04『統合スキル』
訓練を始めて一時間半、ガガとココは特にこれと言った問題もなく練習用の馬場を走り抜けている。初めはケインさんも隣に乗って指示をくれたんだが、一通り教えると馬車を降りて『こ、ここからはお一人で』と降りてしまった。基本は言葉で指示するだけだし、大きな問題はないから構わないが。ただ、
「思ってたより、尻にくるな、これ」
いくつもの作品で『長時間の馬車での移動はお尻が痛くなる』とされるが、事実だったか。この馬車の御者台が高めに作られているのも要因かも知れない、よく揺れるのだこの場所。まだ我慢できるレベルではあるが、これを何時間も乗り続ける事を考えると、何か対策を考えないと。
まずは【気力操作】を使い尻を補強してみた。結果は・・・失敗。痛みは楽になったが、解除すると揺れで蓄積された痛みがぶり返した。その場しのぎにしかならない。
次は【魔力操作】で同じ事をやってみたが、駄目だった。そもそも魔力には質量が存在しない、【魔力変換】を使わなければ固定化も出来ない。ならば、と、変換を使用したが、結局固さは変わらない。どうしたものか。
・・・一つ思い出した事がある。かつて子供の頃に一度だけ体験した『ウォーターベッド』とか言う寝具。確かあれは、水をマットレスの中に詰め込んであの柔らかさをうみだしていたはず。まあ、柔らかすぎてよく眠れなかったけど。とにかく、あれを再現出来ないだろうか? もし再現出来れば色々と応用も出来る、早速試してみよう。
欲しい魔力は腰から太腿を覆える位、厚みもそれなりに欲しいな。あとは水の再現だが、とりあえず袋に入れた水を思い出しながらやってみる。
・・・一応、魔力を水に変換することに成功した。しかし、これは駄目だ、ズボンがずぶ濡れになってしまった。ならば、袋部分を外側に張り付けてみたが成果が得られない。何が足らないのか? もしかして同時に作るから駄目なのか? どういうわけか『水クッション(仮)』は消えていない、なので『水クッション(仮)』を入れる袋も作ってみる。大きさはさっきより大きく、中身は取り除く。後で閉めるのは面倒なので中に入れてから魔力を繋ぎ合わせる。結果は、
「おおっ! 成功だ! 」
馬車を走らせながら更に30分、漸く完成した『水クッション』。いきなり痛みが引いたりはしないけど、痛みの悪化は無くなった。これで安心して乗っていられるぞ。
「ジ、ジンさーん。そろそろ戻って下さーい」
「はーい! ガガ、ココ、あと半周頼むぞ」
「「ブルルルッ」」
ケインさんの指示を受け馬小屋前まで戻る。おっと、クッションの回収を忘れてはいけない。
改めてクッションを見ると水の玉みたいに見える。しかし、何で消えないのだろうか? これ武器じゃないよね? とりあえずポーチに入れておこう。さて、ケインさんの所に行かないと。
そう思っていたらケインさんの方からやって来た。
「も、問題は無さそうですね。指示もしっかりしてましたし、ガガもココも不安な様子は見られなかったです。普段から従魔たちにも声で指示を出しているだけあって、飲み込みが早いですね。うちの子達とも相性が良さそうで安心しました。馬車の動きを見る限りではもうスキルが発現してるのではないでしょうか? 」
「えっ! 本当に!? ちょっと確認してみます」
ジョブスキル
【鞭術Lv13】【調教術Lv14】↑1
【調理術Lv2】【片手剣Lv3】
スキル
【俊足Lv10】【気配察知Lv13】【魔力操作Lv16】
【魔力変換Lv15】↑1【気力操作Lv12】
【鑑定Lv10】【識別Lv9】【魔具生成Lv5】New!
ステータスのスキル欄を確認。しかし、そこに【操馬】スキルは存在していない。あれっ? 【操馬】はないが名前が変わったスキルがあるな。【魔力武具生成】が無くなり【魔具生成】というスキルが加わっている。あれか、水クッションを作ったからか? いや、これは後まわしだ。ケインさんに聞かないと、
「【操馬】スキル、見当たらないですね」
「お、おかしいなぁ、あの様子なら覚えていて良いはずなんですけど、そうだ! 【調教術】はチェックしましたか? 」
「【調教術】? どうして? 」
「ちょ、【調教術】みたいに従魔全体に影響するスキルは、他の同系統のスキルと一体になることがあるんです。有名なところだと、【乗竜】は【乗馬】と一つになり、ステータスには【乗馬】しか表示されず、その【乗馬】は【操馬】と一つになり、ステータスには【操馬】が表示されます。そしてその大元になるのが」
「【調教術】って事ですか」
「そ、その通りです。これを僕達は【統合スキル】と呼んでいます」
【統合スキル】か、そんなものまで有るんだな。まぁ、沢山あったら、ステータス欄がいっぱいになって見にくいだろうし当然の処置か。とにかく、もう一度確認だ。
確認した結果、思った以上に統合されているスキルが見つかった。
【調教術】
┗【乗竜】【操馬】
【気配察知】
┗【魔力察知】【気力察知】
【魔力操作】
┗【魔力集中】
┗【射程延長】【疑似魔眼】
【魔力変換】
┗【物質化】
┗【属性変換】
┃ ┗【水】
┗【性質変換】
┗【斬】【刺突】【吸着】【柔軟】
【気力操作】
┗【気力集中】
【魔具生成】
┗【魔力道具生成】
┃ ┗【レシピ】
┃ 【袋】【クッション】
┗【魔力武具生成】
┗【レシピ】
【片手剣】【長槍】【短剣】【縄】【網】
多いよ!? 色々気になるスキルもあるけど、詳細はまた今度にして、
「【操馬】ありました」
「よ、良かった、それじゃ依頼は完了ですね。どうします? もう少し練習して行きますか? 」
「そうですね、う~ん」
現在時刻はPM5:17、そろそろログアウトの準備に入りたい。
グレイス達の食料も買わないといけないし、練習は終わっておくか。
「ここで終わっておきます。食料なんかも買わないといけないので」
「わ、分かりました。それでいつ出発する予定ですか? 」
「出来たら明日の午前中、朝食をとったらすぐにでも」
「で、では、明日のAM8:00には出発出来るようにしておきます。冒険者ギルドの方にもそう伝えて下さい」
「分かりました。お世話になりました」
「あ、最後にいくつか注意する事を教えておきますね。野営をするときは必ず馬具を外してあげて下さい、馬達が休めませんので。それと、出発前と馬具を外した後は毛並みを整えて下さい、そうしないと機嫌が悪くなります。特に、ココは一度へそを曲げると言うことを聞かなくなるのでしっかりお願いします。あと、2,3時間事毎に休憩を挟んで下さい。もしも魔物に襲われた時なんかに疲れて走れない、なんてことにならないよう出来る限り万全の状態を維持するためです。まぁ、魔物避けがあるはずですから大丈夫だと思いますけど、念のため」
「わ、分かりました。気を付けます」
「それでは、また明日お会いしましょう」
流暢に話し出したケインさんに見送られながら、グレイス達を連れて牧場から離れる。さて、買い出しに行かないとな、目指すは西通り。その前にギルドに出発時間の連絡に行くか。
アーチをくぐり、グレイス達が小さくなる。それを確認して南通りに向かおうとしたら、
「もし、そこの方」
声を掛けられた気がして、声の方を見てみると、女性が立っていた。腰まで届く金髪、整った顔付き、目の色も金、少し汚れた作業服のような服を着ている。ハッキリ言って似合っていない。作業服の上からでも分かるスタイルの良さ、ドレスとかが似合いそうだな。一応周りを確認する、勘違いだったら恥ずかしいしな。周りの人も足を止めて彼女を見ている、一目で分かる美人さんだしな。気持ちは分かる。まぁ、それはさておき、
彼女が話し掛けたのはどうやら俺らしい。一応確認しよう、自分を指差して、
「えっと、俺? 」
「はい、貴方です。お話があるのですが、少しお時間よろしいでしょうか? 」
時間は結構ギリギリなんだけど、どうするかな? ・・・そうだな。
「歩きながらで良ければ」
「それで構いません」
「それじゃあ、冒険者ギルドに向かいます。それでお話とは? 」
「まずは自己紹介をいたしましょう。私はネリネ、【狩人】をやっております」
「俺はジン、【捕縛師】です。んっ? ネリネって、この腕輪と小手の制作者の? 」
「ええ、それは私の作品です。それと、貴方が身に付けている装備は全て私の友人達の作品です。そして、誰に言われるでもなく私達の作品を手に取った貴方にお願いしたい事があります」
「お願い? 」
「私達を王都まで、連れて行って貰えませんか? 」
【ジン】 冒険者rank:E
種族【常人種】 状態:【良好】
職業【捕縛師Lv17】【調教師Lv17】
TLv34
LP :700
MP :750 ↑20
SP :810 ↑10
攻撃:54(72) 魔攻:61(92)
防御:50(102) 魔防:25(28)
持久:72(76)↑1 精神:54 (58)↑2
器用:70(85)↑1 素早さ:64(71)
運:35
土:10 水:7 火:6
風:9 光:10 闇:14
JP:21
ジョブスキル
【鞭術Lv13】【調教術Lv14】↑1
【調理術Lv2】【片手剣Lv3】
スキル
【俊足Lv10】【気配察知Lv13】【魔力操作Lv16】
【魔力変換Lv15】↑1【気力操作Lv12】
【鑑定Lv10】【識別Lv9】【魔具生成Lv5】New!
称号
【親愛の女神の加護】