18『技《アーツ》』
メリークリスマス
そして、1日遅れてしまった
申し訳ありませんでした
マイルームに帰りアイテムボックスから、フォレストオウル三羽、ホーク一羽を取りだし袋に入れる。
魔石はポーチから直接取り出せるから、持っていくのはこれだけだ。後は、忘れないうちにシロツキの紐を入れ換える。これで準備OK、再出発しよう。目的地は冒険者ギルドだ。
何でも狩猟関係は、【生活ギルド】と【冒険者ギルド】が協同で行っていて、冒険者は【冒険者ギルド】で素材の売買が出来るそうだ。
二十分程でギルドに到着。素材を売る前に掲示板を確認しよう、何か手頃な物は無いかな?
【調査依頼ならびに注意勧告】
『南の森で、ゴブリンの目撃情報が多数確認されています
新人冒険者は決して森に近付かない様にして下さい
森に入る人は細心の注意を怠らず
情報をギルドにあげてください
*この依頼は受注する必要はありません
報酬は依頼発生中の情報の重要度により変動します』
一枚だけ赤い紙があって目立っていた依頼内容だ。周りの皆の会話から、どうやら緊急時の依頼は赤紙と呼ばれているようだ。
確かに昨日の帰り道は、森に籠っていた時よりゴブリンの遭遇率は高かった。ランディ達が受けていたと言う依頼はこれに関係するものだろう。
情報提供した場合は報酬は出るんだろうか? いや、止めよう。金が無いからって、そんな事を考えるのは駄目だ。とりあえず、俺も新人だし、森に近付かずに、町の側で出来る依頼をやろう。
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依頼を二つ受け、今はギルドの隣の建物だ。ギルド経営の施設で素材等の売買はここでやってるそうだ。さすがにギルド内ではしなかった。俺みたいにそのまま持ってくる人もいるし、ギルドの中が血生臭くなるだろうしね。
建物内はちょっとした博物館の様だった。さすがにショーウインドウみたいな物は無いが、壁には毛皮が掛けてあり、中央には大きな狼の剥製が鎮座していて、入店した者を出迎えている。ギルド内同様、受付は複数あり、どこも素材や魔石を売買している様だ。
早速、一番空いている強面のおじさんの受付に向かい声をかける。
「すいません、買い取りお願いします」
「・・・カウンターに売るものを置いてくれ。査定する」
「は、はい」
どうやら、えらく無愛想な人の様だ。声も低くて何だか怖い。とりあえず言われた通りにしよう。
背負ってきた袋を置き、魔石を種類ごとに置いていく。おじさんは置かれた袋の中身を確認すると、中身を取りだし後ろのトレイに置いていく。裏にいた人がそれを回収して持っていく。無言でそれを行う姿がなんか不気味だ、もう少し掛け声があってもいいんじゃないだろうか?
そんな事を思っている間に魔石も裏手に送り終わった様で、
「・・・ギルドカードを貸せ、査定が終わると分かるようにする」
「わ、分かりました」
ギルド同様カードを渡す、おじさんは受けとると書類をカードに取り込み、袋と一緒にこちらに返し、
「・・・これで、査定が終わると依頼同様分かるようになる。暫し待て」
「ど、どれくらいですか? 」
「・・・早くて2時間程だ」
現在時刻はPM3:35、今日中は無理かもしれないな。
「分かりました。失礼します」
お金が無い以上、町で出来る事はない。外に行って依頼をしよう。
ちなみに受けたのは、ウルフ五頭ととゴースト(種類は問わない)五体の討伐。
今は昼間、よってウルフを討ちに行こう。
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さて、ウルフを倒すのは良いが、ただ倒すのでは味気ない。なので今回は、技の習得を目指す。グレイスが覚えている技【幻影】の分身、これのおかげで、数の不利を少なからず減らしてきたし、囮もしてもらった、進化した後はダークボールの一斉射での牽制も。非常に役にたってくれている。
プレイヤーが習得出来るか知らないが、試してみる価値はあると思う。何をどうすれば良いか分からないから、とりあえず、鞭でしか出来ない動きをしよう。まずは・・・
「オリャァァァ!! 」
ウルフの体に鞭を巻き付け、巻き付けた部分を魔力操作と変換で接着。その状態から、気力操作で上げたステータスで力一杯持ち上げて、落とす!
「ギャン!! 」
ウルフは頭から地面に叩きつけられ、LPバーは一気に無くなる。グレイス達には周りの警戒をしてもらっている。邪魔は無い方が良いしね。既に三頭同じ方法で倒している。そろそろスキルを確認してみよう。
【鞭術】
鞭を装備出来るようになる
『技:一本落とし』
【一本落とし】創始者:ジン
『気力操作、魔力操作、魔力変換の複合技。
敵を捕らえ高く持ち上げ打ち落とす
効果:DM率120%
CT率40%
付加状態異常:気絶10%
骨折7%』
「よし! 」
技GET! 説明には発動モーションも表示されている。さらにオートかマニュアルかを選べる様だ。元々自分で作った技をオートにする意味もないし、マニュアルのままにしよう。モーションさえ再現出来たら良いんだから。
さあ、このままガンガン行こう。
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残り二頭も簡単に見つけられた、もう倒し終わった後だが。
それにしても、初日に比べるとウルフの遭遇率が上がったな。これもゴブリン達の影響か? ともかく依頼は終えたし、帰るか。あっ、どこかにテント張って予備の武器を作るのも良いな。帰りながら探すか。
「どうした、グレイス? 」
ウルフを蹴散らしながら移動中、グレイスが森の方を気にしだした。何か見つけたみたいだ。
「森に何かあるのか? 」
「ワン」
う~ん、新人は近付くなって事だったが、近くに行って様子だけみるか。
森の中だったら、ギルドに報告して対処してもらおう。
「グレイス案内して貰えるか? 」
「ワン! 」
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「うわ~、判断失敗したかな? 」
グレイスの後ろについて森に近付くと、木や葉っぱに血がついている。確か血は、時間が経つと黒く変色したはず。この血はまだ赤い。なら、それほど時間は経って無い、はずだ。
だけど、一番の問題はこれが何の血か、って事だ。獣や魔物ならいい。もし、ノルンなら・・・ヤバイんじゃないか、見た感じ結構流れてるぞ。
「グレイス! 血の出所は分かるか? 」
「ワン! 」
なんとなく、グレイスが“分かる”と言ってる気がする。そうだと信じ、
「グレイスはこのまま案内を、それと警戒も続けて、シロツキも頼むぞ」
頼むから、ノルン以外であってくれよ。
こういう時の願いは、基本叶わないんだよなぁ。と、しみじみ思う。
少し森の中に入ると、それはすぐに見つかった。どう見ても新人冒険者だった、だって俺と同じ装備をしてるし。
姿は血まみれで男って位しか分からない。少なくとも手足は付いてる、けど、刺されたであろう傷跡は体中にある。装備の隙間や付いてない場所を執拗に狙われたようだ。それに火傷の後も見える。正に酷い状態だ。
近付くとヒュー、ヒューと声が聞こえる。まだ生きてる!
「シロツキ! 治癒魔法を頼む! 」
「キュー! 」
男を白い光が包む。こういう時は識別か? 鑑定か? だが残念、どちらもノルンには効果が無いみたいだ。
少し呼吸が落ち着いた。【CWO】の治癒魔法ヒールはLP、生命力を回復する。そしてヒールでは状態異常を治せない。傷口は状態異常に入るため治せない。更に失われた血も魔法では補う事が出来ない。つまり今やってるのは応急処置、気休めと言っても良い。それでもしないよりは良い。
男が咳き込んだ、意識も戻ったみたいだ。
「おいっ! 何があった? 」
「ゴッゴホ、お、おれ、い、き、てるの、か? 」
「ああっ! まだ、生きてるよ。もう少し頑張れ! 今から町に向かうから! 」
男を連れて行こうと近づいたら、男が俺の腕を掴んで、
「た、すけ、て、くれ! た、のむ! 」
「大丈夫だ! 必ず町に届けるから! 」
「ちが、う! なか、まを、たす、け、て! 」
えっ、仲間がいるのか、だけど男の様子から見て、とてもじゃないが生きてるとは思えない。だから、
「すまない。君の傷を見る限り、仲間が生きているとは、とても」
「なか、まは、さら、われ、た。だか、ら、いき、てる、はず、だ」
「拐われた? 君は他の冒険者に襲われたのか? 」
「ちが、う、ごぶ、りん、だ、ゴホッ、ゴホッ」
ゴブリンが拐った、なら、目的は一つだろう。
「仲間は女性か? 」
男は首肯く、
「何人だ? 」
「ふ、ふた、り」
拐われたのは二人、なら、ゴブリンは複数、それも数が多いはず。シロツキにもう一度治癒魔法を掛けさせてから、
「ゴブリンの数と、パーティ構成は? 」
「お、れが、み、たの、は、はち。けん、を、もっ、て、るの、が、さん。ふ、つう、の、が、よん。あと、まほ、をつか、う、のが、い、いち」
「分かった。もう話さなくても良い」
男はまた意識を失った。まだ、呼吸はしてるから生きている。さて、どうするか?
男の様子から早く町で治療をしないとまずい。プレートの機能があるなら、LPが無くなったら神殿に直行出来る。けど、既に使われていたら、このまま亡くなるだろう。とりあえず、町には連れて行かなくちゃならない。
だけど、ここから町に帰るには、少なくても二十分~三十分かかる。往復を考えると一時間以上。そうすると、男の仲間は手遅れになる可能性が高まる。死にはしないが、間違いなくトラウマを植え付けられるだろう。
だったら、方法は一つしかない。
「グレイス、分身を二体だけ作れるか? あと、強さも変えられないか? 」
「・・・ワン! 」
グレイスは頭を傾げるが、直ぐに返事をした。どうやら出来るらしい。
「それなら、魔力関連はなくていいから、持久、SP、素早さ、あと、防御を少しで二体作ってくれ。それでこの人を町まで運ぶ。少し手荒になるけど、出来るだけ速く町に届けたい。出来るか? 」
「ワン! 」
グレイスは返事をすると、すぐに二体の分身を作った。魔力系のステータスを削ったからだろうか? 色は灰色。ウルフと同じ色だ。ステータスは極端だが、グレイスの半分といったところだ。
ポーチから袋を取り出す。袋に穴をいくつか空ける。剣を操作し、太い幹で長い枝を切り落とす、それを二本用意。
袋の両端の内側に空けた穴を、一人分の幅になるように空けた穴に合わせて折り、枝を穴に通す。
魔力で簡単な紐を作り、束ねて縄みたいにして、枝と袋を固定。両端にできた輪の外側を切り上下に別れるようにして、それぞれ分身の胴体に巻き付け、紐で固定。これで担架の完成だ。
本来なら三十分位掛かるだろうが、武器を持てるようになったシロツキが予想以上に器用で、二十分以内に終わった。本当に優秀で助かる。
あとは、男を担架に乗せ魔力の縄で固定。シロツキに治癒魔法をかけてもらって、分身たちに指示、町に向かってもらった。
俺は気合いを入れ直し、
「よしっ! 行くぞ! あれだけ血が流れてるんだ、ゴブリン達には返り血がべったり付いてるはず。グレイス、追えるな? 」
「ワン! 」
いつもの返事、問題はなさそうだ。担架に時間をかけ過ぎたかもしれない、間に合ってくれよ。
金曜が仕事になって
書きあげられなかった
年末に忙しくなってしまったので
更新を不定期に変えます。
仕事が安定するまでは不定期です
それではまた、次回!
ちょっと付け足しました