20『遭遇戦』
丘に戻る途中から、頂上付近に人影が見えていた。子供のような姿だからゴブリンであろう。別の道を探している時間はない、それに数が減らせるのはこちらとしても助かるから、殲滅は決定事項なんだが、一緒にいる大きな影はなんだ?
【トライホーンシールド】対応rank:D
『体全体の皮膚が硬く非常に防御力の高い魔物
竜属の1種で亜竜に分類される
基本は群れで行動し非常におとなしい
敵対者には大盾のような頭部を向け攻撃を防ぎ
鼻先の角と盾から伸びる2本の大角で攻撃する』
見た目は完全にトリケラトプスだな、この世界には恐竜もいるんだな。二本の角の間に紅い宝石のようなものが付いた盾を装備し、背中にはゴブリンが乗り、檻のような籠のような物を引っ張っている。あれとも戦わなきゃダメか?
rankはゴブリン達と同じDだが、ガビアル同様、近付きたく無いんだが。戦うにしても最後にしよう、まずは雑魚退治だ。
ゴブリンの布陣は、前衛に普通のゴブリンが三、その後ろにソルジャー二、一番後ろにトライホーンシールドとそれに騎乗している普通のゴブリン二、そしてソルジャーとトライホーンシールドの間に杖を持ったゴブリンが一、識別すると、
【ゴブリンメイジ】対応rank:C
『魔法を使えるようになったゴブリン
打たれ弱いため、必ず盾役のゴブリンを連れている
使う魔法は火、又は闇を多用する』
魔法を使うゴブリンか、見た目はただ杖を持ってるだけなんだな。まあ、ソルジャーもハンターも武器を持ってても防具は着けてなかったしな。
それにしても森の中だと緑色の肌は擬態状態になって結構厄介だが、ここみたいな開けた場所だとそれほど意味はないな。既に相手もこっちに気付いている、そりゃこっちは丘の下だから見つかるのは当然か。さあ、戦闘開始だ。
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「トライホーンシールドには手を出さず、ゴブリンのみを掃討する。行くぞ! 突撃!」
「ウォン! 」「キュ!」
「「「ギャギャギャ」」」
掛け声と共に駆け出す。ゴブリンも俺達に向かってくる、どうやら1対1で相手をするつもりのようだ。
「そりゃ! 」
「ギャ」
いつも通り鞭に魔力を通して、中央のゴブリンの首を両断。ただのゴブリンならこれで十分だ、グレイスは魔装した爪で左のゴブリンの首を一閃。シロツキは以前にもやった、足元まで走り込み顎から脳天に向かって魔装した角を突き刺し体を蹴って後ろに跳び着地、膝から崩れ落ちるゴブリンを無視してまた駆ける。ゴブリン程度ならもう苦戦はしないな。
「よし! っと、うおっ! 」
次の相手はソルジャーだ、と思ったがソルジャーの後ろから魔法が飛んできた。大きさはバレーボールほど、色から考えてダークボールだろう。鞭を振って弾くには距離が近すぎる、咄嗟に鞭の先端を左手で持ち縦に伸ばして魔力を纏い向かってくるダークボールを受け止める。
「くぅっ! こ、こんのっ! 」
バチバチと目の前で魔力がぶつかりあう、衝撃が体を走る。魔法を跳ね返したいが魔力が足りない。纏う魔力を増やそうとするが魔力が安定せず霧散する。どうしてかはわからない、だけどこのままだとまずい。今でも少量ずつだがMPとSPは減り続けてるし、LPも減っている。何よりメイジが次弾を撃とうと杖を構えている。この状態で次が来たら間違いなく押しきられる。
グレイスは魔装した爪と牙で剣を押さえ込み、三体の分身に攻撃させている、シロツキは角で威嚇しながら対峙していて援護は見込めそうにない。だったら!
「これなら、どうだぁ! 」
魔力をダークボールとの接触面に集中しながら、膝を曲げて後ろに倒れる様に転がる。鞭が傾くとダークボールが鞭に添って走り、鞭から離れそのまま飛んで地面に衝突して消滅した。鞭から離れる瞬間、ダークボールが指を掠めLPが四割も持っていかれた。メイジの魔攻が強いのか、俺の魔防が弱すぎるのか。・・・後者だろうな。
下り坂のせいで二回ほど余分に回ってしまったが、直ぐに体勢を整えメイジに向かって走り出す。直撃を受けたら間違いなく終わる。鞭じゃ届かない、ならマジックソードで斬り倒すだけだ。
「行け! マジックソード! 」
魔力操作でマジックソードを浮かしメイジに向かって飛ばす。細かく操作するために魔力を見えるようにしたところ、メイジの杖の先を中心にして書きかけの幾何模様が見えた。
模様の中心に円、その円を囲む一回り大きな円。更にその円から斜めに4本それぞれ線が延び、その先を頂点に他の頂点に向かって線が延び四角形になっている。そして円の上の図形の中に左向きの矢印と思われる絵が描かれ、円の左の図形には人と思われる絵が描かれている最中ようだ。下と右の図形はまだ空白だ、多分あの二ヶ所が埋まれば完成なんだろう。まぁ、完成なんてさせるつもりはないけどな!
マジックソードがメイジに真っ直ぐ向かって行く。だが、
「ギャ! 」
メイジはそれを左に転がり躱し、マジックソードは当たらず通り過ぎる。
「マジか!? 」
メイジは立ち上がるとまた杖を構え直し、中断した絵の続きが描かれ始めた。どうやらあの模様はしばらくなら消えずに残り、描き足す事も出来るようだ。
だったらあの模様ごと切り裂いてやる。そう思いマジックソードを戻そうとしたら、
カンッ!!
と甲高い金属音がなった。音の方を見るとマジックソードがトライホーンシールドの正面に落ちている。どうやら装備している盾に当たり落ちたらしい。幸い壊れなかったようだが、これはまずい! この状態で奴に参戦されたら間違いなく殺られる!
「チッ! 今から逃げられるか? 」
「ギャギャギャ!? 」
逃げようと画策する俺よりもメイジの方が慌てているようだ。とりあえずマジックソードを回収、魔力を込めて耐久値を回復、何が起きても対応出来るように準備する。
グレイス達は俺とメイジ同様、音に反応したソルジャーの隙を突いて仕留めて足元にいる。俺よりも従魔の方が優秀だな。さて、どうなる?
「ギャ! ギャギャ! ギャ? 」
「グォ、グォー」
メイジはトライホーンシールドに話しかけながら近付いて行く。それに対しトライホーンシールドは、戸惑っているような声をだし頭を横に振っている。トライホーンシールドに乗っていたゴブリン達は、降りて距離を取っている。見た感じこっちに来る感じはない。なら、
「グレイス、シロツキ、あっちのゴブリン2体の後ろに回り込んでくれ。逃げられないようにな」
小声でそう指示すると、グレイス達は丘を回り込んでゴブリン二体の後ろに回り込んだ。本当に優秀だな、俺もしっかりしないと。さて、メイジはまだトライホーンシールドを説得しているようだが、ついに状況が動いた。
「グゥォォォ! 」
「ギャァァァァァ!? 」
メイジがトライホーンシールドの正面に立った瞬間、鼻先の角を振り上げメイジを突き上げた。メイジは丘の下まで吹き飛ばされ、LPバーも無くなった。その姿を見たゴブリンが逃げようとしたが、グレイス達が回り込み仕留めた。
これでゴブリンは全滅した。が、あれは俺達の敵なのか? それとも味方と解釈して良いのかな?
戦闘はやはり難しいですね
最初はもっと鞭を活躍させるはずだったのですが
思いの外、鞭と言うのは扱いづらい
次回も完成したら出来るだけ早く更新出来るよう頑張ります
それでは