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Create・World・Online  作者: 迅風雷
第5章 妖精の森の怪異
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07『オペレーションBP』

お久しぶりです

「やるぞ、サーク! 【ウォーターディスチャージ】!」


【ウォーターディスチャージ】は勢いよく水を出す魔法だ。この魔法でまずは騎士を中心に水で円を描く。ただ、サークの力だけで騎士の反対側まで届かせるのは負担が大きい。だから、


『セツナ!』

『承りました』


 セツナに念話を送り、シェルハウスからも【ウォーターディスチャージ】を使用する。行っているのはゴウカとケンランの2体、サークと違いあの2体ならMPの消費を気にしなくても良い分こういう役に向いている。空も飛べるから届かない部分にも届かせる事が出来るしな。防御に不安があるからあまり無理はさせられないけど。さて、騎士を中心に地面を濡らしたら次の工程だ。


「【セメントビッグバブル】!」


 サークのスキル【吐息セメント】、元々が【吐息(泡)】だからか泡状で使用可能なコイツで、騎士を中心に置いた泡のドームを作る。


『フン! そんな軟弱なもの叩き割って――なぬ!?』


 近寄って来る泡に騎士は大鎚を振り下ろす。が、大鎚は泡を突き抜け騎士が泡の中に収まる。これが【吐息(泡)】の優秀な性質、なんと口から完全に離れるまで決して破れないのだ。騎士を取り込み広がる泡は、先程円状に濡らした土まで伸ばした所で切り離す。これでサークの役目は終了だ。


「ご苦労さま、サーク」

「ギィィ」


 サークの体にMP回復ポーションをかけながら労う。そしてその間に地面から半円に伸びた泡は次の反応に移る、地面に接した部分から硬化していくのだ。泡が薄いからか硬化はあっという間に終わる。問題点は中が見透せなくなる事と、壁が薄さのせいか天辺部分が崩れ落ちる所。薄いと言ってもトン超えの水を受け止められるだけの強度はあるけどな。

 そして、中央部分に敵がいれば落下する天井の破片は攻撃に変わる。まあ、中央に敵を誘導するのが一番難しいんだけどな。今回の様な動きが遅い相手向けの攻撃だ。でも、そういう相手ほど頑丈で思った程効果は得られないんだけどね。それじゃあ、最後の工程に入ろうか。


『セツナ! ゴウカ、ケンラン、エピタスに次の指示を頼む。それと皆の案も進行してくれ』

『かしこまりました』


 セツナに指示をしてすぐにセメントで固められたドーム頂上、セメントが崩れた大穴の上空に小さな影が2つ。ゴウカとケンランだ。2体は互いを追うように円を描きながら空を泳ぐ、そして現れるのは黒雲。魔法名【ヘヴィーレイン】火、水、風の3属性の混合魔法だ。効果は指定した場所に豪雨を降らせると言うもの。この魔法とネイによってバブル内部に移動させられたエピタスの水魔法【スクワーティング】でドーム内を水で満たす。これがオペレーション(バブル)(プリズン)の全容だ。ちなみに【スクワーティング】は水を吹き出す魔法で、今頃は泥の中に身を隠したエピタスが使っている筈だ。

 実はケンランとエピタスの【水魔法】は、スキル名は一緒だが魔法の性質が違っている。例えば、ケンランが使う場合は真水だが、エピタス、そしてサークが使う場合塩水になる。恐らく元々の棲息していた場所によって水の種類が変わるのであろう、と言うのが今の所の俺達の予想だ。


『なるほど、水で儂の精霊の力を弱めようと言うのか』


 割れたドーム天井から声が漏れる。いや、これはもしやドーム全体から響いて?


『良い策だ、目の付け所は悪くない。しかし、力不足じゃな。この程度では儂は止まらんぞ! ムン!!』


 力を込めたかの様な声が聞こえた直後、響き渡ったのは轟音。炎の壁側にも何も起きて――


「なんだと!?」


 テキストチャットに新たな文章が追加され、その内容に思わず声が出た。そこには、

 ユキ『シェルハウスの後方で爆発! 2階から4階の床が砕かれました』

 と、書かれていた。おいおい、その辺りはアインで修繕した部分だぞ。ってそれどころじゃない! シェルハウスの後方には今セツナが――


『セツナ! 無事か!?』


 返答は無し、だがLPは残っているのは確認出来ている。ならば、


「サーク! お前を戻す、残っている従魔達と協力してセツナを探してくれ」

「ギィ!」

「サーク【リパトリエーション】」


 送還魔法【リパトリエーション】でサークを戻す、召喚されたとは逆に足元に現れた魔法陣に沈む様に戻っていく。俺が戻っても従魔達に指示しか出来ない。従魔達同士で連携してもらった方が見付けるのは早い筈だ。シロツキなら初級とはいえ回復も出来るし、なんとかなるだろう。次だ。


「テキストからボイスに変更、状況頼む!」

『ユキムラです。とりあえず全員大きな怪我もなく無事です』

『こちらアンク。畑なんかの生産施設問題無し』

『リアンノ。ハウスとマイルームも大丈夫』

『マリーダよ。シェルハウス中央の穴から後ろがダメね、ハンマーが底を砕いてしまっているわ』

『……ミーム。後ろの森の一部が海水に沈んじゃってる、ジンの従魔の寝床もダメだと思う。それと天井の一部も崩落してる。ハンマーがまだ残ってるからこれ以上は分からない。以上』


 前半は良いが後半の報告がマズイ。想像するにあの騎士がハンマーを投げ、それが壁を破壊しそのままシェルハウスの貝殻部分に突き刺さったのだろう。やってくれるよ、全く。

 壁の方は薄いから仕方ない、むしろ貝殻が思ったより頑丈だった事を誇るべきだな。少なくとも、守るべき者達は無事なのだから。セツナ以外にも色々気掛かりな事はあるが、まずはこの状況をどうにかする方が先決だ。

 だから、少し早いが最後の仕上げに入ろう。


「『我が呼び掛けに応じ、この地に来たれ、コールサモン【アンモ】』!」


 魔力で強化した脚力でドーム上部に移動しながら詠唱を行い、着地したと同時に重みで崩れた瓦礫の上で発動する。そのままドーム内に溜まった水に落ちる。どうやらゴウカ達も頑張ってくれたらしく、幸い足が着かない程度には溜まっている。これならイケる。


「各自、継続してキリムさん達の護衛をしながら被害の確認を並行して行ってくれ。俺の従魔が騒がしいだろうがその辺は気にしなくて良い。以上、頼んだ」

『オッケー!』『『分かりました』』『任せて』『……了解』


 みんな慌ててしまっているのか、返事の統一が出来ていないな。まあ、結成してまだ一月、チャットを使う様な事も少なかったし、しょうがないな。さて、それじゃこっちに集中するか。


「さあ、遊びの時間だ。全力で喰らいつけ、アンモ!!」


 指示を飛ばすと、水中に描かれた魔法陣からアンモがその巨大な体を揺らしながら飛び出して来る。目指す場所はもちろん、黄土の騎士だ。


『な、なんじゃこの巨大なイールは!?』


 イール(ウナギ)ではなくモーレイ(ウツボ)なんだが、あまり馴染みが無いのかな? だが、知らないなら好都合。さあ、初見の恐怖を味わいな。

 騎士の足元を回っていた隠しきれていないその巨体が、突如飛び上がり口内奥に収納されていた顎を突き出し騎士の頭に襲い掛かる。


「シュオォォォォォォォ!!」

『うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!?』


 騎士の頭をガッチリとその強靭な顎でとらえたアンモ、そして本人にとって未知であろう存在に襲われ慌てふためく騎士。とりあえずアンモの頭を掴み剥がそうとしている様だが、上手くいってはいない様子。

 だが、この状態は長く続かない。騎士が冷静さを取り戻せばすぐにでも逆転されるだろう。なにせアンモはレベルは未だ7、その巨体によるステータス補正だけでなんとかしているのに過ぎない。時間を稼ぐにはもうひと押し必要だ。


「クォ」

「よく来たエピタス、良いタイミングだ」


 やって来たのは海亀形態(モード)のエピタスだ。見た目としては足が全てヒレ状になり、甲羅が薄く横に広がった姿。ステータスとしては防御は低くなり、代わりに俊敏が上昇し小回りと移動速度が速くなる形態だ。


「エピタス、アンモを援護してくれ。騎士の足場を崩すんだ」

「クォン」


 俺の指示を受けたエピタスは返事をしてすぐに潜航、水中に姿を消した。騎士が倒れたらそれなりの大きさの波が起きる筈、そう思い壁側に移動を開始する。いざと言う時に壁を破壊して外に逃げられる様にだ。これくらいの厚さの壁なら魔力を纏わせた俺の全力の拳で破壊可能なのだ。


『ぬおぉぉぉ!?』


 俺が壁までもう少しの所に来た頃、アンモを振り解こうと格闘していた騎士が驚く声を上げた。振り返ると激しい水飛沫を上げながら背中から水の中に倒れ込む姿が見えた。よし、エピタスはしっかり仕事をこなしてくれた様だ。これでもう少し時間――


「ガッ!?」


 時間が稼げる、そう考えかけた瞬間、突如として下から強烈な衝撃が来た。どうやら、騎士が土で柱を作り俺を突き上げた様だ。

 自分に何が起きたのか、それを理解した時には既に時遅し。気がつけば俺は空に居た、そしてそのまま重力に従い落ちていく。咄嗟に魔力剣で体を支えようと考えたが、何故か体が上手く動かせず指輪に手が届かなかったので断念。

 ならば急造でなんとか出来ないかと魔力を集めるが、俺と違い魔力は重力の影響を受けないせいかこちらも失敗。どうしたものかと思っていると、俺とは反対の空に直進する赤い魔力の柱が見えた。ネイ達は無事役目を果たしたみたいだな。

 自分の置かれている状況を忘れそんな事を考えていたら、地面に頭から落ちてLPが全損。俺は三度目の死を迎えてしまったのだった。

次回はもう少し早く更新出来る様に頑張ります

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