巻き込むような攻撃をしたんだ? 馬が居なくなったら馬車なんて小屋とそう変わらないと思うんだが、……別に良いか、相手が何を考えてるかなんて。
「何処行ったか知らないけど作戦は続行するよ! 皆! 囲みな!」
女が声を上げると、左右の森から4人づつ出てくるのを【気配察知】で確認した。さて、こっちも動くか。
「イアン! 迎撃よろしく!」
「任せろ! 行くぞー!!」
馬車の後ろから、イアン、ジロウ、クロウ、ガブ、アンク君、ユキムラ君が飛び出す。3人づつ左右に分かれて武器を構える。更にシャロン、ビウムさん、アヤメさんが馬車の後方を守る手筈だ。残りのメンバーは2階で待機、目視した相手に遠距離攻撃を当てる作戦になっている。
そして俺は、馬を守りながら正面の敵の撃退が役割だ。グレイスとシロツキの負担も大きいがやりきるとしよう。御者台から飛び出し馬達の前に立ち、鞭と剣を装備し直す。さぁ、始めようか。
「お前達の相手は俺達だ」
「ハッ、鞭なんて役立たずな武器使ってる奴が意気がるんじゃないよ」
ん? 鞭が役立たず? なんの事だ?
「ちょっと待て、それはどういう」
「やるよ! 袋にしちまいな」
「「「任せろ姐さん! 」」」
「「「ヤー! 」」」
6人は片手剣と盾を装備した男を先頭にこちらに迫ってくる、こちらの疑問に答えるつもりは無いらしい。良いだろう、ならば予定変更だ、あの女捕まえて無理矢理にでも聞き出してやる。
剣を浮かして放置、御者台に置いてきた盾を【魔力操作】で引き寄せ、耐久値を回復。さてまずは・・・お前だ。
「ふん!」
「えっ?」
いつも通り魔力を纏わせ射程を伸ばした鞭を振るい、先頭の男の斜め後ろを走る女を捕まえる。流石に捕まれた感覚はあるらしいが既に時遅し、俺は【気力操作】を使いながらおもいっきり引っ張る。勿論、先頭の男に向かって、
「そりゃ!」
「いたっ! えっ!? 何で? キャーーーー!?」
「ヘッ? うぉっ!?」
男を転かしそのまま引き寄せられる女、あっ、ヤベッ、ちょっと力を込めすぎたか? このままだと馬車に当たってしまう。少し鞭を短くして斜め上に持ち上げる。すると、
「なんなのこれーーー!?」
馬車の屋根すれすれを通り過ぎ、鞭に引っ張られるまま戻ってくる。よし、このままぶつけてやろう。捕まえたまま鞭をブォン、ブォンと音をさせながら回転させる、さながら人間ジェットコースターかな? その間も女は悲鳴を上げ続ける。
「もう離してーーー!?」
「お望み通りに!」
鞭のおもいっきり振り抜き、女を解放する。飛んでいく先は? 勿論こちらの様子を唖然と見ていた5人組。
「ほらっ! 飛んでけ人間砲弾!!」
「イヤーーーーー!!」
「!? こっち来んなーー!!」
避けようと左右に身を投げ出す身軽な装備の3人、重そうな鎧を装備をした2人はしゃがんで回避しようとするが、僅かに遅く、飛んできた女に頭が当たり後ろに転がる。うわ~痛そう、飛ばしたのは俺だけど。左右に飛んだ3人も無事ではなかった。飛んだ先には、魔装したシロツキの角と、分身して魔装したグレイス達が待ち構えていた。
「キュッ、キュ~」
「えっ? 何、だっ!?」
シロツキは飛んできた男の頭を杵で地面に叩き付け、脳天に向かって突撃。相変わらず賢いなぁ~、味方で良かった。
「離せ! このバカ犬!」
「動けない!? あー! LPがジワジワと減ってる!? 誰かヘルプー!」
グレイスは首もとに魔装した牙を突き立て、分身達はもう1人を動けないように手足を押さえつけている。やっぱり分身は優秀だな、俺も習得出来ないかな? そう言えばさっきの人間砲弾は、あっ、消えた。鎧の方はまだ消えてない、人間砲弾では終わらなかったか。でも、コイツら動かないな? じゃあ止めを、おっと!?
「クソが! 何でさっきから何も無いところで攻撃が止まるんだ!?」
「種明かしなんてしないよ、マンガの悪役じゃ無いんでね」
危ない危ない、まさかナイフが飛んでくるとは、盾回復させといて良かった。しかし、なんか弱いなコイツら、予定では、なんとか足止めして皆の合流を待つ筈だったんだけど。まあいいや、楽なのは歓迎すべきだろうし。
「キュッ、キュ~」
「ウォン」
「どうした? あれ? 終わらせちゃった?」
声に振り向くと、地面に倒れていた皆の姿が消えていた、どうやらグレイス達が始末してしまったようだ。
「え~と、後は君だけみたいだけど、どうする? 降参する? 俺個人聞きたいことがあるから素直に捕まってくれるとありがたいんだけど」
「何言ってんだアンタ? あたしの仲間はまだ居るんだよ! 撃ちな!!」
女が大声で指示が出す。が、何も飛んでこない、その代わりに女の後ろから飛んできたのは、太陽の光に照らされて目立つ、2体の鯉。ゴウカとケンランだ。
「どういう事!? 何で誰も撃たないの!?」
「お帰り~、ゴウカ、ケンラン。上手く言ったみたいだね」
「「コォコォッ」」
「仲間に何をした!?」
何をした、か。簡単に言えば、空から魔法を撃ち続けただけなんだよね。
ゴウカとケンランのスキル【能力共有】でMPの共有が可能、そして、この子達のスキルの飛鯉シリーズは、空を泳ぐだけでMPの回復が可能。これを組み合わせると、片方が泳ぎ続ければもう片方が魔法をいくらでも撃つことが可能になるのだ。そう、この子達の親達がやっていた魔法の弾幕を再現しただけなんだけど、予想以上に効果があっただけ。だけど、
「話さなくても、なんとなく分かるだろ?」
「クソッタレめ!? 空中で止まる攻撃、LPを0に出来ないはずの鞭での攻撃、一体どんなチートを使ってるんだよアンタ!?」
「チートって、ただのスキルの組み合わせだけど。それよりLPを0に出来ないって何? 初耳なんだけど」
「拷問用の武器で殺しが出来るわけないだろう! バカなのかアンタ!?」
……あぁ、そういうことね。確かに鞭は拷問や尋問、そして調教など相手を殺さない程度に痛め付ける用途が多い。それでそういう答えに辿り着いたのかな?
「そんなのやってみてから言いなよ」
「やってみたから言ってんだよ!!」
「えっ? マジで?」
「マジに決まってんだろ!! それなのにクソッ! アンタホントになんなんだよ!?」
そんな事言われても戦えてるしね~。まあ良いや、聞きたいことは聞けたしね。それでも、
「とりあえず捕獲させてもらいますね」
「誰が捕まるかバーカ!!」
「ほい」
「キャッ!」
足を鞭で縛り転がす、仰向けに倒れる女、そして、
「グレイス分身、あれ逃がさないようにね」
「ウォン」
「離れろコラーー!!」
後はイアン達を待つだけだな、情報得られるかな?
一応補足すると
プレイヤーを倒しても経験値は入りますが魔物相手と比べると大分少なく設定されています。
そのためプレイヤー相手に数の有利を活かす戦い方をしてきた彼等はそれほどレベルもステータスも高くありません
ただ魔物はその例に漏れるため、ゴウカとケンランはバンバンレベルが上がり後衛のステータスを凌駕してしまった訳です
それではまた次回!




