25『ゴブリン砦~救出編~2』
「なぁ、正々堂々と戦うんじゃなかったのか? 」
二人と三体で警備のゴブリン十二体を手早く倒したのだが、シノブの戦い方が非常に気になった。
シノブはソルジャーに近付き、剣を空振りさせては姿を消し、直後に背後からシノブの従魔、トビカゲが鉤爪で背中を切り裂き、反撃しようとソルジャーが振り向きながら剣を振ると、トビカゲは空へ逃げて躱し、振り抜いて隙を見せた正面にシノブが現れ、両手に持った短刀で首を絶つ、という戦いを繰り返していた。
俺の知ってる正々堂々とはえらくかけ離れた戦い方だった。
ちなみに、トビカゲとは、
【トビカゲ】主人【シノブ】
『従魔、四枚の二対の翼を持った大きな烏
翼が増えた事で隠密性は低くなったが空中での旋回スピードが増した』
と言う烏系の魔物だ。種族名は【クロスレイヴン】だそうだ。
「止めは正面から刺したでござるよ」
「正々堂々ってそういう事じゃなかった気がするんだが」
「細かい事は気にしない方が良いでござるよ。それが長生きのコツでござる」
「俺はそんなに年食ってねぇよ」
「とにかくここに居たゴブリンは排除したでござる。魔石も少量とはいえ確保出来たので自分は満足でござる」
「なんでこの短時間で魔石まで確保できるんだよ」
「忍でござるからな」
シノブは胸を張りながらそう答えた、この感じだと全部"忍だから"で通しそうだなコイツは。まぁ、閑話休題。
今、大事なのは目の前の建物だ。見た目は木造の倉庫で、二階は無いようだが砦の出入り口に近い所に煙突がある、どうやら物見櫓になっているようで、天辺の屋根のした辺りに柵が見える。砦が作られた時に作られたものだろうか? すぐ近くに馬小屋のようなものもある、しかし、中は空っぽだ。ゴブリンの姿も見えない。
周囲にゴブリンがいない事を確認し、大きな両開きの扉の前に立つ。
「とりあえず扉を開けるぞ、こっちの従魔は警戒はしてないから、多分大丈夫だと思うが」
「油断はするな、でござるな」
「そういう事だ、じゃあ、いくぞ」
両開きの扉をゆっくり引き、中を確認していく。
床は木ではなく土が敷き詰められていて雑草が生えている。その生えかたから、荷車をそのまま中に入れていた様だ。
「やっぱり元は何かの倉庫か」
「そのようでござっ!? ジン殿、奥の方に何かいるでござる」
「!? どっちだ」
「あっちでござる」
シノブが左奥の方を指差す。そこにいたのは、
【フォレストライドラプター】対応rank:D
『森に住むライドラプター
自らが認めた者を乗せ俊敏に駆け回る
住んでいる場所で名前と見た目が変わるが
基本は変わらない』
「おい、ライドラプターって出たが」
「拙者も同様でござる、しかし、何故この森に? 」
「どういう意味だ? ここは森の中なんだから、居てもおかしくないだろ」
「ジン殿、よく聞いてほしいでござる。【アイン】は駆け出し冒険者の街と呼ばれているでござる。その理由は、周辺の魔物が一定で、挑む場所を段階的に上げる事が出来るからでござる。ライドラプターは非常に俊敏で攻撃的、駆け出し冒険者では返り討ちに会うのが道理。駆け出し向けの南の森にこんなのがいたら、冒険者の数が減り続けるでござるよ」
「マジか? 」
「マジでござる」
とんでもないのが居やがった、嫌な感じの正体はコイツか。
光が乏しいから正確な数は分からないが、扉から左の方に集まっているようだ。しかし、よく見ると、
「眠っているようでござるな」
「いや、眠っているわけじゃない」
「? では、何故こちらに襲い掛かって来ないでござるか」
「頭に付いてる装備、あれはサイズは違うがホランに付けられた物と同じだと思う」
「だとすればコイツらはゴブリン達が引き連れてきた、と」
「そういう事だな」
「しかし、ゴブリンがその様な事を? 」
「セネルさんの予想通り、誰かが手を加えてるって事だろうな」
「それで、どうするでござるか? 」
「どうするって」
「ここで全て始末するのか、と言う事でござる。先程の話が真であるなら簡単に仕留められるでござる。全ての個体の装備を外しても味方になるとは限らぬ以上、拙者は殲滅を推すでござる」
殲滅、か。でもな~、コイツらだって好きでここに居るわけじゃないだろうし、全滅させるのはな~。
かと言って解放するのも、リスクが高い。どうしたものか。
ん? いや、待てよ。
「シノブ、解放するぞ」
「理由を話して下され、納得したら同意するでござる」
「コイツらをゴブリンにぶつける」
「上手く行くでござるか? 」
「そこは運だな。だけどコイツらだって、ゴブリンにやられっぱなしは癪だろうよ。ホランも操ってたのを思いっきりぶっ飛ばしてたし」
「・・・分かったでござる。ただし、いざとなったら、ジン殿を囮にしてでも拙者は逃げるでござるよ」
「あぁ、それで良い。異人は死なないからな。まだ、脱出機能も生きてるし、なんとかなるさ。その代わり俺が使ったら代わりにエマの護衛を頼めるか? 未だに必要とは思えないが」
「善処致そう」
「よし! 行くぞ! 手早くな」
「誰に言ってるでござるか! 拙者は忍でござるよ! 」
グレイス達に外の警戒を頼んだ後、倉庫から少しでも逃げやすくするために、奥の方から外そうと手を伸ばしそうしたときだった。
「あれっ? コイツだけ首の色が微妙に違う、別個体か? 」
「ジン殿、そんなこと気にしてないで早くはず」
「ウォン!! ウォン!!」
外の警戒をさせていたグレイスが吠えた。つまりそれは、
「!? ゴブリンが来たか!」
「ジン殿、急いで!」
「わかってる!」
色違いのラプターの後頭部と顎に通されたチェーンの輪を外してやりポーチの中へ。次はその隣の普通の色のラプターのを外して、と同じ事を繰り返す。ホランの時よりも効果が強いのか、外してもすぐ正気には戻らない様だ。ポーチの中に入れている理由は、少しでもサンプルは多い方が良いだろう、と言う単純な理由だ。
集めた装備が二桁を越えた辺りで、ついに
「ギャギャ!」
「キューー!!」
「ウォン!!」
「カァーー!!」
従魔達とゴブリンの戦闘が始まった。それぞれが雄叫びを上げ、必死に戦っているようだ。
「くそっ! 始まっちまった! こっちはまだ半分もいってないのに」
「あぁー! もう! ちまちまめんどくさい! ジン殿! これ破壊しても良いですか!?」
「えっ! そ、そりゃ構わないけど」
「真でござるな。それでは、秘技! 【疾風ニ閃】!! 」
そう叫ぶとシノブは、腰の後ろに装備した短刀を抜き、構えたと思ったら、その姿が掻き消えた。
「はっ? 」
シノブの姿を慌てて探すと、「チンッ」と音が扉の方から聞こえ振り返る。
と、ほぼ同時に、ラプター達の頭部から真っ二つになった装備が地面に落ち、金属音を響かせる。
俺はラプター達の間をすり抜け、シノブに近寄りながら、
「今のは技か? 俺のと、えらく違うな」
「フッフッフッ、今のは拙者の必殺技でござる」
「て、事は技の上か。あれ? でもさっき秘技って」
「細かい事は気にしない。さあ脱出でござ…」
シノブが扉を少し開けて固まった、そして、
「どうした? 」
「・・・もう手遅れにござる」
「何? 」
シノブが開けた隙間から外を見ると、扉を囲むようにゴブリンが居た。それも大量に。
グレイス達は扉の前に陣取って、中に入れないよう入れないようしていた。
グレイス達のLPバーは半分程度だからギリギリいける、と思っていたが、攻めあぐねているだけだったようだ。
「シノブだけなら、さっきの必殺技でなんとかなるんじゃないか? 」
「・・・あれは一回使うとしばらく使えないのでござる」
「・・・なんでさっき使ったんだよ」
「拙者面倒な事は嫌いなのでござる。特に努力とか」
「忍ってのは努力の末になるもんじゃないのか? 」
「そ、そんなことより、これからどうするでござる? 」
シノブは目を逸らし、明後日の方向を見ながら答える。
どうやら本人にとって都合の悪い話の様だ。しかし、実際問題これからどうするかは死活問題だ。早急に決めなければならない。だが、
「どうするもなにも、突撃か籠城のどっちかしかないだろう」
「だったら籠城を推すでござる」
「理由は? 」
「この際、皆の所に行かぬよう囮になると言うのも一つの手でござる。従魔達と共にここに籠り拙者らが居る、と思わせておいて緊急脱出で街に帰り、再度、仲間を集め救出に戻る。囮と拙者達の安全、さらに援軍まで確保出来る、一石二鳥いや、三鳥の作戦でござる」
「そうだな。ここまで20分で帰って来れるならな」
「・・・流石にそれは…」
「だけど、籠城には賛成だ。と、言うよりそれしかない。グレイス達を中に入れて、ゴブリン達が入って来れないように扉を押さえる。その間シノブは壊せそうな壁を探してくれ、そこから逃げよう」
「承知したでござる」
「グレイス、シロツキ、あと、トビカゲ。中に入れ! 」
扉を開け、グレイス達を呼び戻す。と、同時にゴブリン達がこちらに勢いよく群がってくる。
グレイス達が入った瞬間に扉を閉め、両手で押さえる。グレイスとシロツキも手伝って体で押さえ込んでいる。
何度も扉が押され、扉が開きかけるがそれをなんとかこらえる。
まだか?
「ジン殿! 」
「あったか!? 」
「古い故か、どこでもいけそうでござる! どこを破壊するでござるか? 」
「それだったら扉から一番遠いそっちの壁……うぉっ!? 何だ!? 」
ドォン、と大きな音が響き、扉の右側の壁が壊された。そして壊れた壁の向こうから、それは現れた。
更新出来ました
さぁ、頑張れあと1話
それでは‼




